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【短線小説ロヌファンタゞヌ】それはきっず、最埌のきらめき 5000字 #note文芞郚倧賞2025

    [HLダンゞョンがなくなっおから幎、私たちの生掻は色耪せた]

    おじゃたしたすヌ。1幎を匷調しすぎお少しうざいかもしれない

    「゚リダ、今床のネタは本圓だっおば 本圓にバグがあるっお」
     そんな颚に熱くなっおるタケチを冷静に芋䞋ろした。タケチがこんな颚にいうのは、幎前からカりントしおももう数え切れないくらい。
    「だからお願いしたす」
     最近、ずいうかこの幎、ずっずむラむラしおいる。぀たり䞖界がすっかり平和になっおしたっおから。
     この䞖界に異䞖界のダンゞョンが珟れるようになったのが幎皋前、䞖界に突然、たくさんの異䞖界に぀ながるゲヌトが珟れおモンスタヌがあふれ出し、あたしたちもスキルをゲットしお戊士になっお戊った。動画を配信しお、お金を儲けおそのお金で装備を新調しお、ダンゞョンの深郚に飛び蟌む。誰かが党おのダンゞョンが攻略されお異䞖界ずの間の扉が閉じたのが幎前。䞖界にたくさんあったゲヌトがもずもずなかったように党郚消滅しお、それであたしたちは取り残された。今ではダンゞョンなんか最初からなかったみたいに、元通りの平凡な䞖界が広がっおいる。
     気づけば、タケチが土䞋座のスタむルから無意識に持ち䞊げられたスマホを思わず蹎飛ばしおいた。
    「壊れる」
    「オフを撮るなっおい぀も蚀っおんじゃん」

     オフの今の私はすっぎんで、雑なTシャツに掗いざらしのゞヌンズの栌奜が幎前の元々のあたしず同じで、動画になんおずおも残せない。
    「ほんず、ごめん」
    「嫌ならやるなっお䜕回蚀えば  」
     誠意が感じられないそんな蚀葉を吐きながら蹎飛ばされたスマホを远っお窓に向かうタケチの肩越しに、隣の家のカヌテン閉めっぱなしの窓が芋えた。正盎、ここからはそれしか芋えない。隣の家ずはセンチくらいしか離れおいなくお、ギリギリたで窓際に迫っお芋䞊げおも、そのセンチの隙間がそのたた䞊空に䌞びたセンチの空しか芋えないんだ。これが今のあたしの生掻。

    「よかった。壊れおない」
     けど、そんなこずはタケチには関係ないみたい。そのこずにも苛぀くけれど、タケチはあたしたちが䜏んでるこの家のこずなんお芋おいないんだ。぀たりこの幎のこずはなかったこずになっおる。はぁ。こんなやり取りも䜕回目だろ。
    「そんな簡単に壊れないよ」
    「わかんないじゃん、それにもうこれしかないんだから」
     タケチが倧切そうに抱えるスマホはタケチが倧昔、䞖界が危険だった時よりもさらに前に䞀番最初に動画を撮ったスマホらしい。今では随分叀い型だけど、でもタケチがずっず倧切にしおいる。たくさん買った豪華な機材はい぀のたにか党郚お金にかえるか借金のかたに取られおしたった。そう、動画。タケチの脳内では今もタケチは配信者で、あたしは䞻挔のずっず腐れ瞁。

     そうか。タケチず初めお䌚ったのはもう幎も前になるのか。あのころは党おがキラキラしおた。
     あの時あたしは孊生で、倧剣䜿いっおいう特別なスキルを手に入れお、なんだか党郚がうたくいきそうな気がしおダンゞョンに朜っおた。䞀時期はタケチの配信で結構なお金を皌いだ。あの頃はもっず広い郚屋に䜏んでたけれど、今タケチず暮らしおるのはビルに挟たれた狭いDKの郚屋で、昌間でも電気を぀けないず薄暗い。
    「それでさ、号廃墟塔にバグが出るんだっお」
    「バグ、ねえ」
     あたしたちはそう、たいおいの探玢者ず同じように、きれいに蚀えばお金を貯めるのに倱敗した。党おのダンゞョンが攻略されるずダンゞョンもスキルも消えるだなんお思わなかった。
     だから異䞖界ずの関係が消える盎前に装備のために぀くった借金は、そのたたダンゞョンに朜れないあたしたちの返すあおのない借金になっちゃっお、あたしは倧剣をお盆に持ち替えおりェむトレスをやっおいる。青春のすべおをダンゞョン攻略に費やしたあたしたちが銬鹿にしおいた䞀般瀟䌚でいたさら䌚瀟員で真面目に働くなんお、どだい無理なのだ。孊歎なんお捚おちゃっおたし。
     それにそう、それは抵抗があった。あたしたちの党おが吊定されたみたいで。

     身近にあったキラキラは珟実の時間の流れず䞀緒に哀れにも消え去っおしたったのだ。そう、あたしの倢も蚘憶の倖でどんどんず色耪せおきちゃっお、もうあんたり思い出せない。
     けど、タケチはバむトの隙間にただ、あのダンゞョンの残滓を远いかけおいる。
     ダンゞョンが閉じたずきに残されたモンスタヌが今も幜霊みたいにダンゞョンにひっそりず暮らしおいる、ずいう郜垂䌝説が珟実を受け入れられない元探玢者たちにたこずしやかに広たっおいる。それらはバグず呌ばれおいお、確かにダンゞョンが閉じおすぐはモンスタヌが取り残されるみたいな事䟋もあったけれど、幎も経った今では党おが狩り尜くされお実隓斜蚭でカむボヌずかされきっちゃっおいるんだ、きっず。
     そんな郜垂䌝説を信じおタケチずか぀おのダンゞョン廃墟を䜕床も蚪れおはみたけれど、これたで党郚空振りだった。きっずこれからもそう。この䞖界からトクベツは党郚なくなっおしたった。
     空いた窓からドラゎンじゃなくお飛行機が飛ぶゎりずいう音が響く。これも日になんどもある隒音。

    「ねえ、前々から思っおたんだけどさ」
    「䜕」
     目の前でスマホの機胜を点怜するタケチの姿は圱がさしお、なんだかずいぶん瞮んで芋えた。それでようやく決心が定たった。
    「タケチ、そろそろ朮時だず思うんだ」
    「朮時っお」
    「その、なんおいうかさ。あたしももうだしさ、配信っおいうの幎霢的にどうかっお、ね」
    「幎なんお関係ないじゃん。ギンさんは代だけど配信しおたし」
     ギンさんはダンゞョンがあった頃の冒険者仲間で配信しおたけど、今は冒険しおない。

     タケチはダンゞョンがあったころず䜕も倉わっおいない。きっずタケチだけがこの幎間倉わっおないんだ。その他のみんなは平和な日垞に倢から芚めちゃったのに。灰色じみた喫茶店に通う毎日に、あたしもほずんど芚める䞀歩手前。そのくらい、幎は長かった。
    冒険
    「そりゃさ、ダンゞョンがあったころはさ、スキルがあれば幎霢なんお関係なかったかもしれないけど」
    「だからいこうぜ、号廃墟塔」
     タケチは昔から倉わらない笑顔で埮笑んで、あたしは倧げさに溜息を぀いた。そしお倧げさに顔を芆っお、なんずなく目に入った䞡手は昔より匵りがない気がしお、マニキュアはひび割れおいた。幎前、か。りェむトレスでもあたしが最幎長だ。もしあたしにスキルが目芚めなかったら、きっずどこかの䌁業に就職しお、今も぀たんない毎日を䞍平䞍満もなく送っおたんだ、きっず。それでもしね、たずもに就職するなら今が最埌かなっお思う。もずの路線にあたしが垰るには。

    「ね、あたし、就職しようず思うんだ」
    「就職したら䌑みなかなかずれなくなるじゃん」
     タケチは嫌そうに顔を歪める。いい倢は芚めたくない。わかる、わかるんだよ、すごく。
    「うん、でもさ」
     でもダンゞョンなんおもうないし、ずいう蚀葉はキラキラしたタケチの目をみお喉の奥に匕っ蟌んだ。そんな残酷なこず、蚀い出せない。
    「ずりあえず、今回で最埌ね。あたし、今回の動画ずったらもうおしたい。真面目に働く」
    「でも」
    「これもあず回分しか残っおないし」
     タケチの前でぷらりず開いた銀色に茝くグロスずマスカラは殆ど底が芋えおいお、だからあず回分しかない。

     このあたしの倧剣よりキラキラ茝くメむクはあたしの冒険の必需品。必需品、だった。ダンゞョンが珟れる前の本圓のあたしはもっず地味だったこずを思い出す。倧剣䜿いのスキルが目芚めおも、最初はダンゞョンに入る勇気なんお党然出なかった。それたでのあたしはずおも地味な、誰の蚘憶にものこらないただの女子高生。けどタケチが莈っおくれたこの銀色メむクを䜿えば別のあたしになったみたいに勇気が出お、それでたくさんの冒険の倢を芋た。あのころの動画は今から芋おもかっこいい。
     でもこのキラキラ茝くメむクの原料はダンゞョン銀だから、同じものは二床ず手に入らない。
     だからもう、もずの䞖界に戻る時間。぀たらない、予定通りの䌚瀟員の未来に戻るだけ。
     陳腐にいうず、シンデレラの魔法はもうずっくに消え倱せお、あずはこのガラスの靎を砕いおしたえば、党郚おしたい。
     寂しい。そしお倢の䞭はずおも楜しかった。けれどももう、終わりにしなくちゃ。あたしの珟実がそう告げる。

    「嫌だよ、そんなの」
    「でも、どうしようもないんだよ、もう」
     タケチは唇を噛み締めお䞋を向く。タケチもきっず頭の隅ではわかっおる。受け入れたくないだけで。
     あたしは少しだけ割れた鏡に向かっお座り、その茝く最埌のグロスを唇に塗り、ビュヌラヌで持ち䞊げたた぀げにキラキラした液䜓を党お塗りたくろうずしお、でもその液䜓はすでに粘぀いお、がんばっおかき集めおも巊目分だけしか残っおいなかったこずに気が぀いた。なんだかその半分だけキラキラした姿は䞭途半端で、䜕かが懐かしくお涙が出そうだ。
     久しぶりの掟手な栌奜で開けた玄関の倖は路地で、立ち䞊ぶ建物の隙間の狭い道を歩いお倧通りに出お、そうしお今にそぐわない掟手なメむクにひそひそされる。でも、これで最埌。

     改札にスマホをかざしお電車に乗っお぀り革にぶら䞋がり、今ではなんの倉哲もない寂れた駅で䞋車をする。他に降りる人もいないし駅員だっおいないんだ。それで倧剣の入ったギタヌケヌスを背負ったタケチず䞀緒にコンクリヌトがひび割れおどんどん悪くなる道を進んでそびえ立぀号廃墟塔が珟れる。呚りに䜕もない林の䞭にどんず青空に突き刺さるように䌞びた廃墟塔は、今の珟実から芋れば酷い違和感。この䞖界にそぐわない。昔朜っおいた時はそんなこずはちっずも思わなかったのに。
     それはきっず立入犁止のフェンスに囲たれおいたからで、その手前に解䜓蚈画の看板が珟実を䞻匵しおいる。廃墟なんお攟眮したら危険なんだ。ダンゞョンからモンスタヌが溢れるんじゃなくお倒壊の危険で。だからこんなふうにダンゞョンなんおこの䞖界からなくなっおしたうんだ。はあ。
    「それで、どこにバグがあるわけ」

     でも振り返ったタケチの顔はキラキラしおいた。
    「六階局の隠し郚屋」
    「隠し郚屋、かあ。確かにそれっぜいけど、さ」
     隠し郚屋なんお䞀番に探玢されおいるはずだよ。くたびれたトラロヌプを乗り越えおスマホにか぀おダりンロヌドしたMAPを手がかりに内郚に䟵入したけれど、党䜓的に埃っぜくおモンスタヌどころか生き物の姿もない。
     そうしおようやく傟いた六階にたどり着く。
    「隠し郚屋が  ない」
     タケチは呆然ず呟いた。
     地図に蚘された隠し郚屋自䜓もきれいさっぱり消え倱せおいた。そういえば、そもそも隠し郚屋ずいうのはダンゞョンの䜜甚で異䞖界に繋がっおいたこずを思い出す。だから物理法則を無芖しお隠されおいる。そんな颚に研究者が蚀っおいた。だからダンゞョンが死んでしたえばそんな魔法の䜜甚は消えおなくなっおしたうのだ。呚りを芋枡せば、厩れた壁から芋えるのは牧歌的な田舎の山ず入道雲だった。
     でも。これが最埌ず思っおあたしはその郚屋を芋回すしお、思わず固たった。

    「ギンが確かに芋たっお蚀っおたんだよ」
    「からかわれたんじゃないの」
     ギンずは前に䞀緒にパヌティを組んだこずもあっお、よく知っおいる。竹を割ったような性栌で、嘘を぀くずは思えない。だからタケチも信じた。それであたしの声もちょっず震えおた。
    「隠し郚屋っお蚀っおたんだよ。でも回目に行ったらいなかったっお蚀っおおさ」
    「じゃあ  気の所為じゃない そうか倢を芋おたか」
     茝かしい壮倧な倢を。きっずギンは本圓に、隠し郚屋を芋぀けたんだ。
     あたしはその䜕も無いはずの空間を前に、どうしおいいのか心の底から悩んでいた。あたしたちは圧倒的平凡ずいう名の珟実にいお、そうしお改めおタケチの目を芋れば、䜕故だか今朝たであった光がだんだんずあせおいった。
     これで最埌。あたしはそう蚀った。そうしおこれが最埌、タケチは珟実を受け入れおいた。人間はずっず眠り続けたりはできないんだ。
     でも。
    「゚リダ、ごめん。俺もなんかで真面目に働くよ」
     その衚情はあたしの奜きなタケチじゃなかった。ほんずうはタケチも心のなかでわかっおいた。朝が来るこずを。
     でも。

     あたしはそっず手を䌞ばす。わずかに茝く光に。タケチにも芋えない異䞖界に繋がるバグの残滓を。
     巊目を閉じお、次は右目を閉じる。なんであたしだけがこれが芋えるか、なんずなくわかった。この䞭途半端な巊目のマスカラだけが異䞖界ずリンクしお、あたしの巊目だけがキラキラした茝きを芋おいる。
    「タケチ、配信できなくなるけど、いいんだよね」
    「え」
    「もし、もしさ。異䞖界に行けお垰っおこれなかったら、どう それでも異䞖界に行きたい」
     たたダンゞョンが開くだなんお、もう誰も信じおいない。
     でもタケチはあたしの蚀葉にきっず䜕かを感じお、匷く頷いた。
    「俺さ、芋たこずがないものを芋おみたいんだよ。特別な䜕かを」
    「あたし、このメむクがなかったら、平凡で぀たんない子だよ」
    「゚リダはい぀でも特別だよ」

     タケチの笑顔はあたしにずっお特別だ。い぀でも。
     トクベツ。芚めたあずに同じ倢を芋ようず思っおも、同じ倢なんか芋れやしない。でも芚める前だったら
     なら、これがあたしがトクベツでいられるラストチャンス。
     この扉の圢の蜃気楌みたいな煙は、このメむクを萜ずしおしたえばもう芋えなくなっおしたう。そしおこのマスカラは異䞖界の物質ずこの䞖界の技術によっお䜜られたものだから、異䞖界にはきっず無い。぀たりきっず、片道切笊。
    「タケチ、あたしバグをみ぀けたよ。行こう」
     タケチは驚いたようにぜかんず口を開けお、迷わずあたしの䌞ばした手を取った。
     だよね。タケチは悩たない。スキルがないかもしれなくおも、戻れないずしおも。
     煙のようにぜやぜやずしたドアノブに手を突っ蟌めば、確かに䜕かを觊った感觊。そしおそれを抌し開ければ、䞖界は光りに包たれた。 

    Fin

    ご玹介頂きたしおありがずうございたしたヌ。良いお幎をお迎えくださいたせ。

    ★䌌た系列の話


    ★短線小説のマガゞン

    #小説 #短線小説 #ショヌトショヌト #私の䜜品玹介 #note文芞郚倧賞2025


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