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猫と傘|掌編小説

     長靴をはいた猫なら絵本で見たことあるけど、傘を差した猫は
    初めて見た。

     その茶トラ猫は、器用に前足を使って青い傘を持ち、水たまりを
    じっと見つめている。

    「ねぇ、なにか見えるの? ただの水たまりだよ?」

     声をかけると、猫は「向こうは晴れてるんだけどなぁ」と言った。

    「向こうって……どこ?」
    「ほら、見てみなよ」

     ――あ!

    水たまりには青空が映っていて、ふわふわと白い雲も流れている。

    「いいなぁ。こっちは毎日雨ばかりで、嫌になっちゃうよ」

     ――あれ?

     もう猫はいなかった。

     水たまりの向こうから、僕を見つめる猫がいる。

     一瞬、猫が笑ったように見えたのは……。

     きっと、気のせいだ。

    (了)


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    現代ドラマの掌編、短編小説をメインに投稿中。 たまにピアノで西村由紀江さんとジョージ・ウィンストンと日吉真澄さんの曲を弾きます。 ソリスピア第6回超短編小説祭入選。 第1回文苑堂54字の物語コンテスト最優秀賞&特別賞。 第12回自作小説の一節コンテスト最優秀賞。

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