
「巨大な靴を磨いたら、まさかの全国紙に!?」
靴磨き世界一周南米編91日目
チリ南部の港町、プエルトモントに到着して、
とりあえず海沿いに行ってみようと思ったら、
大きなオブジェが見えてきた。
な、なんだあれは!?
どうやらプエルトモントを代表するアーティスト、ロビンソンさんが作ったものらしく、この街のシンボルになっているオブジェだった。
#名古屋でいうナナちゃん人形みたいな

せっかくなので写真を撮ろうと思ったら、
オブジェの靴が汚れていることに気がついた。
というより、ペンキが劣化して剥がれていた。
大したことはできないけれど、とりあえずブラッシングだけしてみることに。
まさかこの何気ない行動が、後にとんでもない
ご縁につながるとはこの時は想像もしていなかった。
正直、ちょっと面白いと思って、
ふざけ半分でやったことだった。
この日の路上靴磨きは絶好調。
合計16足も磨かせていただき、そろそろ帰ろうか
と思っていたところ、1人の男性が話しかけてきた。
「あなた、さっきあのオブジェの靴を磨いて
いたでしょ!?」
えっ!?
まさか、あれって勝手に触ったらダメだったの!?
もしかして、ペンキが剥がれていることを
私のせいにして、弁償させるつもりなのでは!?
「あ〜、まぁ確かに磨きましたが、ちょっと埃を
落としただけですよ」
すると男性が言った。
「私のボスは法律を作っているんです」
えっ、法律を作る!?
まさか、何か造形物を破損した罪にでも
問われるのか!?
頭の中でいろんなことを考えていると、
男性は話を続けた。
「彼は時々、街の古くなったものを修復
する活動もしています。
私たちのオフィスで、あなたがあのオブジェの
靴を磨いている姿が話題になったんです。
そこで、一緒にあの靴にペンキを塗って修復
しないか、という話になりました」
良かった。
何かの罪に問われるわけじゃなくて。
ちなみに「法律を作っている」という説明は、
お互いの英語がうまく伝わっていなかっただけで、
要するに彼のボスは国会議員だった。
そして翌日。
アレハンドレさんという国会議員が働くオフィス
を訪ねると、そこにはなんと、あの巨大なオブジェ
を作ったロビンソンさんの姿もあった。
まさか作者本人にまで会えるとは!
「よし、これからこの街のシンボルの靴を
磨きに行くぞ!」
ということで、みんなで巨大なオブジェのもとへ。
間違いなく、これまで磨いてきた靴の中で最も
大きなサイズだろう。
#もはや人間以外の靴も磨く
茶色のペンキを使い、剥がれた部分を少しずつ
補色していく。
あぁ、なんだか靴が喜んでいる気がする。
そしてロビンソンさんも、
「この靴のことは、ずーっと前から気になって
いたんだ」
と言って、とても喜んでくれた。


こうして巨大な靴の補色作業が終わり、最後に
国会議員のアレハンドレさんが締めの挨拶をした。
そこで私は言った。
「まだ終わってない!!」
突然、日本人が話し始めたものだから、
一瞬変な空気になった。
「アレハンドレさんの靴を磨かないといけない!」
この素敵な機会を作ってくれたアレハンドレさん
の靴を、まだ磨いていなかったのだ。
最後に感謝の気持ちを込めて、アレハンドレさん
の靴を磨かせていただくことに。
ところが、磨いている途中で小雨が降ってきた。
普段なら、少しの雨でも革靴に染みができて
しまうため、靴磨きを中断する。
しかし、雨の多いプエルトモントでは、
これくらいの雨は気にしないのだろうか。
そのまま靴磨きを続けることになった。
そして、なんとこの出来事が、チリの全国紙に
取り上げられることになった。
まさか、ちょっと面白いと思って巨大なオブジェ
の靴を磨くふりをしたことが、作者本人や国会議員
との出会いにつながり、本当にその靴を修復する
ことになるとは。
しかも、その出来事が新聞にまで掲載されるなんて。
ほんの少しの好奇心から始まった、
思いがけない物語。
そしてその新聞を見た方々からこの先の
チリでの旅に影響していくのだろう。
人生は、本当に何があるかわからない。
たまにはふざけてみるもんだな。
