メインコンテンツへスキップ
見出し画像
Photo bywh_o_key

小説・強制天職エージェント⑤

    |◁  ◁前  目次  次▷

    小早川が去った後、水島は順調に結果を出し、同期の中で頭一つ出ていた。小早川がいたら、あいつの方が上だったかな、などと自嘲気味になることもあったが。

    ある時、新しいプロジェクトを始めるからと上司に呼び出された。その部屋に小早川がいたのだった。

    小早川は予想通り、退職後、準備期間を経て起業していた。会社の事業内容は転職エージェント。オーエンと提携を結んで、独自のビジネスモデルを展開していくという。その場で詳しい話はなく、水島は小早川の事務所で手伝いをするように、とだけ伝えられた。

    あまり気は進まなかったが、会社命令だから仕方ない、と事務所を訪れた水島は驚いた。怪しいビルの一室で、従業員は彼1人だったのだ。水島は本社で継続中の仕事もあったため、ゆっくり話す時間もなく、訳が分からないまま、新しい仕事が始まった。

    小早川の依頼で、仕事の合間を縫って、会社のデータベースを使って情報収集や資料作りを手伝った。

    客の転職先をこちらで指定して、強制的に3か月間、働かせるという奇妙なシステムについては、先日知ったばかりだった。

    そして今回、手持ちの仕事がひと段落し、こちらの仕事に注力できるようになったため、初めて一から案件に関わることになったのだ。

    まさか、小早川の下で働くことになるとは。
    水島は予想もしていなかった今の状況を振り返った。

    —あいつが会社にいた頃は、追いつけそうで追いつけない状況に焦りもあった。かといって、あいつがオレの上司になるほどの差はなかった。10年後くらいに、出世争いで比較されることはあっても、今後、一緒のチームになることもないだろう—
    小早川が辞めるまでは、そんな風に考えていた。

    仕事を組むのはいいが、小早川が自分のボスというのは気に食わなかった。
    しかし、これはプロジェクトの一環に過ぎない。元同期ということは関係なく、一時的な出向だ。オレは今後、出世していくだろうから、今の時期に外で勉強してこいということだろう。そう、武者修行なのだ。

    |◁  ◁前  目次  次▷


    自作小説一覧はこちら

     
     

    syun

     
     
    書いたり料理したりしてます。最近は手仕事と酵母に没頭中。身体論に興味あり。 noteは小説メインのつもりで始めましたが、ぜんぜん関係ない雑感の方が増えてきました。書かなきゃなー

    あなたへのおすすめ