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Billboard JAPAN集計方針変更の是非

    Billboard JAPANがチャートの集計方針を変更した。いわゆるリカレント制度を導入するというものだ。

    チャートインして何週間以上経ち、ある一定のポイントを得られていない作品はチャート圏外扱いにしたりするなど減点する制度のことだ。

    本国のBillboard HOT 100では、チャートイン21週以上で50位内に入れるポイントを得られていない作品はチャート圏外扱いとなるが、Billboard JAPANのHOT 100はもう少し緩いルールにするようだ。
    チャートイン52週(1年)を迎えた作品が対象のようだが、公式の発表が曖昧な説明なので52週になった時点で適用なのか丸1年を過ぎた翌週からなのかも分かりにくい。そして、この発表を基に分析したネット記事やブログによると、本国のように何週以上経って一定のポイントに達していないと圏外送りになるのではなく、どうやら、ポイントを減点し、その減点された状態のポイントが100位内に入れるポイントであれば、そのままランクインできるというもののようだ。

    ロングランヒットや複数楽曲ランクインを売りにしたいアーティスト・レコード会社・ファン側の思惑と、チャートの活性化を図りたいビルボード側の折衷案のようにも見える。

    本国のやり方に比べると中途半端ではあるが、まぁ、ここ最近のBillboard JAPANのチャートを見ていると、緩い改変とは言え、少しでも改善を図ろうとしたことは歓迎すべき事案だとは思う。

    2018年にリリースされたあいみょんの“マリーゴールド”が毎年、年間チャートにランクインし、リリースから7年目となる2024年度の年間チャートにもランクインしているなんて、とてもではないが、きちんと機能しているヒットチャートとは言えない。

    最新のチャートではMrs.GREEN APPLEの楽曲が100位内に18曲も入っているが、こんなのもヒットチャートとして機能していない証拠だ。

    本国のチャートでは超人気アーティストが新しいアルバムを出すと、収録楽曲の全てorほとんどがチャートインするというケースが目立つ。テイラー・スウィフトのようにトップ10内を占拠することもある。

    こういうケースはまだ分かる。でも、リリースされてから日数の経った同一アーティストの楽曲が18曲も入っているなんてヒットチャートでもなんでもない。

    “マリーゴールド”やMrs.GREEN APPLEがストリーミング(サブスク)で聞かれているのは事実だ。そして、いつまで経っても古い曲がチャートから消え去らない、チャートが動かないのは日本のリスナーが新曲を求めていない、というか、音楽自体、ろくに聞いていないということでもある。

    そういう意味ではこれまでのチャートはごく一部の売れているもの、というか活性化していない音楽シーンをリアルに伝えていたと言える。

    ただ、ヒットチャートには現在の音楽シーンのトレンドを伝えるという役目もある。動きのないチャートでは、今、注目すべき楽曲、アーティストの存在が埋もれてしまう。

    だから、リリースされてから、チャートインしてから一定の期間が経った作品のリストラが必要だと思う。

    ちなみに米国のHOT 100でリカレント制度が導入されたのは1991年11月のことだ。

    この時はCDやカセットテープなどのセールスポイントを重視した集計方式に変えた。
    米国のラジオ局は細分化された特定のジャンルの楽曲だけをかけるフォーマット制の局が多いことから、総合的な意味合いのあるポップとかCHR(コンテンポラリー・ヒット・ラジオ)と呼ばれるフォーマットの局でロックやカントリー、R&Bなどといった専門ジャンルの楽曲がヒットするには時間がかかる。
    しかし、シングル盤は熱心なファンが買うからポップ・CHRのフォーマットで上位に入る前に売れてしまう。
    こういう時差のせいで、セールスポイントを重視したチャート集計にすれば必然的に楽曲は長期ランクインしやすくなってしまった。
    それまでのランキングはエアプレイの比率が高かったし、セールスポイントもPOSデータを用いた精密なものではなかったので時差の影響も少なく21週以上ランクインすることは滅多になかったということなのだろう。
    その結果、リカレント制度が導入されることになった。

    こうした中、シングルのセールスポイントが弱い、ロックなどのジャンルのいわゆるアルバムアーティストはCDやカセットテープなどのシングル盤を流通させず、シングル曲をプロモーションシングルとしてラジオ局に配布するだけになった。
    そのため、ラジオで人気を集めている楽曲=エアプレイ系のチャートでヒットする曲とHOT 100でヒットする曲の乖離が進んでいった。
    なので、ビルボードは98年12月からセールスポイントがなくても=店頭で一般音楽ファンが購入できるシングル盤が流通していなくてもランクインできるというポリシーに変えた。また、これに伴い、ポイント合算の比率をエアプレイ重視に戻した。
    それと同時に、これまではエアプレイポイントの対象となるラジオ局のフォーマットをポップ・CHRに限定していたものを専門ジャンルのラジオ局も加えるようになった。
    このため、ロックやカントリー、R&Bなどのジャンルの楽曲が他のジャンルや総合フォーマットであるポップ・CHRにクロスオーバーするのに時間がかかることから、依然として長期ランクイン曲が多くなった。

    しかし、プロモーションシングルという形のシングル曲も時代にそぐわなくなってきた。

    ダウンロードという音楽ソフト購入の手法が広まり、一時期は死に体状態だったセールスポイントを無視できなくなったからだ。
    また、レーベル側が正式にシングルとして切っていなくても単体で楽曲を購入できるようにもなったことから、シングル曲でなくてもヒット曲になることが可能になった。

    こうした状況を受けて、2005年2月からダウンロードのセールスポイントを加算するようになった。
    しかし、かつてのセールス重視の時ほど、セールスポイントの比率を高めなかったので、長期エントリー曲が多いという傾向は変わらなかった。

    こうした中、2009年にマイケル・ジャクソンが急死した。
    これまでは、訃報など突発的な事案が発生しても、シングル盤の売り上げが急激に伸びることはなかった。伸びても、再生産して流通するまで時間がかかるからタイムラグが発生するので、それほど大きなリバイバルヒットにはならなかった。

    しかし、ダウンロード販売ならレーベル側が再プレスして店頭に並ぶのを待たなくても、リスナーはすぐに購入できる。
    また、CDやレコードなどだと、それなりの金額を払わなくてはならないが、ダウンロードなら安価で購入できる。
    マイケルの訃報を受けて、過去楽曲のダウンロード販売が急激に伸びたのを見たビルボード側はリカレントやリエントリーの基準を変えざるを得ないと判断したのだろう。
    その結果、それまでは余程のことがない限りなかったリエントリーが増えるようになった。

    そして、あっという間に音楽の聞き方はダウンロード販売からサブスク配信やYouTubeなどのストリーミングに移行していった。
    2013年3月からは有料でないストリーミングの再生回数のポイントも加算されることになった。

    そして、それ以降、リカレントやリエントリーの基準もさらに緩和された。
    その結果、毎年、年末年始になるとチャートの半分くらいがクリスマスソングで埋められたり、ハロウィーンのシーズンになると、マイケル・ジャクソンの“スリラー”やレイ・パーカーJr.の“ゴーストバスターズ”がリエントリーすることになった。
    また、アルバムチャートは一部人気アーティストの最新アルバム以外の新譜、特にオリジナルアルバムがほとんどランクインせず、名盤やベスト盤のリエントリーばかりという状況になった。

    リスナーが新曲を求めないのは日本も米国も一緒ということだ。
    だから、ストリーミング時代になり、楽曲の長期ランクイン傾向はさらに“悪化”するようになった。
    テディ・スウィムズの“ルーズ・コントロール”がトップ10内滞在週を63週、HOT 100のチャートイン総週を93週と記録更新したのは、リスナーが新しい曲を積極的に聞かなくなった結果と言っていいと思う。

    こうなると、本国の方では再びリカレントの定義を厳しくするようにシフトすることになるのだろうか。
    ビルボードの基本方針は音楽シーンの活性化を図ることにあるのだから。

    毎年、年末年始になると、マライア・キャリーの“恋人たちのクリスマス”が首位に立つランキングは現在の音楽シーンを反映したチャートとは言えないしね。

    これまで及び腰だった日本で中途半端とは言え、リカレント制度を導入したことを考えると、米国でも再び改革されそうな気もする。

    ※画像は公式HPより

     
     
    一応、マスコミ業界に属している人間 テレビの報道情報番組を中心に活動 映画や音楽を中心に様々なエンタメやアートに興味を抱いている

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