
バカバカしいと思うこと
前職は割と体育会系の職場だった。
今から思い返してみるとバカバカしいルールも多かったが、ルールだけじゃなく「我慢競争的なこと」もよくやっていた。冬場にいつまで半袖で耐えられるかとか、雨の日にずぶ濡れで顧客回りするとか。
誰かがやろうと言い始めるわけではないけど、なんとなく「負けたくない」という気持ちがチームに蔓延していたのだ。誰かがちょっと変わったことを始めると、それを真似するヤツが現れ、いつの間にかオプションを加えるヤツが現れる。
その結果が「冬場の半袖」だったり「傘を差さない」だったりしたのだ。まったくバカバカしい限りだ。
だけど、当時は顧客もおおらかだった。
真冬に半袖で顧客を訪問すると、先方のオフィスも結構盛り上がったりしていた。「きゃー。見ているだけで寒そう!」とか「そんな恰好で寒くないのか!」とか言われると、ボクはよく「これ、特別仕様で透明の長袖なんですよ。」なんて返していた。
ずぶ濡れで顧客回りをして「あ、今日はこんな感じなんで、エントランスのとこまでで結構です。」なんて言ってみたりもした。そうしたら、受付の女の子が気を遣ってタオルを貸してくれたりしたもんだ。
当時は社内表彰が頻繁に行われていた。
まあ脳筋な会社だった(今は違うと思いますよw)ので、超絶シンプルな昨対売上高を競うものだったが、四半期ごとにチーム表彰があり、優勝チームには現金(何に使ってもいいけど要領収書提出)が支給されていた。
ボクたちは、そのチーム表彰の常連だった。
賞金はだいたいパーッと飲んで消えてしまっていた。
ただ、ボクは当時から群れないタイプだったので、ひとりで留守番役を引き受けることが多かった。集合時間までに仕事が終わらなかったヤツの残務を引き受け、バカ騒ぎしているだろう連中のことを(他人に迷惑をかけなければいいが…と)憂いていたもんだ。
最近ボクは営業的な仕事をすることが少なくなったが、やっぱり競うのはこういうくだらないことのほうがいいのだろうと思う。
あ、昨対売上ではなく「我慢競争的なこと」のほうだ。
現代においては、あらゆる商材がコモディティ化してしまって、性能の高さや機能の多さで差別化できなくなってしまっている。そうなると、商品もサービスも価格勝負になってしまうことが多い。もしくは広告宣伝にお金をかけるっていう戦略も取れるが、いずれにせよ収益性を悪化させるのは間違いない。
いくら社長が「他社と差別化しろ」とか「イノベーションを進めろ」などと言っても、そう簡単に新しいアイディアが出るはずもなく、出たとしてもすでに大手に先手を打たれているか、後から大手に真似されるかのいずれかだ。
標準偏差の考えで言うと、中央値の前後68%(±1σ)は「普通(マジョリティ)」だ。
もし、あなたがアーリーアダプター(将来的に業界や市場をリードするポジションになる可能性を秘めた人)になりたいなら、プラス側の16%に入らなければならない。それは、裏を返せば「68%の人たちがバカバカしいと思うこと」を愚直に実行し続けるということだ。
ただし、アーリーアダプターになること=成功ではない。
毎年毎年たった一人で真冬に半袖なのは、ただの変人でしかない。それを真似する人が現れ、変な競争が始まってこそ、真の「業界や市場をリードする人」になれるのだ。
残念ながらそこはコントロールできない。
だから、それをいつまでもやり続けてもメインストリームにならない可能性も非常に高いのだ。冬半袖なんてその最たるものだ。
だけど、そういうのもテクノロジーによって変わるかもしれないからな。「バカバカしい」と思っている限りアーリーアダプターにはなれないのだ。
ちなみに…
その会社はその後メインバンクの支援を受けて、バカバカしいことをやらない会社に変貌したようだ。そして同業他社が低収益で苦心する中、比較的堅調にビジネスを進めていると聞いている。
とはいえ、あの「バカバカしいこと」を愚直にやっていた時代があったからだとボクは思っているけれど。