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Into the Blue|掌編小説(朗読あり)

     ――誰だ?

     いつも学校帰りに寄り道する場所に、知らない人がいた。ぼーっと立って海を見ている。海が見える場所なんて他にいくらでもあるのに、なんでここに立っているんだろう。よりによって、私の一番のお気に入りの場所に……。
     私の視線が背中に突き刺さったのか、その人は振り返った。お父さんよりもずっと年上の、男の人だ。ただ、猫背のお父さんとは違い、背筋がすっと伸びている。
    「おや。ここは君の特等席かな?」
    「いや……まぁ」
     さすがに「ええ、そうです」とは言えず、私は視線を下に向けた。どいてくれることを密かに期待する。
    「ここには、いい風が吹いているね」
     男性はそう言って顔を上に向けた。お互い、無言の時間が流れる。この人は一体何がしたいんだろう。
     ――はぁ、帰るか。
     そう思った瞬間、男性は突然私の目を真っすぐに見た。私は警戒心をむき出しにして睨み返す。
    「そうだ。君にあげよう」
    「え? 何を……ですか?」
     少しだけ後ずさった私の様子を気にすることなく、男性は両手を前に出した。見えない何かを抱えるように。

    「受け取れ。青き風だ」

     ――うわ!?

     風が私の全身を駆け抜け、思わず目を閉じる。
     ゆっくり目を開けると、そこに男性の姿はなく、ただ青い海が広がっているだけだった。

    (了)


    バナー写真は2018年に雄武町おうむちょうから撮ったオホーツク海。


    stand.fmにて、あんみんラジオさんとミントさんに朗読して頂きました。
    ありがとうございます。



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    現代ドラマの掌編、短編小説をメインに投稿中。 たまにピアノで西村由紀江さんとジョージ・ウィンストンと日吉真澄さんの曲を弾きます。 ソリスピア第6回超短編小説祭入選。 第1回文苑堂54字の物語コンテスト最優秀賞&特別賞。 第12回自作小説の一節コンテスト最優秀賞。

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