
【散文詩】透明な距離
琥珀色の重力が、夜の縁を静かに浸していく。
誰に宛てるでもない言葉が、喉の奥で白く凍る。
あそこにあるのは、死んだ星の抜け殻か
それとも誰かが隠した、終わりのない溜息か。
輪郭をぼかした光が、街のノイズをすくい上げ
黒い海へと溶かしていく。
見上げれば、首筋を刺すような冷たさ。
遠い昔に零れ落ちた記憶の残滓が、
空の真ん中で銀色の膜を張っている。
誰もいない窓辺、冷え切った指先で
ただ、そこに在るだけの静寂をなぞる。
返事のない問いかけは
光の粒となって、ただ夜の深淵へ吸い込まれていく。
孤独であることさえ忘れるほどの透明な距離。
月は何も言わない。
ただ、すべてを知っているかのような顔をして
ぼくの影を、地上から剥がそうとしている。