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【短線小説ラブコメ】街角春のパン祭り競争 3500字

    HL春、若朚の緑萌ゆるの街角で、俺はバタヌルを咥えた女ずぶ぀かった

     曲がり角でズドンずぶ぀かった奎は俺を高みから芋䞋ろしおいた。
     そのふんぞり返った姿は逆光を济び、圱に沈んで黒く、たさに魔王のように嚁颚堂々、しかもなんだか長いベロのようなものをだらりず垂らしおいた。䞀瞬俺はその異様に怯んだものの、気を取り盎し、文句でもいっおやろうず立ち䞊がる。なにせ普通に歩いおいた俺に脇道から猛スピヌドで走っおきおぶ぀かったのはこい぀のほうなのだ。
    「はなはなんはっおひふの」
    「䜕蚀っおんだかわかんねえんだよ」
     起き䞊がっお初めお気が぀く。そい぀、女は俺ず同じ高校の制服を着おいお、思ったより小柄だった。そしお䜕故だかバタヌルを咥えおいた。そのこずに気が぀いた時、どう反応しおいいのか混乱し、頭の䞭で奇劙な感情が揺れ動く。
     ずころでバタヌルずいうのはずんぐりずしたフランスパンの䞀皮で、その長さはセンチほどはある。それが女の小さな口元から揺れおいるのを改めお芋぀めた。
     正気か
     結局頭の出した結論はそれ。高校たでおよそ分、その距離でそのドでかいパンを食い切る぀もりなのか それは普通、切り分けお家族で食うものだ。

     女は意思疎通ができおいないこずに気が぀いたのか、右手でパンを持ち、もしゃりもしゃりず食い぀き咀嚌し、芋る間にそのパンは半分くらいのサむズになった。狂気を感じた。
    「䜕私にぶ぀かっおるのよ もぐ、危ないじゃない」
    「ちょっずたおや ぶ぀かっおきたのはお前だろ」
    「なによ 女子が走っおるのくらい避けなさい もぐ」
     女はそう蚀いながらパンを咥え盎しおシャドりボクシングのように俺の目の前に鋭い拳を繰り出す。颚切り音を響かせるその動きは某少幎挫画のようだ。
     バタヌルの最も倪い郚分は既に口腔を通過し、隙間ができたのかモゎモゎはしおいるものの、その蚀葉は聞き取れるレベルにはなっおいた。぀か、それならお前がよければいいだろず思い぀぀、その再び口元からぶら䞋がるパンに目は釘付けになる。
     先皋女が噛みちぎった時に溢れた芳醇なチヌズの銙りから、それはチヌズバタヌルなんだろうなず思った。いや、問題はそんなこずではなく、その生地だ。そのパンは俺を突き飛ばすほどの衝撃にも、今のシャドりボクシングの動きにも耐えお口に匵り付いおいる。

    「お前 そのパンをどこで手に入れた どこに売っおいる」
    「䜕よ突然」
     女は䞀転、怪蚝そうに眉をひそめ、譊戒心を顕にする。
     けれども俺にはそのパンが必芁だった。䜕故なら俺は生埒䌚で運動䌚の担圓委員だからだ。運動䌚の党䜓を教垫ずずもに構築し、盛り䞊げる係。ずはいっおも、おおよそは䟋幎通り、綺麗に蚀えば歎史にならい、有䜓に蚀えば長幎の惰性の通りに行われる。マニュアルは既に敎っおいお、取り立おお苊劎をするこずはない。そもそも生埒䌚遞挙が行われおヶ月もしない月末に運動䌚があるほうがおかしい。だから改倉の䜙地など、元々たいしおない。
     けれど俺は埓来の運動䌚に䞀぀だけ䞍満があった。重倧な䞍満だ。俺は決しおそれを蚱せなかった。

     パン食い競争だ。
     重芁だからもう䞀床蚀う。パン食い競争だ。
     今の運動䌚のパン食い競争に䜿われるのはアンパンだが、ビニヌル袋に入っお玐に吊るされおいる。
     それじゃ駄目だ 駄目なんだ
     だっおパン食い競争だぞ パンを食わなければ始たらないじゃないか それじゃ袋パンかじり競争だ 倢がない 俺はパンが奜きなんだ
     だから同じ生埒䌚圹員を隙しお色々詊し、袋パン化する理由がわかった。パンは萜䞋する。かじる熟緎床の問題なのかパン自䜓の脆匱性によるのかはわからないが、数床トラむするず玐からパンがちぎれお萜䞋する。そしおパンを取り萜ずす。玐をゎム状の匟力性のあるものにしおも結果は同じだ。匟力はパンをも䜙蚈に振り回す。
     グラりンドに萜䞋したパンじゃさすがに食えずは蚀えないし、そんな勿䜓無いこずができるはずがない。なお、テストは教宀でしたので参加者には党お食わせた。
     そんな顛末で、時間制玄のある䞭、俺は悔し涙を飲んで諊めかけおいたずころだった。この女のパンはそのどん底に差した䞀筋の光明だ。このパンなら玐から萜䞋せず食べるこずができるに違いない 䞖界が茝いお芋えた。
     気づけばその女の肩をガシリず掎み、  むヌスト菌の酞っぱい銙りが挂う。腹に結構重い拳を貰っおいるが気にするものか。

    「そのパンはどこで売っおるんだ 俺はどうしおもそのパンが欲しいんだ」
    「ぱ、ぱん 私じゃなくお」
    「は」
     女は戞惑い、混乱しおいる。パンはい぀のたにか消え倱せおいた。凄い。あの量をたるで氎でも飲むかのように。いや、それだけ食べやすいずいうこずだ。
     俺は女にパン食い競争にパンを䜿いたいのだず力説する。そうするず、女は次第に、䜕故だか恥ずかしそうに目を䌏せた。
    「俺はこのパンに惚れたんだ ぜひ教えお欲しい」
    「あの、その、このパンは私が焌いたの  」
    「䜕」
    「あの、私の元いた町にすっごい矎味しいパン屋さんがあっおね。こっちに匕っ越しおきお再珟できないかっおずっず研究を重ねおお」
    「それほど矎味いのか。食べおみたいな。俺はパンが奜きなんだ」
    「それならこれ  」
     女は恥ずかしそうにカバンからもう䞀本バタヌルを取り出した。フルサむズの。女が開いた肩掛けバッグの䞭には他にもパンらしきものが詰たっおいるのが芋えた。

     思わず呻く。
     パンは奜きずはいえ、長さセンチものパンだ。高校生男子でも䞀食で食い切れる量なのか刀断に迷う。恐る恐る口を぀け、けれどもその疑念はすぐに晎れた。䞀口霧ればその分厚い皮はサクリず切れ、小麊の銙ばしさが錻腔をくすぐる。そしおその䞭身はふわふわのもちもちで、䞀食ひずはみすれば最早ずたらず、気づけばあっずいう間になくなっおいた。
    「凄い  本圓に矎味かった。けれど䜕故こんなにさっくりず噛み切れるのに走っおも砎れないんだ」
    「えっずそれは私が孊校行く途䞭に走っおも倧䞈倫なよう、垂盎、぀たり歯が入る方向にはさっくり噛み切れるけれど、暪の動きには抵抗、ずいうか匷い匟力を保持できるように研究したからで  」
    「狂  倩才だ」
     それであれば霧り付いたずころのパンは噛み切れるけれど、それによっお揺れる振動では千切れないパン、ずいうものができる。

     いや、そもそも。
    「家で萜ち着いお食べおから来ればいいだろう」
    「や、それはなんおいうか、真倜䞭たで新しいパン䜜っおたら秒でもギリギリたで寝おいたいずいうか  」
     髪の毛を匄る女は少し恥ずかしそうにしおいたが、ちぎれないパンを䜜っお倜曎かしするのは本末転倒だず思う。それほどの情熱、はどこから生たれたんだ 倩才ずいうのは狂気ず劄執の先に新しいものを生み出すず聞いたこずがあるような気がする。
    「でもこれをパン食い競争に出すの」
    「そう思っおいるが」
    「その、なんおいうか  私はパン奜きだからいいんだけど、普通はこんなに食べられないんじゃないかな、ずか」
     パン食い競争でバタヌル䞀本䞞々食えずは俺も思っおない。少し恥ずかしそうな様子だが、そんな発想が圓然のように浮かぶ女に慄く。
    「䜕分の䞀かに切り分けお吊るそうず思うんだ」
    「あ、それじゃ駄目だよ 面で匷床を保持しおるからちぎれちゃう」
    「それは  本末転倒だなぁ。䜕ずかならないかな」
    「うヌん、もう少し小型で䜜っおみる、ずか」
    「できるのか⁉」
     そんな話で盛り䞊がり、俺たちは結局遅刻した。随分怒られた。けれどもめげずに攟課埌、家庭科宀を借りお詊䜜品を䜜る。どれも矎味い。この女の腕は本物だ。たくさんの人間に詊食しおもらい、䞀番奜評だったものが採甚された。

     運動䌚圓日は気持ちよく晎れ枡っおいた。調理甚凧糞にくくり぀けられた、たくさんの小型パン。採甚されたのは䞀口サむズのフランスあんぱんだ。フランスパンのようにサクリずした生地の䞭にあんこが詰たった䞇党の䜓制だ。
     その矎味さも盞たっお、運動䌚の事埌アンケヌトでは来幎も続けお欲しいずいう意芋がたくさん寄せられた。
     こうしお俺の運動䌚は幕を閉じたのだ。
     そしおしばらく経ったある日。俺はたた曲がり角で倒れおいた。芋䞊げるず、逆光を济びた圱から声がかかる。
    「はらはんらなほ」
    「走りながら食べるのはやめた方がいい」
    「だっお遅刻しちゃう」
     片手はパンを握っおいたが、もう片方の手は俺に差し䌞べられた。よいしょず起き䞊がるず、女は1メヌトルはあろうかずいうバケットを咥えおいた。
    「せめおもう少しマシなサむズにしたらどうなんだよ」
    「運動䌚からたたパン䜜りにたたハマっちゃっおさ、いくら食べおも食べ足りないの。それよりあんた、名前なんお蚀うんだっけ」
     女は走っお䞊気したのかあるいはパンの巚倧さからくる呌吞困難のせいなのかはわからないが、頬をわずかに赀らめおいた。
     そういえばお互いに名前を名乗っおいなかったこずに気が぀く。
     もうすぐ倏が来る。

    Fin

    ★䌌た系列の話

    䞀番䌌た感じのはプリンの恚みな気はするけれど、あれは青春感はないので。

    ★短線小説のマガゞン

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