
草の根ST2110ことはじめ (2) - ST2110を使った収録配信の実際
ST2110のざっくりした紹介と今後やりたいことについて、
でまとめてみたけれど、実際ST2110ってどんなもん?どういう使い心地?かを知るために、業界で価格的にはローエンドのBlackmagicのST2110対応機器を使って、実際に収録と配信をやってみました。
機器構成はこんな感じ。

部分的にはしょってますが、基本的には
3カメ構成
カメラ2つとスイッチャー間をST2110で接続
スイッチして同じPGM出力を収録&ネット配信(YouTube)
メインカメラを私が担当、スイッチャーは専任、インカム(後述)でコミュニケーション
PGM出力をメインカメラに返す
で、なんと6時間以上!に及ぶピアノ発表会&演奏会の収録と配信(一部は収録のみ)に臨みました。
細かいトラブルはいくつかあったもののすべて現場で対応可能で、なんとか長丁場を乗り切れました(参加スタッフに超感謝)。主催者もイベント内容も10年に及ぶお付き合いで、技術的にはほぼ自由にさせてもらっているという気軽さもありますが、一応何度もdry runを繰り返した構成です。
当日のセットアップを、もう少し細かく見ていきます。
カメラ1

メインのカメラはBlackmagic Design Pocket Cinema Camera 4K(通称BMPCC4K)。私がオペレートします。左側はPGM返し用モニター、右は客席後方固定カメラ(Panasonic GH5S)のリモコンアプリです。GH5Sは固定ですが、絞りなどの微調整用にリモート操作します。
BMPCC4Kには同じくBlackmagicのHDMI / SDI Bi Directionalコンバーターを接続してST2110のBi Direct ConverterにSDIで入力します。SDI出力は同じくコンバーターを介してHDMI出力をPGMモニターにつなぎます。

図でははしょっていますが、ST2110からのSDIの返しはSDI to Audio(実際はSDI to HDMI 4K/オーディオ出力付き)コンバーターを介してSDI音声をアナログでディエンベデッドし、自作2chラインミキサー&ヘッドフォンアンプによってST2110のトークバック音声出力とミックスしてモニターしています。

自作ラインミキサーは、本番数日前必要性に気づいて設計しはじめ、手持ち部品だけで前日に完成させるという綱渡り製作w でも中身はシンプルで作りなれた代物なので、何とかなるものです。
そうそう、Blackmagic ST2110 BiDirect のトークバック用5ピン出力のピン配置はこんな風になっています(確かマニュアルのどれかから抜粋)。

注釈にも書いていますが、PCやスマホ用イヤホンマイク用の電源(いわゆるプラグインパワー)は提供「されない」ので、ダイナミックマイクでなくエレクトレット・コンデンサ・マイクを使用したい場合は自分で用意する必要があります。写真右側のがそれですが、市販品もある、というか市販のマイクの付属品としては存在するようです。
このサムネの上側の黒い箱ですね。
回路はとっても簡単なので、はんだ付けができるようなら作ったほうが手軽かもです。いずれヘッドフォンアンプ本体に内蔵させる予定です。
カメラ2

GH5SからのHDMIを同様にコンバーターでSDIに変換し、ST 2110 Bi Directに入力します。こちらではトークバックもPGM返しも使用しないので、いたってシンプルです。ただ、配置上、この位置にST2110用10Gbeスイッチングハブを置かざるを得なかったので、

そこそこカオスになっています。ハブは5ポートですが結構場所を取りますね…。ギガビットハブ並みにコンパクトになるといいなあ。
配信卓
さてスイッチャー側ですが、

ええとこれが全部写ってる…かな?w
ラック内は上左から
YAMAHAルーター(絶対の信頼w)
バッファローWiFiアクセスポイント
Blackmagic 2110 IP Converter 3x3G (今回の主役)
Blackmagic Television Studio HD スイッチャー (もう10年ぐらい使ってる?)
Blackmagic Web Presenter HD (配信エンコーダー)
自作コネクタパネル
とても重要な注意点
ちなみにカメラ2つ繋がっているST2110のネットワークは、配信やスイッチャーコントロールのLANからは分離されています。実はこれをつなげてしまうと、1Gbe側のLAN機器のトランスポートがあふれてしまい、機器によってはハングしたり通信ができなくなったりします。ST2110の映像はリアルタイムでほぼ非圧縮なので、それ以外のネットワークとは選択的にスイッチするか、ルーターを挟むかする必要があります。なので実際には今回使ったようなノンインテリジェントハブを使うのは「お勧めしません」
でもL2スマートハブで10Gbe対応となると高いよなあ…。ルーターだとさらに高い。のでその辺を解決する方法を検討中。乞うご期待w
閑話休題。ラックの上はオーディオレコーディング用のZoom F8n Pro。ラック左側はマルチビューモニター、自作スイッチボックス、そしていろいろw 制御用のPC。
注意点もう一つ
ただこのPCはこの構成では必須で、なぜなら
Blackmagic 2110 IP Converter 3x3Gは入力を固定できない
からで、ネットワークをサーチして利用可能なソースをを順番に入力に割り振ってしまいます。ソースとなるコンバーターを一斉につなげば問題ないはずですが、そうもいかないので、最初に見つかったソースの出力を3つのSDI出力すべてに割り振ってしまうので、ぜんぶを接続し電源も入れたあとに、PCで本体にアクセスして専用制御アプリで出力を「割り振る」必要があります。この辺は本番前に入念な予習が必要ですね。
また前述の理由で、PCとST2110機器を同じネットワークにつなぐことができないので、2110 IP Converter 3x3G とはUSBケーブルで接続する必要があります。この辺も見落としがちなポイントかも。
この 2110 IP Converter 3x3Gはその名の通り、ST2110からの3通りの3G SDIをそれぞれ個別に出力し、3通りの3G SDI入力をST2110に載せることができます。今回はPGM一つだけ載せましたが、AUXで別映像をプロジェクターなどに送ってやる、PCなどのステータス画面などを送る、などもできそうです。その際には ST2110 to HDMIコンバーターなどが便利かもです。

さらなる注意点など
ST2110機器を使い始めてから、これがなかなかネットワーク負荷が重い、ということに初めて気づきました。ほぼ無圧縮なので3Gとか1.5Gとかが映像ソースの数だけ流れるわけなので当然なのですが…。なので前述の「1Gbe機器と混在できない」のはもちろん、
ネットワークケーブルを選ぶ!(Cat. 6A以上が必須)
も重要な発見で、Cat. 6(Aなし)でもダメでした。またノーブランドのケーブルも不安定で、Panduitか「ヨドバシ特製」が安定していていい感じでした。ヨドバシ特製は実はあまり値段も安くないのですが、取り回しもよくてこういう現場では使い勝手が良いです。設備用ならPanduitがいいと思います(硬いけど)。
それで…クロックは?
今回はいろいろ製作や検証が間に合わず、自作スーパー高精度クロックによる同期、は間に合いませんでした。GPSが見通せるところなら可能性はあったのですが…。GPS同期しない内部クロックだけのラズパイ5利用PTPサーバーだと、しょっちゅう同期が外れて使い物にならなかったので、単体で動作する高精度クロックは必須、ということのようです。このへんはもっと研究しようと思っています。