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団地の遊び 夜の集会所の出来事


    夜の集会所の出来事

     MM2(仮名)は、夜、集会所の軒下で勉強する。なぜなら、家が急に貧乏になってしまい、電気代も払うのが大変になったからだった。
     団地は基本、あちこち街灯もあるし、夜でも結構明るい。集会所は、一晩中、建物は灯りが点いている。
     大きな四角柱の横で、MM2は柱にもたれ勉強する。軒下なので、雨が降っても平気である。
     昭和の夜は早い。すぐ近くの団地中央の商店街もストアーも七時には閉まってしまう。
     集会所なんて五時前ぐらいには、もう職員がいなくなっていた記憶がある。
     夜、人のいなくなった集会所の柱の横で、一人勉強してると、時々、なんかあるらしい。
     基本、MM2はUFOに二回さらわれたと言ってる奴である。そして、やたらと話を、超常現象的な方へ持っていくクセがあった。
     一番奥のトイレ、MM2が言う。集会所のトイレはよく使った。
     トイレの個室にオッサンが入ってった、なかなか出てこない、様子見に行ったら、いなかった、MM2が、どうだ?というふうに見回す。
     転送装置だな、あきらかに学級委員Rが話を合わせた。山岡しおりがため息をつき、ずーっと見てたわけじゃあないんでしょ。
     まあ、そりゃ・・・MM2が口ごもる。
     集会所の屋根、上れるだろ、MM2の言葉に皆頷く。夜遅く、登って、そこで寝てるヤツいる、朝になると、素早く消える。
     オマエ、朝までここいるのか?キーちゃんが驚く。いや、学校行く時、降りてくるの見た、いわゆる労務者風だな。
     おい!それホームレスじゃあねえかよ!自治会長の息子高橋が一大事というように言う。やっぱいたのか。
     話出てたの?山岡しおりが聞く。なんかチラホラ目撃情報があった、
    高橋が頷く。
     オレ、ホメられたぜ、MM2が微笑む。よく勉強してるな、俺みたいになるなよって。
     そいつ、良美ちゃんのウチいたヤツ?三村夏子が訊く。大きな一軒家に住む良美ちゃんの家の、蔵にホームレスが住んでいた。
     いや、わからん、アイツすごい速さで逃げたろ、MM2が言った。
     蔵で見つかったホームレスは、ものすごい速さで壁を登りアッという間に姿を消したのだった。くさいニオイを、あたり周辺に残して。
     団地はホームレスに関しては、うるさかった。トイレはあるし、雨風しのげる所は多い。なので、絶対に、いないようにしていた。
     そいつ、今どこいるんだ?昼間は?高橋が訊く。昼間はいないみたい、食糧でもさがしてるんじゃあないか?MM2が気楽に言った。
     何人かいるって、MM2がニヤリと笑う。
     おいおい、勘弁してくれ、高橋が頭を抱える。団地巡回班がいて、夜とかでも見回りする。もちろん自治会の仕事である。つまり、さらに注意して、巡回することになるのだった。
     集会所のトイレ個室の一番奥は、なんかヤバいというのは、聞いていた。ただ、それが、なんでヤバいのか、そのへんのことは、全く忘れている。
     少なくとも、MM2の言っていた話とは違った。その個室に入ったら、別の所に行くという事になっている。そんな話ではなかった。
     オレがよくもたれてる四角い柱あるだろう、MM2がさらに続ける。
     あの柱、中に入れるんだぜ。
     はあ?みんな、全員、そういう顔をした。
     中に入れるし、出ることもできる。
     もはや、誰も何も言わなかった。
     夜、集会所の軒下、四角い柱のかげで、勉強してるのは、みんなが知っている。
     つまり亜空間ベクトルZ101みたいなものか?学級委員Rがとても小学生とは思えない言葉を使う。
     その通り!MM2が人差し指で宙を指す。
     にしても、今日は、普段はどちらかというと懐疑的な学級委員Rが、やけにMM2の話に合わせてきている。コイツは学校で児童会の書記もやってるので、ストレスでも溜まってるのかもしれない。
     どことつながってるの?三村夏子が訊く。行くなって、アンナさんに言われた。宇宙人UFOのサイボーグのことである。金髪白人女である(詳細省略)。
     それはお袋に報告しなくてもいいな、自治会長の息子高橋が頷く。
     しなくていいと思う。そんな亜空間ベクトルまで自治会が気にしていたら、仕事が大変になる。
     まあ、そんな感じかな、MM2が、一人満足そうに話をまとめる。
     いつもの芝生、楠の木の下だった。
     本当はここで勉強したいんだが、暗いんだよな、MM2がつぶやく。
     それは知っていた。夜、ここに来ると、なんとか見えるという程度で、楠の木の下に入ったりしたら、真っ暗だった。
     MM2が夜、集会所で勉強してるのは、担任のK先生も知っていた。裏事情も把握している。
     時々、様子見てやれ、集会所に近い号棟に住む、山岡や高橋は、先生にそう言われていた。
     山岡はほんとに時々、見に行った。
     そして、後年、高橋にこの話をしたらこう言った。
    「一度も行かなかったし、行こうとも思わなかったね」
     

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