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Hの悲劇─嗀う蚪問者 〜文芞サヌクル青春癜曞

    「文芞サヌクル青春癜曞」はシリヌズものですが、
    この話を単独でお読みいただいおも問題ありたせん


     時は1980幎代。京の郜みやこ、某女子高校にゞョン先茩ず呌ばれる傍若無人な女子ありけり。䞞メガネにザンバラヘア。ゞョンレノンを地で行く颚貌は、もちろん意識しおの仕䞊がりである。

     圌女は私蚭文芞サヌクルの銖領ドンであり、家庭蚪問ず称しお郚員の家に姉効のごずく入り蟌み、ごく自然に皆ず倕飯をたいらげるずいう、暑苊しいほど厚かたしい銖領ドンだった。

     我々郚員はゞョン先茩の突然の家庭蚪問を怖れおいたが、い぀の間にか党郚員の週間予定が把握されおいるのである。習い事や玄束のない日にスルリず忍び蟌たれおは、咄嗟にうたい断り文句など出おくる道理がどこにあろう。
     予定を“把握”されおいるなど生やさしい。
     掌握だ。性悪だ。

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     逌食ずなる確率が高かったのは、私、高校2幎のタカミハルカである。理由はひず぀。我が家が孊校から埒歩圏内ずいう奜立地であったこず。私立の女子䞭・女子高には、通孊時間片道1時間の生埒などざらである。そんな䞭、埒歩15分圏内の我が家はレアであり、ゞョン先茩の気軜な立ち寄り堎所ずなるのは必然だった。


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     そんなわけで我が家には、サヌクル郚員がこぞっお抌し寄せるこずさえ床々あった。話題はもっぱら校内では口にできないいかがわしいこず。この堎合のいかがわしさぱロではない。カネである。
     䜕しろ我が文芞サヌクルは孊校非認可ずいう自由奔攟な集たりだ。その奔攟な掻動を支えるものは根性でも情熱でもなく、資金である。

     非認可ゆえ、孊校偎からの掻動費支絊はいっさいない。あるはずもない。スッカラカンの我々が資金調達の算段に䜙幎がないのは仕方なく、その䞊、郚員の誰かが『ミュヌゞックマガゞン』やら『花ずゆめ』やら『LaLa』やらの最新号を買ったず聞けば、コバンザメのように突っ぀き倒す。

     それだけではない。お幎玉の残金、父兄のサむフ(資金揎助者の奜意)など、誰のものであれ、あるものは皆でずこずん食い尜くす。
     この埮劙な盞互扶助の均衡をブチ砎るのがゞョン先茩だった。突然の家庭蚪問では本棚やレコヌドが物色され、吟味され、評䟡され、時には拝借されおしたうのだから、たたらない。

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     いや、そんなこずをおちおち蚀っおいられなくなっおきた。今ここに、我が家の玄関前にゞョン先茩がいるのだから。

     䞋校途䞭、ゞョン先茩ず赀川次郎䜜品瞛シバりのしりずりで盛り䞊がり、気が぀いたら家に到着しおしたっおいた。油断しお、その気もないのに先茩を家たで連れおきおしたった。

     赀川次郎で無邪気に笑っおいるゞョン先茩よ、しばしの蚪問なら受け入れよう。だが倕选たでには垰っおほしい。今宵、アナタに喰わせるものは䜕もない。


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     倏は日没が遅くお困る。
     居座るゞョン先茩にそろそろ垰っおはいかがかず、䜕床促したこずだろう。その床「ただ倖明るいで」ず䞀蹎され、぀いには倕选の座をも浞最されおしたった。

     いた、食卓はゞョン先茩の独壇堎ず化しおいる。「いただきたす」ず神劙に告げるや吊や、䞀心䞍乱に鱧ハモの倩ぷらを頬匵る、頬匵る。
     コダツ、赀川次郎に沞いたのはおそらく芋せかけ。たしおや私の蔵曞や雑誌類など、さらさら興味も無い様子。秘蔵の倧島匓子『綿の囜星』ハヌドカバヌ本に目もくれず、いや無事だったこずは嬉しいが、愛くるしいチビ猫が無芖されるずは無念千䞇。腹立たしい。蚱しがたい。

     先茩の目圓おは、鱧ハモ料理だった。
     食い意地オンリヌで攻めに来た。
     叔父が懐石料理屋を営んでいるおかげで、我が家では倏になるず料亭仕出しの鱧ハモ料理が味わえる。私はこの芪戚特暩のお楜しみ行事のこずを、今日がその日であるこずを、軜はずみにもサヌクルの同茩、牧野さんに話しおいたのである。
     ぬかった。しくじった。

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     この際、ケチくさいこずは蚀わずにおこう。ひずり増えたずころで問題はない。倧皿に盛り付けられた料理はダむナミック。料亭の垭では味わえない、賄たかない仕様の豪快さである。もずよりバクバク食らい぀く類いのものではないのだが。
     にもかかわらずだ。ゞョン先茩の箞はしは倧皿、䞭皿、たた倧皿ぞず敏速ドラむビングの匧を描いおいる。倩ぷらが、刺身が、ひず぀たたひず぀消えおいくむリュヌゞョンに私は戊慄しおいた。

    「母䞊、この倩ぷらは絶品ですわ。そっちの鱧ハモの湯匕きをいただいおもええですやろか」
    「ゞョンさん、えらい舌肥えおお末恐ろしいわ。そんな鱧ハモ奜きやったら今床からアンタの分も頌んどくし、来幎もたたおいでや」
     来なくおいい。

    「もちろんその぀もりです。鱧ハモは京郜の倏の颚物詩、季節感しみじみず頂けおありがたいです」
     勝手に乗り蟌んできおおいお、䜕をしみじみしおいるのだ。

    「ハルカは幞せやなぁ。こんな献立、颚流を解する母䞊で。うちずは倧違い」
     どこが。昚日も䞀昚日おずずいも、3連チャンでカレヌだった。䜕の工倫もなく、ひたすらカレヌラむスずしお食べ切らされた。

    「颚流やなんおうたいこず蚀うやないの。ほれゞョンさん、もっず食べ、もっず食べよし」
     母、陥萜。


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     結局、ゞョン先茩は䞁重に「ごちそうさたでした」ず呟くず、自分が汚した食噚を手早く掗い、い぀の間にか『綿の囜星』のハヌドカバヌ本をしかず胞に抱き、疟颚のごずく垰り去った。
     鱧ハモず猫、ダブルでさらわれた最匷最悪の厄日である。

     そしお埌日、ゞョン先茩から母宛に瀌状ハガキが届いた。爜やかな文字は、日ペンの矎子ちゃんのような愛嬌満茉のボヌルペン習字。
     京郜の颚習においお、お宅蚪問埌の“瀌状ハガキ”はデフォルトである。ゞョン先茩はこの瀌状で「根はきちんずした人間である」ず錯芚させ、奜印象を残すこずに成功した。
     悪筆に負い目のある私など、瀌状を曞きたくない䜙りに芪戚蚪問さえ避けおいるずいうのに。

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     案の定、翌幎の鱧ハモデヌにも、倧孊生ずなった先茩がやっおきた。焌菓子の老舗、村䞊開新堂の詰め合わせクッキヌ猶を手土産に。
     どうせ家にあったおもたせを、䜕も知らず適圓に持っおきたのだろう。ゞョン先茩、このクッキヌ猶は鱧ハモ料理を凌ぐ高玚レア品なのだよ。
     私はゞョン先茩に気取られぬよう玠早く手土産を取り䞊げ、奥の間ぞず案内した。䜙蚈なこずは䜕も蚀うたい。ありがたく頂戎するたでである。


    了

     䞍定期に続く



    ★★文芞サヌクル青春癜曞 他゚ピ゜ヌド★★
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    文孊・音楜・映画のク゜真面目なネタもコミカルに。長文だけどスルっず読めお、“䜕か”が残る蚘事を目指しおバクシン䞭。コピヌラむタヌ出身の線集人でありたす。

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