
鬼瓦がつづくどこか遠い街で
ひとかけらの白い雲を浮かべて、
空はどこまでも青かった。
その白と青の隙間を、
小鳥ちゃんは高らかに舞い、気持ちよさそうにすべっていた。
小さなハミングが、
思わず空へこぼれ落ちてしまう。
(……今日はいいことあるかも)
小さく息を吸い、
くるりと旋回していると、どこか見覚えのある長い黒髪が目に留まった。
(ほら♡)
小鳥ちゃんはためらうことなく、
急降下の態勢をとった。
地上がぐんぐん近づいてくる。
それでも──
待ちきれないぐらい、
もどかしい。
わずかにスピードをあげる。
もはや飛んでいるというより、ただ落ちている感じ。
それなのに──
(……おっと!)
慌てて急ブレーキをかけ、
空高く舞い戻る。
(……あぶないあぶない)
見知らぬ街には、
古めかしい瓦屋根が続いていた。
けれど、その一角には──
瓦というより、
大きな翼を背負った何かが陣取って、
こちらを睨みつけていた。

(……あそこは無理ね)
(あの目つき……
どうひいき目に見ても、お友だちになんてなれそうにないわね)
今度は、
もう少し右側へ舞い降りようとする。
(ゔ。……ここにも先客がいるのね)

(見つかったら大変ね。
『なんでこんなところに降りるのか?』
なんて聞かれても、正直に答えるのは悔しいし……)
もう一度舞い上がり、
羽音をたてずにそっと降りていく。
けれど──
こんなに注意を払ったのに、
鬼瓦と目が合ってしまった。
(……いったいなんなのよ、この街 > < )
小鳥ちゃんは、
青い空へ高く舞い上がった。

一方──
鬼瓦の下を歩いているウサギは、
そんなことは露知らず、鬼みちの散策を楽しんでいた。
時おり道端に瓦の置き物を見つけると、
ウサギは静かに立ち止まった。
(こんな日に、
ひとりでいるのなんてもったいないわね。
誰かいないかしら……)
辺りをぐるりと見回す。
(……いるわけないよね)
可笑しくなって、
思わず口元を押さえる。

ふと空を見上げると、
屋根を守るように身構える鬼瓦たちが目に留まる。
(……あの子がこんなのを見たら、
きっと腰を抜かすわね)
ふわりと笑うウサギのはるか上空で、
小鳥ちゃんは涙目だった。
(……笑ってないで、こっち見て)
(なんだって、
よりによってこんな所にいるのよ。
……偶然とでもいいたいの?)
小鳥ちゃんはやむなく、
遠くからウサギを見つめていた。
そっと近づける、
そんな瞬間を夢見ながら。
