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向日葵#風まかせ文芸部

    その坂道は、毎年夏になると向日葵でいっぱいになる。

    駅から少し離れた住宅街のはずれ。誰が植えたのかもわからないのに、ちゃんと毎年咲く。太陽の方をまっすぐに向いて、誰に見られなくても、堂々と咲く。

    高校生の頃、あの坂道で彼とよく会った。待ち合わせでもないのに、なぜかよく時間が重なって、照れくさそうに挨拶を交わしていた。

    ある日、彼がふいに言った。

    「向日葵ってさ、太陽を見てるようで、ほんとはずっと誰かを探してるみたいに見えるよな」

    そのときは意味がわからなかった。
    ただ笑って、「詩人だね」
    って軽く返した。

    それから何年も経った。彼は遠い町へ行き、私はこの町に残った。あの坂道を通ることも、少なくなった。

    でも、ふと思い出して、今年の夏、ひさしぶりにその坂を登ってみた。

    向日葵は、今年も変わらず咲いていた。

    まっすぐ空を見つめるその姿に、私は少しだけ涙がにじんだ。

    あのとき、私が何を見ていたのか、
    ようやくわかった気がした。


     
     

    てみ

     
     
    書くことが好きです。映画感想文、読書感想文、短歌、小説、体験談、エッセイなど書いています。宮沢賢治、新美南吉の童話好きです。柳田國男の「遠野物語」は大好きです。初noteは、20240222です。

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