
「人は中身が大事」と分かっているのに、どうしても見た目にこだわってしまう理由
「はなさんって、
本当に綺麗な顔が好きですよね」
先日、春さんにそう言われました。
「綺麗な顔、好きですね」
そう答えながら、ふと考えた。
「なんで私は、
こんなに外見にこだわるんだろう」
──
私は、綺麗な顔の人が好きです。
清潔感があって、
細身で、
柔らかい雰囲気の人。
反対に、
体が大きかったり、
威圧感があったり、
大きな声の人は少し苦手です。
外から見て、
分かりやすく強さを出している感じがしない。
でも、
話を聞いてみると、
内側には熱さや想いがあったり、
繊細さがあったり。
そういう人に惹かれる。
だからこそ、
自分のこの好みに、
ずっと引っかかるものがありました。
「人は中身が大事」
そんなことは、
もう百も承知でした。
なのに、
「この人、見た目が好きじゃないな」
と思った瞬間に、
どうしてもその先に進めない。
「人の中身をちゃんと見られないのかな」
「私は外見を重視してしまう、浅い人間なのかな」
そんなふうに、自分のことを思っていました。
でも、よく考えてみると、
私が苦手なのは、
ただ「見た目が怖い人」
だったわけではないのかもしれないと思ったんです。
──
父は、
いかにも怖そうな見た目をしていたわけではありません。
でも、怒ったときの威圧感がすごかった。
怒鳴ったり、物に当たったり、
「誰の金で飯を食わせてもらってると思ってるんだ!」
そんな言葉も何度も聞きました。
こどもの私にとっては、
「強い」
「威圧的」
「力で押してくる」
そんなものが、
怖さと結びついていったのかもしれません。
だから私は反対に、
柔らかい人。
優しい人。
強い圧をかけてこない人。
自分の気持ちを言葉にできる人。
そんな人に、
安心を感じるようになったのかもしれません。
それに、
私はこどもの頃からアトピーがあって、
顔に症状もありました。
自分の見た目に自信がなくて、
「自分は人より劣っている」
と感じていた。
だから、綺麗な顔に惹かれるのは、
「自分が持っていないものへの憧れ」
もあったのかもしれません。
そう考えていくと、
私はずっと
「外見だけ」を
見ていたわけじゃなかったのかもしれない。
私は、
自分が安心できるものを、
ずっと探していたのかもしれない。
そんなことに気づきました。

──
そして、最近、
それを実感した出来事がありました。
春さんとこばさん。
二人とも、ひげがあります。
私は、
ひげのある人がちょっと苦手です。
それは春さんに、
以前伝えたことがありました。
「ひげのある人、ちょっと苦手なんですよね」
そう言ったんです。
そのあと家に帰ってから、
「あれ?」
と思いました。
春さんも、こばさんも、ひげあるじゃん。
それなのに私は、二人のことを
「ひげのある人」として見ていなかった。
そして先日も、
また同じような話になって、
春さんから、
「はなさん、そうやって言うけどさ、
僕もこばさんもひげあるからね」
と言われました。
さらに、
「結構チクチクきてるよ(笑)」
と。
「あ……」
と思いました。
そりゃ、チクチクするよな。
傷つけるつもりなんて、
もちろんありませんでした。
でも、
目の前にいる本人からしたら、
何度も「ひげが苦手」と言われたら、
そうなるよなと。
でも、
それ以上に驚いたのは、
私は本当に、
二人のひげを気にしていなかったことでした。
私は二人を、
「ひげのある男性」
として見ていたんじゃなくて、
「春さん」
「こばさん」
として見ていたんです。
二人とも、
自分のことをかなり深いところまで話してくれます。
人には言いにくそうなことも。
弱いところも。
ときには、
自分でも見せたくないようなところまで。
そんな話を先にしてくれたから、
「ここでは、私も出していいんだ」
と思えた。
私も、取り繕わずに話せるようになった。
そうやって安心して関われるようになったら、いつの間にか、
私が苦手だったはずの「ひげ」が、
見えなくなっていたんです。

──
だからといって、
「じゃあ、
私はひげのある人も好きになりました!」
という話ではありません。
今でも、苦手です。
でも、
「この人なら大丈夫」
と思えるくらい安心できる相手だと、
普段なら気になるはずのものが、
気にならなくなることがある。
私の場合は、そうだったのかもしれない。
「中身を見たほうがいい」
というのは、
「外見なんて気にしなくていい」
ということではないのかもしれない。
安心できる相手だからこそ、
その人の中身を知りたいと思える。
その人が何を大切にしているのか。
何を考えているのか。
どんなことで傷つくのか。
そういうところまで、知りたくなる。
本当は、人と深くつながりたい。
くだらないことも、
大切なことも、
思ったことをそのまま話せる。
違う考えがあっても、
無理に同じにならなくていい。
それでも、一緒に話していける。
そんな関係が、
私は本当に欲しかったのかもしれません。
──
「この条件だけは無理」
と思うものがある自分を、
「私は外見でしか人を見られない」
「私は浅い人間なんだ」
と、ずっと責めてきました。
でも今は、
その譲れなさの奥には、
自分でもまだ気づいていない
「守りたいもの」
があったのかもしれないと思います。
私はこんなに必死に、
自分を守ってきたんだ。
そう思うと、
これまで自分でも理解できなかった自分の好みが、
少し違って見えてきました。

──
無理に、苦手なものを好きにならなくていい。無理に、自分の感覚を変えなくていい。
自分を守るために張っていたバリアが、
気づかないうちにそっと必要なくなるくらい、
「ここなら大丈夫」
と思える人に出会える。
自分を守ることと、誰かとつながること。
どちらかを諦めなくていい。
自分の大切なものを大切にしたまま、
誰かと心を通わせていける。
そんな日々を、つくっていきたい。
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