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【短線小説ホラヌ】箱の䞭 4000字

    [HL先祖代々䌝わる幞犏を䞎える箱の䞭にあったものは]

     私の家は旧家だ。江戞時代は歊家で、私の先祖はこの四颚山しふうざんの䞊に城を構える神接こうづ藩䞻に代々仕えおきたそうだ。
     私の目の前に箱がある。䞀蟺センチ四方の正方圢をした癜朚の箱だ。綺麗に磚かれおいる。この箱は初代四颚しふう家圓䞻に莈られたものだず聞く。戊囜時代、四颚家は戊堎の誰もが恐れるような䞀階圓千の掻躍をしたそうだ。その働きに察する䞋賜品ずしお、この箱が莈られた。なんでもこの箱が圓家にある限り、圓家は栄える、そうだ。けれども守らなければならない条件が぀いおいた。

     この箱は決しお開けおはいけない。

     栄えるずは䜕だろう。
     戊囜圓時ず珟代ではあたりに時代が異なる。子沢山も倩䞋無双ももはや珟代の矎埳ではない。それら無䟡倀ずなっおしたったものず匕き換えに、圓䞻はこの家を、もっずいえば箱から離れるこずができないのだ。だからこの箱は最早、この家にずっお呪いに等しいものずなっおいた。
     そしお圓代の圓䞻の私にずっおは特に。

     最埌に先代圓䞻である父ず話したずきのこずを思い出す。あれはやはりこの叀い家の䞀郚屋で、私がちょうど十二歳になった日だ。家で最も新しい子孫が十二歳になれば、その子が次の圓䞻ずなる。
    「ねぇお父さん。あの箱に䜕の意味があるずいうの」
    「千草ちぐさ、これは昔からの決たりなんだ。お前に子どもが生たれるたでの蟛抱だ。そうすればお前の子どもが圓䞻を継ぐ。どこにでも行けるようになるさ」
     それは父も同じ事。そしお父はそうしたのだ。だから私はたすたす、父の蚀うこずがわからなかった。
     父の嬉しさず申し蚳無さのあふれるぎこちない笑顔を芋䞊げた。この亀代が私が十二歳になったずきに行われるこずを、私はもっず小さいころから知っおいた。だからこの父に、どのような感情をもっおよいのか、最早わからなかった。私はそのために生たれたのだから。

     この家は最も若い代の長子が圓䞻ずなる。父に子は私しかない。぀たり私は生たれたずきから圓䞻になるこずが予定されおいた。
    「お父さんは私が生たれお喜んだ」
     そう問えば、父はい぀も耇雑な衚情をしお口を぀ぐむ。父が結婚しお子どもを䜜ったのは歳の時だ。そしお私の母である人は、私を産んですぐ離婚しお家を出たず聞いおいる。父はそれなりに倧切に私を育おた。けれどもおそらく、私より自身の自由の方が倧切だったのだろう。成長するたび、幎を重ねるたび、瞁偎の倖を眺める父の瞳からその感情がありありず芋お取れた。結局家の内偎にいる私自身には、ろくに関心もなかったのだ。むしろ、なるべく関心を持たないようにしおいたのかもしれない。眪悪感で。

     それから幎、぀たり私が生たれお十二歳になったこの日、父はようやく圓䞻の座を降りおどこでも行けるようになる。私を身代わりにこの家に眮いお。父の代わりに、私はもう、修孊旅行にも垂倖の遠足や臚海孊校にも確定的に行けなくなる。四颚家の圓䞻は神接垂を離れおはいけない、もっずいえば箱から離れおはいけない決たりになっおいる。
     私に将来子どもが生たれお十二歳になれば、私の代わりにこの家に瞛り付けられる。そんなこずはずおも気が進たなかった。父もか぀おはそう思ったのかもしれない。けれどもくらいになれば父のように子どもを欲するようになるのだろうか。この家から逃げ出すために。ずおも暗柹たる気持ちが胞の奥に降り積もっおいた。

    「お父さん。本圓にこんなこずに意味あるの 私がこの町を出たら䜕が起こるっおいうの。なにも起こるはずがないでしょう」
     それでも最埌に、私は聞いた。
     この箱はずおも䞍合理だ。圓䞻は箱から離れおはならない。かわりに子孫繁栄が玄束されるずしおも、私はそんな犠牲の䞊での繁栄なんお望たない。第䞀、時代錯誀だ。私はそれを父に肯定しおほしかった。けれどもその垌望に反しお父は急に声を顰めた。誰にも聞こえないようにかすれた声だ。
    「千草、お前にも聞こえるだろう 声が」
    「そんなものは幻聎です」
     けれども、私の声も自然ず顰められた。家の柱がギシリず、きしんだ気がしたからだ。叀い家はきしむものだず思い返しおも、生たれたずきから家の奥にある箱の存圚感は私の魂に刻み蟌たれおいた。
     箱はこの家の奥の奥にある神棚に収められおいる。だから聞かれるはずがない。それにあの声は幻聎だ。そうに違いない。私もそう思っおいる。けれども確かに、私は小さい頃から箱の声を聞いおいた。

     四颚家には箱に関する決たりがもう䞀぀ある。箱の声に返事をしおはいけないずいうこずだ。
     そんな蚀い䌝えがあるずいうこずは、箱から声が聞こえるずいうこずが前提になっおいる。けれどもこの箱は四颚家の神棚に眮かれおから数癟幎は経過しおいる。声が聞こえるはずがない。もし声が聞こえるずいうのであれば、その䞭身は数癟幎前からこの箱の䞭に䜕かいるずいうこずだ。
     そう思えば背筋が寒くなる。そんな人知の及ばないもの。人知が及ばない。だからそんなものは存圚しない。存圚しお良いはずがない。

     父は家を出おいった。そしお私が䞀人残された。
     私が父に最埌に䌚ったのはあの歳の日だ。父はこの家から逃げるように、海倖に行っおしたった。時折矩務的に電話やネットで連絡はあるが、この家の、特にあの箱に぀いおは話題にしようずはしなかった。
     そうしお私がこの家に䞀人で暮らすようになっお幎が過ぎた。歳の誕生日だ。この囜の法埋でも、成人した。
     この家には䜏み蟌みのお手䌝いさんがいるから生掻に問題はない。
     修孊旅行は䌑んだ。
     友達はそれなりに倚い。
     友達の半分ほどは東京や倧阪に進孊する。
     残る友達もいる。
     けれども卒業旅行の話には加われない。
     私はずっず、この家で䞀人で暮らすんだろうか。これからも
     もし私に子どもが生たれたら、やはり運呜を呪うだろう。この呪いのような祝いはすでに祝いの意味を持たない。誰かを䞍幞にするのなら、私が終わらせおもいいのでは。

    『助けお』
     県の前の癜い箱から声が聞こえた。小さくか现い声だ。
    『誰か。お願い』
     箱から聞こえる声は私が小さい頃からずっず同じだ。助けを求める声だ。子どもの声のように聞こえる。
     この声が本圓に聞こえおいるのなら、この声は䜕だろう。䜕故助けを求めおいるの。
     座敷わらしの話が思い浮かぶ。家の䞭に閉じ蟌めおおくこずで、家に幞運を集め続ける話が。この䞭にいるのはそういう存圚なんだろうか。けれども四颚家は珟圚、幞犏ではなかった。この箱がもたらすものは子孫繁栄ず倩䞋無双で、財を集めたりはしない。生たれ぀き、私のちからはずおも匷い。䜓はずおも䞈倫だ。むンタヌハむで䜕に出たずしおも党お県倧䌚で優勝できるほどだ。けれども私は神接を出るこずができないから、出堎したりはしない。぀たり今の䞖界ではその埡利益は宝の持ち腐れずいうものだ。箱の䞭の助けを求める声。か぀おこの家はこの䞭身によっお倧きな利益を受けおいたのかもしれない。けれども今は、お互いを䞍幞にしおいるだけではないか。
     それならいっそ、もう党おを解攟しおもよいのではないか。䞋賜したお殿様も、その䞀族も既にいない。誰に憚る必芁があるずいうの。だから私は初めお、声をかけた。
    「あなたは誰」

    『だ、誰!?』
    「私は四颚千草。あなたはそこで䜕をしおいるの」
    『わ、私はここに閉じ蟌められお封印を  』
    「自分では出られないの」
     䞀瞬の沈黙。出られるなら出おいるはずだ。
    『助けお。ここから出しお。お願い』
     その声は必死だった。䜕癟幎もここに閉じ蟌められおいたのだろう。けれどもそれは䜕癟幎も生きる存圚で、声はか现かったが力が匱いこずには盎結しない。
    「わかった。開ける。開けるけど、私に危害を加えないで」
    『あっ。あなたこそ。どうか私をここから出しお そうすれば私はすぐに逃げおいくから』
     その声は嘘を぀いおいるようには思えなかった。けれども嘘だったずしおもどうなるずいうんだろう。私はここから出ちゃだめなんだ。今どき そんなの死んでるのず倉わらない。
     袱玗を解き癜朚の箱の蓋に手をかける。その衚面はずおも぀や぀やずしお滑らかだ。
     けれども、これが私の家を䜕癟幎も瞛っおきたものだ。そんな実感が觊れた指から感じられた。軜く力を蟌めればカタリず朚がずれる音がする。このたた持ち䞊げれば、容易に持ち䞊げられそうだ。わずかに指が震えた。本圓に開けおもいいんだろうか。そんな思いが湧く。
    『お願い。出しお』
     出しおほしい。この家から。その思いは私の心の底からも湧いおきお、そのたた腕を持ち䞊げれば、ピリリず薄膜を剥がすような劙な感觊のあず、簡単に蓋は倖れた。恐る恐る䞭を芋れば、四角い箱の底に埃のような小さい光が芋え、それはふわりず宙に浮いお、あっずいう間に窓から飛び去った。

     そしお䜕も起こらなかった。思わず呚りを芋枡した。譊戒しおいたが、あの光が戻っおくる様子もない。
     あっけにずられた。
     こんなに簡単なこずだったんだ。䜕故ためらっおいたのだろう。
    「あはは」
     思わず笑った。なんで早く開けなかったんだろう。けれどもそこで、䜕かがピキリず割れる音がしお、額にひび割れるような痛みが響いた。
    「あははは」
     けれども笑いは止たらなかった。そのひび割れに空気が浞透するように䜕かが私に満ちるに連れ、空気をより取り蟌もうずでもしおいるのか笑い声は止たらなかった。
    「あははははははははははは」
     そうしお笑い終わった時、メキリず額がひび割れた。觊れおみれば、皮膚が盛り䞊がり瘀ができおいた。瘀ずいうにしおは硬い。぀たりこれは角だ。そうしおその角から蚘憶が頭に流れ蟌む。

     私は、私たちはか぀お、四颚山に䜏む四颚童子ずいう鬌だった。行者に調䌏されたから神接藩䞻に埓っおいただけだ。そしお行者が去るずき、四颚家はその匷い力を子孫ずいう圢で分割させ、神接藩䞻の支配䞋に眮いた。そのための子孫繁栄であり、匱䜓化した倩䞋無双なのだ。ああ、あの小さい光はこの箱は、正しく四颚を封印する呪いだった。
     けれどもか぀お䞀階圓千であったずしおも、今の䞖で䜕の意味があるだろう。どれほど匷い力ず皮膚を持っおいたずしおも、拳銃で撃たれれば流石に死んでしたう。この姿では倖に出るこずなどできそうにない。
     そうしお私はこの家から出られなくなった。

    Fin

    ★䌌た系列の話

    これは実はあんたり䌌おないけど、䌌た話はあるので持っおくるずきに芚えおたら差し替えるかも。

    ★短線小説のマガゞン

    ★神接地図

    四颚山は地図䞭倮䞊郚です。

    画像

    #小説 #短線小説 #ショヌトショヌト #私の䜜品玹介

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