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百人一首小話(331)ー第58首 大弐三位 その26 『源氏物語』第三部の萌芽ー

    我が子とも言うべき敦康親王を喪って傷心の彰子の願いで、香子(紫式部)が呼び出されました。娘の賢子に、是非にとたっての願いでした。
    道長もそれを許し、香子は参上しました。
    「おお、式部。何年ぶりであろう(実際には5~6年)」
    「大宮様(太皇太后となった彰子をそう呼んでいましたが)にもお変わりなく・・・」
    もう50歳になろうとする香子でしたが、二人は手を取り合って再会の涙を流すのでした。
    寛仁3(1019)年が明けました。
    正月5日、彰子の元へも殿上人たちが新年の挨拶に来ます。その中に実資がいました。以前はずっと足繁く通っていたのに、香子が宮中を下がってからはすっかり姿を見せなくなっていました。
    「ご無沙汰ですこと」
    再従兄妹でもあり、一時は中宮彰子方として反道長の一角を担っていた実資に香子は笑いながら皮肉を言いました。実資も苦笑していました。

    彰子の御所の女房は口々に香子に言いました。
    「式部様、もう物語は書かれませんの?」
    「光源氏は亡くなりましたよ」
    「あの薫様。女三宮様と柏木殿の不義の子の薫はどうなってしまわれたのか。後が知りたいです」
    彰子までが物語の続きに興味ありそうでした。
    賢子は言いました。
    「母上、大宮様(彰子)の敦康様を亡くされた悲しみを癒される為にもお書きください」
    香子は思い出しました。そうだった。一条の帝が崩御された悲しみを癒す為に「若菜」を書いたのだった。
    香子はまた一室を与えられ、光源氏亡き後の世界を書き始めました。
    薫は14歳となり体から香(かぐわ)しい匂いがする。しかし自分の出生の秘密を女房たちの噂話から何となく気づいていて、もの想いに耽っている。対抗馬としては、明石の中宮が産んだ薫より1つ年上の好色な三宮(冷泉院の三宮で和泉式部と浮名を流した為尊親王を想像させました)。三宮は同族(と思っている。まあ薫の実父柏木と明石の中宮も再従兄妹なのですが)薫に対抗心を燃やし、香を焚き染めて「匂宮(におうのみや)」と言われています。
    恋人を想定せねばなりません。村上の帝の八の宮に冷泉院(実在の方)と同じく精神不安定の方がいて、世渡りの下手な不遇な人(これは父為時を想定しました)としてその姫二人を合わせる事にしました。
    もちろん香子と若くして亡くなった姉を範としました。大君(おおいぎみ)と中の君。大君は病身で中の君は愛らしく可愛い。
    「母上。わざと中の君が可愛いとされたのね」
    娘の賢子が言うのに対して、香子は苦笑していました。(続く)



     
     
    私は高堀 枝裕二(しゅうじ)と言います。子供の頃から歴史が大好きで、小編をいくつか書いてきました。同じく歴史好きであり、趣味の歴史の世界に導いてくれた母の死をきっかけに自費出版に踏み切りました。

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