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本雑綱目 40 楠見千鶴子 ギリシアの古代オリンピック

    これは乱数メーカーを用いて手元にある約5000冊の本から1冊を選んで読んでみる、ついでに小説に使えるかとか考えてみようという雑な企画です。

    今回は楠見千鶴子著『ギリシアの古代オリンピック』です。
    講談社でISBN-13は978-4062116664。
    NDC分類では芸術,美術>スポーツ. 体育。
    2004年発刊なのでちょうどアテネオリンピックの年ですね。昔タイムリー。

    1.読前印象
     オリンピックと言うとざっとした知識しか持っていない。神に奉納するもので不正をしないことを表すために全裸で行い、全裸でパンクラチオンしたり全裸で槍を投げたりする裸祭りというと語弊があるけど、そもそも古代ギリシャでは競技はだいたい全裸で行われていた。この間読んだ本にも書いてあったけれど、ギリシャの神は完全性、つまり理知的な美しさの粋を極めた人の姿をとっていたので、純粋な神事としての正装が裸体なのだと思う。なお尾籠な話だが、むけているのは野蛮なのでむけている人は正式な全裸では先端を紐かなんかで結んで隠すと聞いた。まあそんなことはどうだっていいんだけど。

    2.目次と前書きチェック
     前書きを見れば、古代(再興)オリンピックは1100年以上も続いた祭典だそうだ。この本はギリシアで再びオリンピックが行われることを契機に様々な観点で古代オリンピックを振り返る本のもよう。
     目次は『はるかなるオリンピックの源流』、『オリンピック競技祭の実際』、『イトミア競技祭 戦乱のコリントスと援助に長けるシュキオン』、『ネメア競技祭 アルゴスの専横』、『オリュンピア競技祭 ピサとエリスの覇権争い』、『デルフォイ競技祭 音楽の神アポロンに捧げた歌と詩』、『競技祭の盛衰と時代背景』及びそれぞれのコラムに分かれる。オリンピックというとアテナイのイメージだったけれど、長い時代の中で様々な思惑で様々な都市で行われていたんだね。
     どちらかというとよく描かれる神話や英雄的な切り口ではなく、運営的観点が気になる。オリンピック競技祭の実際の中から『競技種目』とコラム『技と美』、ネメア競技祭 アルゴスの専横から『アルゴスの大国意義』、『競技祭の盛衰と時代背景』全体を読んでみよう。ちょっと多いけど気になるんだもん。

    3.中身
    『競技種目』について。
     種目は現代と同じでも、走り幅跳びは重りをもってリズムに乗って行うことや、レスリングは立ったまま戦うスタイルと泥田で行うスタイルがあったり、戦車競技は資金がかかるため政治的な意味合いが含まれることも多かったと各競技についての説明が記載されている。使われる盾の材質の変遷や練習風景なども含めて様々な記載があって結構面白い。

    『技と美』について。
     競技の成績がよくても美しくなければ優勝はできなかったというコラム。ギリシアにおける神へと通じる美の概念っていうのは特殊だなと感じてはいたけれど、今この時代に存在する『美』とは違う概念なんじゃないかと思う。

    『アルゴスの大国意義』について。
     オリンピックの開催地を巡る争奪戦について。当時のアルゴスは何度開催地を奪われてもそれを自都市に引き戻した。それをアルゴスに伝わる神話とアルゴスに残るヘラを初めとした神殿や遺跡の解説とともに記載されている。これ、僕の歴史の知識が足りなさ過ぎる。前提とされている必要最低限の知識がないからうまく頭の中で繋がらないや。ギリシャあたりはあんまり詳しくないんだよな。

    『競技祭の盛衰と時代背景』について。
     儚い死すべき人間の誇りがもたらす栄光こそが人間の価値である、という精神が初期から現在のオリンピックまで連綿とつながっている話。そしてたくさんの戦争の間も時には休戦の道具として用いられたオリンピックは、当初理念に従い草かんむりしか手にしない清貧なものだったのが次第に財と不正と政治的思惑に絡め取られるようになり(まあ近代も同じだろう)、最終的にトドメを指したのはミラノ勅令による奉納すべき神々の異端化であるというのはなかなか興味深い歴史だ。
     美しさを求めた精神は、その美しさという価値を奪われたときに終焉したと考えれば、それは一つの文化が死んだということなんだろうなぁとなんとなく感傷的になる。とはいえ、自分はこの本に必要とされている基礎知識を欠いているのでだいぶんもったいない気分。

     小説に使えるかというと、この本はオリンピックを中心に描かれているけれど、ギリシアの各都市国家の性質についても(時期は限定されているかもしれないが)詳細に記載されている用に思われるので、そのあたりの歴史なんかを書くにはよいと思う。予想外に細かい記載がされていた。

    4.結び
     ちょっとこれは……平易な言葉で書いてある専門書の類だ。素人は惑わされてはならん。ある程度の古代ギリシャの歴史を知らないと、今なんの話なのかわからなくなる。でも異文化って面白いからこれはこれでよし。
     次回は平野邦雄著『和気清麻呂』です。
     ではまた明日! 多分!

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