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Photo byjagaimo863

最終日、私への小言が止まらなかった。—19年かけて築いたものの正体


    「肩が凝ったらどうすればいいんですか!?」

    笑いをこらえながら頭を下げた。
    最後の挨拶回りで、まさかそんな言葉が返ってくるとは思っていなかった。


    最後の5分間

    退勤まであと5分というところで、リハ助手のお姉さんたちに捕まった。

    長い人では19年以上、一緒に働いてきた人たちだ。

    ねぎらいの言葉から始まったが、すぐに崩れた。

    昔の失敗をいじられ、しょうもない私の部分を指摘され、終始小言を言われているような時間だった。

    でも、嫌な感じは全くなかった。

    相互理解の上で成立する漫才のように、時間が過ぎていった。
    ずっと笑っていたと思う。


    挨拶回りのランキング

    各部署を回った。

    「今日で最後の勤務になりました。お世話になりました。」

    頭を下げて、顔を上げると、笑顔があった。

    返ってくる言葉にも、ちゃんと傾向があった。

    第3位「残念です。でも次でも頑張ってください。あなたならどこに行っても大丈夫!」

    第2位「お疲れ様でした!次の職場でも頑張ってください!」

    そして、栄光の第1位。

    「これからどうすればいいんですか!? PCが壊れたら、リハのことで相談があったら、Drに聞きづらいことは、肩が凝ったら、腰が痛くなったら——」

    笑いしかでてこなかった(笑)。

    ただ、本当に途方に暮れている人はいなかった。
    それらの言葉の後ろに、こんな空気を感じた。

    「大丈夫。あなたがいなくても、みんなでどうにかするね。」

    背中をそっと押してくれるような、そんな優しさだった。


    あの頃の誓い

    若い頃、仕事で悩んで辞めてしまいたくなった時期がある。

    やりたいことができなかった。
    経験不足でさせてもらえないこともあった。
    純粋にやりたくないことをやらされていた時期もあった。

    色々あった。

    でもその時、自分にこう言い聞かせた。

    「今辞めても、誰も困らない。それなら、いなくなって困る人間になって辞めてやる。」

    怒りと悔しさから生まれた言葉だった。
    格好いい誓いでもなんでもない。
    ただの、意地だった。


    19年後に返ってきたもの

    最終日の挨拶回りで気づいた。

    「いなくなって困る」という言葉は同じでも、中身が全然違う。

    あの頃想像していたのは、無責任に去っていく人間へのなじりだった。
    「あいつがいなくなって困った」という、迷惑の文脈。

    でも返ってきたのは、愛のあるいじりだった。

    笑いながら、でも本気で、惜しんでくれている声だった。

    本当のところはわからない(笑)。
    でも私はそう受け取った。

    19年かけて築いてきた信頼の証だと。


    あの頃辞めなくて、正解だったと思う。

    やりたいことができなくて悔しかった時期も、経験不足を痛感していた時期も、全部あって今がある。

    辞める理由なんて、いつだって揃う。
    でも、続ける理由は、後からしかわからないことが多い。

    あなたが今「辞めたい」と思っているなら、一度だけ聞いてほしい。

    いなくなって、誰かが困る人間になってから辞めるという選択肢は、あるか。

     
     
    医療機関に勤めている理学療法士です。19年勤めた病院を離れます。副業でトレーナーとコンサルをやろうと計画中。日々の診療や管理職として困っている方の解決の糸口になれば良いです 理学療法士・管理職11年・日本陸連B級トレーナー・腰痛運動療法セラピスト・地域ケア会議推進リーダー・県AT

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