
【読書記録 -191】アルジャーノンに花束を
知能の変化を声で聴く
『アルジャーノンに花束を』
本作は1959年に短編小説として発表され、1966年に長編化されたSF小説だ。すでに読んでいる方も多いことだろう。
著者のダニエル・キイスは、1927年にニューヨークで生まれたアメリカの小説家だ。ブルックリン大学で心理学を学び、SF雑誌の編集者や高校教師を経験した後、作家として活動した。後にはオハイオ大学で創作を教えている。
今回ボクは本作をAudibleで聴いた。
朗読は声優の池澤春菜だ。

この物語は主人公 チャーリイ・ゴードンの綴る経過報告によって進んでいく。そして(ご存じのように)脳手術によってチャーリイの知能が急激に変化していく。もちろん、本で読んでもその変化がありありとわかるよう訳されているのだが、声優さんの表現力が加わると一段と刺さってくる。
幼稚な話し方だったチャーリイが、手術によって少しずつ知的な話し方に変わっていく。それは語彙だけでなく、言葉の選び方、話す速度、間の取り方、感情の表し方までもがだ。
そして、その変化はとても緩やかだ。
少しずつ、少しずつ変わっていき、少しずつ、少しずつ戻っていく。
アルジャーノン・ゴードン効果
本書はSF小説にカテゴライズされている。
白ネズミのアルジャーノンとチャーリイは、知能向上の実験体として脳手術を受け、それが(一時的に)成功するという世界線で物語は進む。
そしてチャーリイは、自分自身の知能が向上する過程で研究を進め、人工的に増大させた知能には重大な欠陥があることを発見する。チャーリイはその現象を「アルジャーノン・ゴードン効果」と名付ける。
ボクはそこにダニエル・キイスの論理的構造の巧みさを感じた。
チャーリイは実験の被験者でありながら、同時にその実験を分析する研究者でもある。自分の知能が高くなったからこそ、自分の知能が失われていくことを予測できてしまう…
その構造が、この物語の悲劇性を際立たせている。
そして、池澤春菜の朗読は、このアルジャーノン・ゴードン効果を声で表現し切っているのだ。知能が向上していく過程だけではなく、物語の後半で変化が反転し、少しずつ知能が失われていく過程まで。
それは、本作を知っている人にとっても、別の角度から作品を体験することになると思う。
なのでボクは、本作をAudibleで聴き直してみることをお勧めしたい。
きっと、以前とは違う発見があるだろう。