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幸せになれてよかったね、と言えなくて|創作大賞感想

    岡埜 由木古(偏光)さんの長編小説『エニシと友達』を読んだ。ホラー小説とのことだったが、私が気になったのは恐怖より主人公エニシの人生だった。

    この作品を最後まで読んだとき、エニシは幸せだったのかわからないと思った。誰が父親かわからず、母のミルカ以外からは望まれて生まれてこなかった境遇。大人には見えないトモダチ。親と引き離されてから出会ったフォンダとの苦痛な生活。そこから逃げ出して出会ったミライ。

    むしろ、幸せだったとは思えない。

    望まれて生まれてきたわけでもなく、自分を育ててくれた人とは別れ、実の母親と無理やり引き剥がされる。縁もゆかりもない男に搾取されそうにもなる。長い時間、誰かの都合で生きてきたから、本当に幸せだっただろうかと疑問に思う。

    助けを求めて逃げ込んだ先でミライに出会えたことには、希望を感じた。エニシ以外に見えないトモダチではなく、実在する友達ができて、少しは気持ちを落ち着かせることができるのではないだろうか。ミライの母親ともだんだん打ち解けていく様子にも、光がさしたように思う。今度こそ、安心して生きられる居場所に辿り着いたと思いたい。

    人生には、どうしても取り返せない時間がある。境遇も選べない。それでも生きていくしかない。そんな中でも、人は誰かと出会うことで前を向けるのかもしれない。

    エニシに対して、「幸せになれてよかったね」とはまだ感じない。でも、「これから少しでも幸せになってほしい」と願わずにはいられない。

    エニシと友達 | 岡埜 由木古(偏光) @henko_3in0 #TALES

     
     
    そらはらゆに。エッセイを書いて生きる文筆家。 ほっこりエッセイ|旅行記|短編小説|読書|喋りすぎる口下手|向上心で突き抜ける|2人の息子の育児に奮闘|感謝を忘れない|つけ麺しか勝たん|好きな色は空色|隠せないジュビロ磐田愛|イメージは抹茶|霊長類最弱女子|

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