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WEBER エアバイパススクリューの本来の機能 -対策後とは-


    ウェーバーキャブレターのDCOEには対策前(未対策)・対策後、ツノ無し・ツノ有りと言われるものがありますが、具体的に性能差はあるのか、なにが違うのかをきちんと記述した記事は見つかりません。恐らく、日本語で細かく解説する記事は本文が初めてのものかと思います。

    以下、本記事ではエアバイパススクリューがないものを「対策前」、あるものを「対策後」と呼び分けます。

    本記事では、基本的なエアバイパススクリューの構造及び、エアバイパススクリューによりどのようなセッティングが行えるかについて考察しながら、その応用についても考えて行きたいと思います。

    本当の仕組みが理解できれば、巷で言われている対策前の方が対策後より性能が発揮できる等と言った話が全くの誤解であるということがわかるかと思います。
    個人的にはエアバイパススクリューの追加には様々な背景があるかと思いますが、レーシングキャブレターとして正統な進化をしたカタチであると思います。

    エアバイパススクリューが追加された背景には、より細かなセッティングをできるようにすることで排ガスをクリーンにする必要があるという社会情勢的背景、もう1つは品質管理やコストの問題から、多少各々の部品自体の精度や組み立ての精度が落ちてもそれによる不具合をリカバリーできるようにするという製造メーカーの社内的背景、そして、やはり汎用のレーシングキャブレターとしてエンジンの性能を最大限引き出す為の更なる進化への挑戦と言った3つの理由があると考えます。


    ツノ無し・ツノ有りという区別はトップカバーの形状や追加されたエアバイパススクリューで外観ですぐにわかりますが、対策前・対策後とはどういうことでしょうか。
    これは一般的には自動車等の排気ガスによる公害問題から世界的に排気ガス規制が厳しくなったので、その検査クリアする為にエアを吸わせる経路を作ることで燃調を薄くすると言った話からできた呼び分けと考えられております。
    実際、エアバイパススクリューの構造・役割を理解することで排ガスをクリーンにすることができます。
    ですが、ただエアを余分に吸わせて燃調を薄くするだけであれば、アイドルジェットの番手や、アイドルアジャストスクリューで燃料を絞ればいいだけです。燃調を薄くすることで回転が落ち込むようであればスロットルアジャストスクリューでエンジンの回転数を調整すればいいだけです。実際、このただA/F比を薄くするこのやり方ではうまく混合気が燃えず、HCが多く出てしまいます。ただエアを増やすためだけの使い方は本来の役割ではないと言えます。

    では、エアバイパススクリューの本来の役割とはなんでしょうか。

    端的に言うと、2つのチョーク(ベンチュリーやスロートとも言う)を持つDCOE型において、1機内で左右のチョークの同調を取れるようにする為の機構であると言えます。



    DCOE型では1本のスロットルシャフトで左右2枚のスロットルバタフライを動かす為、対策前のDCOEでは1機のキャブレター内の2つのチョークの同調を取ることはできませんでした。
    左右それぞれのスロットルバタフライやスロットルシャフトの工作精度の問題や使用に伴う摩耗やねじれにより、1機内の左右の同調が取れていないことが多々あります。(ここで言う工作精度は例え新品であっても生じてしまう各々の誤差のことです。当時の工作レベルを想像しつつ、設計時の寸法公差という考えについて調べてみてください)

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    図1.エアバイパス経路

    そこで、図1のようにスロットルバタフライの前後をつなぐスロットルバタフライとは独立したエアの経路を設け、スクリューによりそのエア流量(厳密には吸入負圧)をコントロールできるように設計されたものが対策後と言われるものです。
    これにより、負圧の強いアイドル域において、左右独立してエアの流量をコントロールすることが可能となります。

    キャブレターの同調が取れていないと、燃調を絞ってもCO値は下がるがHC値が下がらないなどの症状が出ます。これは、それぞれのエア流量(厳密には吸入負圧)が異なり、燃調が各気筒でバラけてしまい未燃焼ガスが増加するからです。
    HC値はガスが濃すぎても薄すぎても増加します。
    その為、吸入負圧の強いアイドル領域において、各々の負圧のコントロールが可能になり、未燃焼ガスの排出を抑えられ、排ガス規制をクリアしやすくなります。
    本来の意味での対策後というのはこういうことです。

     また、吸入負圧が強く発生するアイドル域では、スロットルバタフライやシャフトのわずかな精度の差の影響が大きく現れてきます。
    製造過程での金型の摩耗や組立工程での作業者の能力のバラツキなどのクオリティコントロールも非常にシビアであったと思われますが、エアバイパススクリューを設けることにより、製造誤差の許容範囲を広げることができるようになり、製造コストを抑えることができるようになると設計者も考えていたのではないかと思います。

    そして、ここからはエアバイパススクリューがあることによって広がったその他のセッティングへの応用例について考えていきたいと思います。

     
     
    五感で感じ、想像できる、アナログでメカニカルな機械が好きです。 特に車やバイクについての記事を書こうと思います。

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