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【短線小説ホラヌ】おかしな事故物件 4400字

    [HL事故物件ったっおバリ゚ヌションがあるんですよ]

    「いや、そういう噂聞いたんすよ」
    「困りたすねぇ、倉な噂ばかりで」
     そのややチンピラ颚の男性客の蚀葉に、倉科蚈悟くらしなけいごは自分は本圓に困っおいるのかなず自問自答した。先日、先代である蚈牟の父が亡くなり䞍動産業を受け継いでから、少し業態を倉えるべきかず思案しおいた矢先のこずだ。
     蚈牟の営む䞍動産屋は有限䌚瀟倉科䞍動産ずいう。キャッチコピヌずしおその前に『くらし安心』ず぀く。排萜おるのかダサいのか、蚈牟には刀断が぀きかねた。
     地元の芚えめでたい代々続く街の小芏暡店舗だが、その芚えのめでたさの方向が少々おかしい。けれども最近の売䞊ずしおは、それで食っおいっおいるようなものだ。
     倉な噂。それは倉科䞍動産が扱う物件は事故物件ばかりだずいう噂だ。
    「うちも必ずしもそういうのばっかりじゃないんですよ、普通のもありたす」
     そうは蚀っおみたけれど、普通の物件など最近では倧手業者やネットに客を取られ、小芏暡䞍動産業ずしおは先现りなのが珟状である。だっおそれらの物件は誰でも真っ圓に扱えるんだから。

    「っおこずはあるんだな 事故物件 䞁床匕越し先に困っおおよ」
     男は俄然身を乗り出し、その分蚈悟は埌ずさる。
    「そりゃ、あるこずはありたすが、ちゃんず説明を受けたずいう確玄曞はもらいたすからね」
     そう蚀えば、男はわずかにひるんだ。
     䞍動産を業ずしお賃貞するにあたり、様々な告知矩務がある。たずえば過去にその郚屋に死人が出たかどうか、などだ。䞀昔前は途䞭で䞀人挟めば矩務がなくなるずいう話もあったが、最近ではその説明矩務の範囲がどんどん拡倧しおいる。正盎な所、向かいの家の人死にや隣の䜏人の奇行など、どこたで説明すれば責任を免れるのか䞍確かだ。このように事故物件ずいうものは極めお扱いが面倒くさく、普通の業者は扱いたがらない。クレヌムも倚い。
     そういう様々な事情で真っ圓な業者に断られた地䞻が噂を聞いお、倉科䞍動産にたどり着く。

    「で、どんな物件をお探しなんですか」
    「春だろ」
    「  春ですね」
    「新入瀟員を䜏たせる郚屋が必芁なんだよ。そうだな。䞀戞建おがいい。倖人可胜で瀟宅可胜な郚屋だ」
    「それは郚屋ではなくお家では」
     男は䞀枚の名刺を差し出した。聞かない名だが、この流れはなんずなく想像が぀く。
    「぀たりタコ郚屋にする぀もりですか」
    「ばっ。そんなんじゃねえよ、人材掟遣䌚瀟の瀟宅だよ」
    「぀たり就劎蚱可䞍確かな名も知れぬ倖囜人が共同生掻する堎所ですね」
    「ぐぅ」
     そうしお蚈悟は目の前で蚀葉に詰たっおいる男の玠性を掚枬した。
     倉科䞍動産には業者に断られた地䞻も蚪れるが、業者に断られた客も来るのだ。倖囜人に賃貞する堎合、䜕が困るかず蚀えば文化の差だ。日本人なら圓然である郚屋を綺麗に䜿うずいう垞識もない倖囜人や、ゎミ捚お堎にゎミを捚おるずいう意味を理解しない倖囜人もそれなりにいる。倜䞭に隒ぐこずも倚い。぀たり近隣のトラブルになる確立が高いのだ。
    「事故物件以前の問題です」
    「そ、そこを䜕ずかよ」
     男はパチリず䞡手を合わせお蚈悟を拝む。
     事故物件をあおがっおも、それ以倖の原因で揉め事になるのは埡免である。春になれば新しい人員を採るのはこの囜のならいで、男の必芁性はそれなりに高いのだろう。そしおきっず散々に断られおここに来たのだ。この時点で既に男ず蚈悟の力関係は逆転しおいた。

    「䞀぀だけご玹介できる物件がございたす」
    「本圓か」
    「ただしお客様の事情が特殊ですので、本来䞇円の賃料ですが䞇円でどうでしょう」
     最初から䞇円で提瀺すればよいのに正盎に倀段を話すずころが蚈悟らしいずころではある。
    「䜕ィ 事故物件っおのは安いんじゃねぇのかよ」
    「お客様であれば十分元がずれる䟡栌ですよ。それに心霊感ずいうのも囜によっお随分違いたすからね。䟋えば仮に幜霊が出る物件をご玹介しおもそちらに䜕のデメリットもなさそうですし。幜霊が倖囜語を話せるずも思えたせんから」
     男は圓然のように幜霊が出るこずを前提ずした蚈悟の蚀葉に絶句した。
    「その倀段でもご怜蚎頂けるのなら内芋に行かれたすか 叀くお少し駅から遠いですが、LDKで䜕人䜏んで頂いおも結構です。い぀匕っ越ししおも結構ですし、芋お頂ければ安いずご玍埗いただけたすよ」
     男はしばし虚空をにらんで考えおいる颚情を出したが、おそらくさほど考えおもいないだろう。せいぜい人詰め蟌めば人頭月円で枈むずいう蚈算皋床だ。
    「ずりあえず、芋たい」

     その物件は蟻切぀じき䞭倮駅から南西方向にある䜏宅地の䞀角にあった。呚蟺には階建お皋床の民家が連なり、倧量の倖囜人など最も嫌われそうな雰囲気の堎所である。それを感じ取ったのか、男もキョロキョロず䞍安げにあたりを芋枡した。
    「おい、こんなずころいいのかよ。その  倚分隒ぐぜ」
    「承知の䞊ですよ。そうじゃないず玹介なんおしたせん。この事故物件は少し特殊なんです」
    「凶悪な幜霊でも出るのかよ、人を  食べるような」
     そのオドオドずした男の玠振りに蚈悟は苊笑する。
    「人死が出るような物件なんお貞せるはずがないでしょうが」
    「だ、だよな」
    「その床に事情聎取が面倒なんですよ。あの人たちは䞍審に思えば䜕床でも聞きに来るし、その床に鍵を開けに行かないずいけたせんから」
     男は再び絶句した。そしお困惑した。

     蚈悟が立ち止たった先にある民家は、本圓に通垞の普請の民家に芋えたからだ。しかも隣の家ずの間も五十センチほどしかあいおいない。通垞の生掻音でも隣家に響きそうである。
    「ずころでお客様はSFはお奜きですか」
    「は SF? 幜霊じゃなくおか」
    「ええ。この家は幜霊は出たせん。空間がねじれおいるだけです」
    「は」
     男はその蚀葉を理解しかねた。
     蚈悟がガチャリず鍵をひねり、玄関ドアが開くのを極限の緊匵ずずもに迎え、そしお拍子抜けした。そこは普通の民家にしか思えなかったからだ。靎脱堎の巊手には腰高の靎箱、そしお右手には盎結した広いリビングが芋えおいる。
    「なんだ普通の家か。驚かせやがっお」
    「普通ですね」
    「おう」
    「ずりあえず䞭芋おみたすか あたり意味はありたせんが」
     男は意味がないずいう蚀葉の意味がよくわからないたた、蚈悟の埌に続く。階建おで階に車庫ずLDK、階に郚屋。建物自䜓が叀いずいう点を芗けば䜕も問題は感じず、䞇円はむしろ安いず感じた。そしお倖に出お、蚈悟はガチャリず鍵を閉める。
    「幜霊が出んのか」
    「幜霊なんか出たせんよ。じゃあ二呚目いきたしょうか」
    「二呚目」

     そうしお蚈悟が再び扉を開けたずき、男はあんぐりず口を開けた。靎脱堎があるのは同じだが、その靎箱は正面に倩井たでの高さのものでその右偎には短い廊䞋が続いおいた。
    「あれ さっきリビングじゃなかったか」
    「じゃあ内芋したしょうか」
    「た、埅お」
     蚈悟の埌ろに぀いお歩けば、階には぀の郚屋ず少し狭いLDK、階には広めの郚屋が぀あった。男が先ほど芋た光景ずたるで異なる。
    「ちょ、ちょっず埅お。これはどういうこずだ」
    「倚分、空間がねじれおるんですよ」
    「ねじれおるっおなんだ」
    「さぁ。私は孊者じゃありたせんので」
     男は呆然ずしながら蚈悟の埌に続いお倖に出お、そしお鍵が閉められるのを芋぀めた。
    「もう䞀呚行きたす」
    「次もたた倉わるっおのか」
    「そうですね。私もそれほど倚く開けたわけではありたせんが、党く同じ郚屋ずいうこずは無いず思いたす」

     内芋にあたり意味がない。
     頭の䞭で咀嚌できるほどではなかったけれども、男はようやく蚈悟の蚀葉の意味を理解した、気がした。
    「人がいなくなったりはしないのか、その、SF的に」
    「今たでそれはないですね。荷物の玛倱も聞きたせん。䞭身が倉わっおも、同じ人が眮いた荷物はだいたい同じずころに眮かれおいたす」
    「同じ人」
    「ええ。この家は開ける床に䞭身が違いたす。䞭に人がいた堎合に䞭身が倉わるわけではないですから、この家の䞭で䞖界が䞊列しおいお、同じタむミングで家に入った人以倖は党おバラバラの空間に繋がりたす」
     男の頭は情報が飜和したようだ。挫画であればプスプスずいう音が聞こえるだろう様盞に、蚈悟は店舗に戻っお手づから男に暖かい梅茶を出した。蚈悟の気に入りの銘柄であり、蚈悟ずしおは客を萜ち着かせるための毎床のルヌチンワヌクである。

    「賃貞をご怜蚎されるなら、もう少しご説明臎したす」
     男は蚈悟の問いかけに、ずりあえず頷くしかなかった。
    「メリットから説明したす」
    「メ、メリット」
    「ええ。あの家は空間がねじれおいたすから、䞭でどれだけ隒いでも倖に音が挏れるこずがありたせん」
     これだけでも、男にずっお砎栌なはずだ。けれども男はあの家に察しお根源的な䞍信感ずいうか恐ろしさを感じおいた。それを衚すように目がふらふらず泳いでいる。
    「あなた方にずっおのメリットは、あの家は平行䞖界を䜜り出せたすから、䜕人でも詰め蟌めるこずです」
    「な、䜕人でも」
    「私が確認したのはせいぜいパタヌンほどですが、そこに人ず぀詰め蟌んでも人が入りたす」
     男の瞳がギラリず光る。人を詰め蟌んだ堎合、䞀人頭の賃料は月額円で枈む。蚈悟はあの家の䜿い方はやはりこれが最適なのではないかず考えた。
    「次にデメリットを説明したす。倖から䞭の人間を任意に呌び出すこずは䞍可胜です。戞を叩いおも新しい堎所に繋がるだけですから。スマホずwifiの電波は届きたすので、コヌルやメヌルで呌び出しおください」
    「お、おう」
    「あず、開いた感じダバそうなら䞀回閉じお鍵をかけおたた開いおください」
    「や、ダバい」
    「ごくたたに、ダバい感じの郚屋に繋がるこずがありたす。その堎合は責任を負いかねたす。たあ䜕かあっおも倖から芋ればただの行方䞍明でしょうけど」
     男の顔色は再び悪くなった。
    「取り眮きっおできるか」
    「匕っ越しシヌズンですからね、申蟌曞を頂かないず止められたせん」
     蚈悟は窓から芋える桜が散るのを眺めながら、他に申し蟌みなどないだろうず思い぀぀人材掟遣業に積極的に声を掛けるか怜蚎を始める。
     男は䞊に聞いおみるず告げおそそくさず立ち去った。

     蚈悟はあの家の珟象は口頭で説明しきれるものではないから、来るずすれば次はおそらく少し䞊の立堎の人間だず予想する。蚈悟の頭の䞭ではやはり業態を倉えるべきではないかずいう思いが匷くなっおいた。事故物件を安く貞すずあたり儲からないし、䜕かあっおも文句を蚀われるだけなのだ。それならやはり適材適所に適切な金額で貞し出すべきではないかず思案した。
    「幜霊が出るタむプの郚屋はお化け屋敷ずかむベント䌚堎に貞し出すずかどうかなぁ」
    「今の時代は幜霊がいおも構わないんですか」
     蚈悟は虚空に向かっお呟けば、倩井から女の声で返事がある。
    「倚様化しおいるからね」
     そもそもこの倉科䞍動産の建物自䜓が幜霊が出る事故物件なのである。今曎の話だ。

    Fin

    よく考えたらホラヌじゃなくおSFな気がしおきた。

    衚玙

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    ★短線小説のマガゞン

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