
かには、すわってる。
東アフリカで広く話されているスワヒリ語で、カニは kaa と言います。
日本でと同様、海だけでなく川にもいるので、比較的広く知られています。
イカとかだと、はじめて海沿いの町に赴任してきた年配の人がおそれおののいたりするのですけど。
(でも「海に入るとカニに足の指をちょんぎられる」と心配されたことはあります。ジョークのつもりには見えませんでした……。)
……が、炭も kaa と言います。
先ほど書いたとおり、炭を焼く山あいや疎林地帯にもカニはいるので、海ではカニを kaa と呼び、山では炭を kaa と呼ぶのが偶然かさなった、とは思えません。もちろん海沿いでも炭を使いますし。
かには複数形でも同形、炭はji-maクラスなので複数形はmakaaとなるので違いますけど、ひと袋単位で売られているためかあまり複数形を使いません。
だから Naomba kaa. と言ったら、カニが欲しいのか、炭が欲しいのか分かりません。魚市場で炭は注文しないからだいじょうぶでしょうか。
そして、座ることも kaa と言います。
とうぜん、海でも山でも座ります。
ふだんは、Anakaa.(彼は座っている。)のように、主辞や時制とくっついて一語になるので、あまりカニという感じはしませんけれど、英語などと同様に動詞の原形は命令文です。
だからKaa!という声が聞こえたら、座れと言われたのか、かにだと言われたのか分かりません。アリだー、もとい、カニだー!
日本語でも同音異義語は多数ありますし、スワヒリ語にもあります。
以前書いたような taka (求める)と takataka (ごみ)とか。
ただ、日本語ではアクセントで聞き分けることができる単語もあるのに対し、スワヒリ語はアクセントは語尾からふたつめの音節にほぼ固定されています。だいじょうぶでしょうか。
いえ、まあ、座らないといけないのか、かにがせめてきたのかは、文脈でわかりますよね……。
あるいは、後者なら、 Kaa huyo! と言うとか。
でも、語源がどれかの単語なのか、たまたま同音になったのかは調べられていません。
日本語のねこが寝ている子だとかねうねう言う動物だとか、みみずが目見えずだとかのように、かには座っているように姿勢が低い、という理由があるのでしょうか?
ともあれ、Kaa anakaa.(かにはすわってる。)
ちなみに、カニに指をちょんぎられると脅されただけでなく、 papa 、つまりサメに食べられると脅されたこともあります。
膝くらいまでの水深で、地元の人もいるのに、どうしてサメがやってくるでしょうか。
そう言ったら、おなかがすくとサメは sogea (座席を詰めたり脇に寄ったりする動きを表す動詞)してくるのだと説明されました。
さめがむつごろうだとは知りませんでした……。
びちびちと浅瀬を跳ねているサメはちょっとかわいいかもしれません。

学校の授業で泳ぎを習うわけではないので、海をこわがる人が多い、という意味では、あまり笑い話だけでもないですけど。
もっとも、海沿いの町の地元の人や、もちろん漁師さんたちは平気です。
Papa anapoona njaa, anasogeasogea!
(おなかがすいて、さめがせめてきたぞ!)