
現代に生きる (14) めでたい死とは何か
掛け軸に一筆、と頼まれて「祖死父死子死孫死」と書いた禅師がいます。「祖父、父親、子供、孫が死ぬ」という意味です。受け取った人は、「冗談ですか? いくら何でもこれはないでしょう。少しもめでたくないじゃないですか」と不平を言いました。さて、皆様はこの掛け軸は縁起が悪いと思いますか。
実は、この書は江戸時代の仙厓義梵(せんがいぎぼん、1750-1837、博多の古刹聖福寺住職。ゆるくかわいい禅画で有名)が書いたものです。なかなか洒脱な生き方をした禅師であり、京都妙心寺の住職就任依頼を2回断ったと言います。
さて、掛け軸の不平を言われた仙厓さんは、「まあ、よく考えてもみなさい。この順番で人生を生きて死ぬことができるのは理想ではないか。もし、一つでも順番が入れ替わったら、悲しみ苦しむこと、然りだ。どうかな?」と答えたというのです。人間として無事自然に生まれ死んでいくことは、有り難くめでたいことではないでしょうか。洒落っ気があるが、人情味溢れる言葉と言えます。
せっかくですから、仙厓さんより古くにもう一人有名な禅師がいますので、紹介しておきます。盤珪永琢(ばんけい ようたく、1622-1693、妙心寺、龍門寺住職)です。仙厓さん同様、盤珪さんと、親しみを込めて「さん」付で呼ばれていました。
ある日盤珪さんに一人の和尚が相談しました。「私は生まれつき短気で困っています。どうかこの短気を直す方法を教えてください」と言うのです。すると、盤珪さんは「そうか、その短気とやらを今ここで見せてはくれないか」と言います。その和尚は困って「今は短気が出ていませんので、お見せできません」と切り返しました。
盤珪さんは諭しながら、「本当に短気なら、今ここで出せるはずだ。では聞くが、お前さんは短気というものが存在すると思っておるのだろう。怒りの心は、自分の思い通りにことが進まないときなどに起こるのだ。それを生まれつきなど、親のせいにするな。今は短気を出せぬというのは、初めから存在しないからだ。惑わされるな。」と言ったそうです。非常に分かりやすく説くのが盤珪さんなのです。
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