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町丁の冒険m1|渋谷区―百貨店と交差点で世界の若者文化の中心に?

    「町丁の冒険」は、東京23区を町丁ごとに歩く記録。名前は『タンタンの冒険』の中国語題「丁丁历险记」に「町」を足した言葉遊びから。区の自治体コード順にa〜wを振り、現在はmの渋谷区まで完了。過去の記事を少しずつnoteへ移していきます。

    渋谷は本当に谷だった。武蔵野台地が川に削られ、低い場所に渋谷駅、その周囲に西渋谷台地、代々木台地、東渋谷台地がある。駅を出て道玄坂、宮益坂、公園通りのどちらへ向かっても、だいたい上り坂になる。

    渋谷区は新宿区・豊島区とともに「副都心3区」と呼ばれ、不動産分野では「都心5区」にも数えられる。

    1932年、渋谷町・千駄ヶ谷町・代々幡町が合併して渋谷区が成立した。後の二町は合併に積極的ではなく、区名には「代々木区」などの案もあった。今「渋谷」と聞いてまず浮かぶのは、たいていハチ公、スクランブル交差点、駅前の広告画面に映る人と、そこから流れる音だ。

    1970年代、東京の若者文化の重心は新宿から渋谷へ移っていった。1973年に開業した渋谷PARCOは、その重要な節目の一つ。百貨店、劇場、広告、ファッション、街路が一緒になって、渋谷を流行が次々と生まれる場所にしていった。


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    八つ墓村 西武渋谷最期


    広告を見れば、いつ頃の写真かだいたいわかる交差点。ここには松也の『八つ墓村』と、西武百貨店の最後が写っている。

    渋谷区には80の町丁があり、丁目を外すと32の町名になる。全部歩いたので、ここでは町名ごとに整理する。書くことがある町は何項目か、ほかは索引に名前を残しておく。

    渋谷地域
    鶯谷町|宇田川町|恵比寿|恵比寿西|恵比寿南|神山町|桜丘町|猿楽町|渋谷|松濤|神泉町|神南|代官山町|道玄坂|東|南平台町|鉢山町|広尾|円山町

    千駄ヶ谷地域
    千駄ヶ谷|神宮前

    代々幡地域
    上原|大山町|笹塚|富ヶ谷|西原|幡ヶ谷|初台|本町|元代々木町|代々木神園町|代々木

    今回は渋谷地域から。

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    宇田川町

    • 渋谷センター街、渋谷PARCO、西武渋谷店、ロフト、QFRONT/TSUTAYA。観光客が知っている「渋谷」のかなりの部分がここに集まっている。西武渋谷店は2026年9月30日に閉店。

    • センター街はメインストリートから周囲へ広がり、大型商業施設の間にも飲食店、路面店、雑居ビルが密集する。

    • 渋谷PARCOにはPARCO劇場、PARCO MUSEUM TOKYO。

    恵比寿

    • 町名としての恵比寿は主にJR恵比寿駅の東側。普段いう「恵比寿」には、恵比寿西、恵比寿南、目黒区三田の一部も含まれる。

    • 先にヱビスビールがあり、出荷用の貨物駅「恵比寿停車場」ができ、後に旅客営業と町名が続いた。ブランドはYEBISU、駅名・町名はEbisu。

    • 1994年、ビール工場跡地に恵比寿ガーデンプレイスが開業。ビール坂、ビール橋といった名前にも、この街とビールの関係が残る。

    桜丘町

    • 渋谷駅の南西側。セルリアンタワーと渋谷サクラステージのある町。以前は駅から回り道をして歩道橋を渡ったが、再開発でこちら側への行き来も変わり続けている。

    • セルリアンタワー能楽堂。働き始めてから、能楽が遠くなった。

    猿楽町

    • 代官山T-SITE/代官山 蔦屋書店。「代官山」を名乗っているけれど、住所は猿楽町。

    • 代官山ヒルサイドテラス。朝倉家と槇文彦が段階的につくった建築群で、住宅、店舗、ギャラリー、公共空間が旧山手通り沿いに並ぶ。

    渋谷

    • 町名の「渋谷」は主に駅の東側。渋谷ヒカリエ、渋谷スクランブルスクエア、渋谷ストリームはいずれもここ。ヒカリエには大型ミュージカル劇場の東急シアターオーブもある。

    • 2019年に日本へ来てから、駅前はずっと大工事中。それでも世界中から観光客が集まる。来たばかりの頃の写真を見つけたら、もうずいぶん変わっていた。

    • 宮益坂は駅前から東へ上り、青山・表参道方面へ向かう。西側の道玄坂とは谷を挟んで向かい合う。

    • 天井桟敷館。1969年開館、1976年閉館、粟津潔のデザイン。調べたところ、跡地は現在の渋谷三丁目11-8、第三神山ビルの場所にあたるようだ。寺山修司の劇場もここにあった。


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    日本へ来た頃、2019年の渋谷を見つけた。

    松濤

    • 駅前の繁華街から西へ上ると、少しずつ住宅街になる。鍋島松濤公園には、旧鍋島家邸宅の湧水池が残る。

    • 戸栗美術館:東洋陶磁。

    • 渋谷区立松濤美術館:白井晟一設計。建物そのものも見たい。

    神泉町

    • 中国の「深圳」も、日本語では「しんせん」。神泉と同じ読みになる。

    • 神泉駅のある町。円山町の飲食店や夜の店と隣り合う。

    神南

    • 神南一丁目:公園通り、渋谷モディ、タワーレコード渋谷店。坂を上るにつれ、店や音楽・文化施設が続く。

    • 渋谷区立勤労福祉会館内の東京都渋谷公園通りギャラリー。アール・ブリュットなどの展覧会が特徴。

    • 冬の公園通りのイルミネーションは、怖いくらい青い。パスタソースの「青の洞窟」が協賛。

    • 神南二丁目はNHK放送センター、NHKホール、国立代々木競技場などの大きな施設が中心。一丁目の商業街とはかなり違う。隣の代々木公園は、主に代々木神園町に属する。

    代官山町

    • 街の名前としての「代官山」は、代官山町よりずっと広い。代官山駅は恵比寿西、蔦屋書店とヒルサイドテラスは猿楽町。

    • 町内には36棟の同潤会代官山アパートがあった。跡地は2000年、代官山アドレスに再開発された。低層のアパート群から高層住宅と商業施設へ、街並みが大きく変わった場所。

    道玄坂

    • 町名でもあり、渋谷駅前から上る坂の名前でもある。SHIBUYA109、渋谷マークシティ、渋谷フクラス、旧東急百貨店本店、Bunkamuraがある。

    • 「渋谷」の映像によく登場するスクランブル交差点とハチ公広場もここ。向かいのQFRONT/TSUTAYAは宇田川町、MAGNETは神南一丁目。一つの駅前風景が三つの町名にまたがる。

    • 道玄坂を上ると、大きな商業ビルの間に道玄坂小路や百軒店があり、飲食店、映画館、雑居ビルが円山町・神泉方面へ続く。文化村通りを上ればBunkamuraと松濤へ。

    東

    • 國學院大學博物館:考古、神道、大学史。

    • 実践女子大学香雪記念資料館。

    広尾

    • 山種美術館:1966年開館の日本画専門美術館。2009年にここへ移転。

    • 町名の広尾は渋谷区だが、広尾駅は港区南麻布にある。

    円山町

    • 花街、待合、旅館と関わりの深かった町。今も宿泊施設、飲食店、ライブハウス、クラブが集まり、道玄坂、神泉町と一続きになっている。

    美術館・文化施設については #東京百博 へ。

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    Column:渋谷の東急と西武

    町丁だけで渋谷を書くのは難しすぎるので、急きょcolumnを挿入。

    東急系

    • 東急の渋谷での基盤は、鉄道と沿線開発。駅直結の東横店は通勤客や日常の買い物を支え、道玄坂上の本店は松濤に近く、高級品を扱う店として展開した。東横店は1934年開業、2020年3月31日に百貨店営業を終了し、食品売場は継続。本店は1967年開業、2023年1月31日閉店。1979年開業の109は、後に若い世代のファッションの象徴になった。

    • Bunkamuraは1989年9月3日、本店に隣接して開館。シアターコクーンは日本の現代演劇との関わりが深く、オーチャードホールは音楽、オペラ、バレエが中心。ザ・ミュージアムは企画展、ル・シネマはアート映画にそれぞれ特色がある。

    • 本店閉店後、Bunkamuraは2023年4月10日からオーチャードホールを除いて長期休館。活動の一部は別会場へ移り、ル・シネマは同年6月、旧渋谷TOEI跡地の「ル・シネマ 渋谷宮下」で営業を再開した。オーチャードホールも2027年1月4日から休館する。

    • 渋谷ヒカリエは2012年4月26日開業。東急文化会館の跡地に建つ。文化会館は1956年開館、2003年6月30日閉館。ヒカリエ内の東急シアターオーブは2012年7月開場。

    • 渋谷ストリームは2018年9月13日、旧東横線地上駅と線路の跡地一帯に開業。渋谷スクランブルスクエア東棟は2019年11月1日開業。屋上のSHIBUYA SKYからはスクランブル交差点を見下ろせる。

    西武/セゾン系

    • セゾン(Saison)は、かつての西武流通グループが後に用いた名称。西武百貨店と西友が主要企業で、PARCO、ロフト、無印良品も、それぞれ成り立ちは違うが、このグループと関わりがある。その後、各社は独立したり、別の経営グループに属したりしている。

    • 西武渋谷店は1968年4月19日開店、2026年9月30日閉店。このグループの渋谷への影響は、特に小売と文化の関係に表れている。百貨店のショーウインドー、広告、商品陳列が、デザイン、ファッション、演劇、美術とともに、新しい趣味や暮らし方を紹介した。

    • 渋谷PARCOは1973年6月14日開業。西武劇場は少し早い同年5月23日に開場し、1985年にPARCO劇場へ改称した。劇場は作品制作に直接関わり、広告には石岡瑛子、山口はるみらを起用。身体、性別、生き方までポスターの題材になる。商業施設が文化をつくり、広告自体も、見たり保存したりしたいデザイン作品になった。

    • 旧渋谷PARCOとPARCO劇場は2016年8月7日に営業を終え、建て替えへ。新PARCOは2019年11月22日、新劇場は2020年1月24日にオープンした。

    • 影響は建物から街へも広がった。公園通り、スペイン坂、途中の小さな店、行き交う人が一緒に渋谷の流行文化をつくった。PARCOと街の関係は、一つのショッピングセンターの範囲よりずっと大きい。

    • ロフトは1987年、西武渋谷店から始まった。無印良品は1980年、西友のプライベートブランドとして誕生。

    • 軽井沢のセゾン現代美術館は、1962年に東京で開館した高輪美術館が、1981年に移転したもの。1991年に現在の名称になった。行くだけでひと皮むけそうなくらい大変だけど、その価値はある。

    西武渋谷店の9月30日の閉店には立ち会えた。現場に30分以上いた。ものすごい人で、この店に深い思い入れのある人が大勢いるのだろうと感じた。私は何でいたんだろう? WEST.も同じ日に閉店したからかな……


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    1987年。東洋経済写真部撮影
    出典:東洋経済オンライン


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    1955年1月。東急東横店西館の屋上から撮影したものとみられる。
    出典:アーバンライフ東京

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