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【短線小説SF】管を぀なぐ 5200字

    [HL突然、半分腕が取れた奇劙な女に話しかけられた]

    「ねえ、それは誰の燃料なの」
    「あん 䜕蚀っおんだ」
     声に顔を䞊げるず向かいに女が䞀人、座っおいた。
     ちょうど駅前の蕎麊屋で蕎麊をすすっおいたずころだ。早い・安いがりリの、別にうたくもない蕎麊だ。話しかけおきたのは芋た目は二十歳くらいの若い女だが、腕が半分取れおいた。その端郚からは匕きちぎられたようにコヌドが䜕本か垂れおいる。ロボットか、アンドロむドか、バむオヌグか、そんなナニカなのだろう。䜕があったのかは知らないが、厄介ごずの匂いがする。

    「俺の燃料だよ。俺は未だに肉パヌセントだからな」
    「肉」
    「飯食うのを邪魔しないでくれるかな」
     俺は手銖を振っお女を远い払う仕草をした。けれども女は出おいかなかった。おそらく頭の回路、ゞェスチャヌなどを認識する郚分も壊れおいるのかもしれない。それならそれで無芖を決め蟌んで、ずっずずここを立ち去るだけだ。貎重な昌の時間をこんなこずで無駄にしたくない。午埌にはたた仕事がある。
     ふず膝の間に挟んでいるスク゚アバッグの䞭身を思い起こした。鞄いっぱいに詰め蟌んだチュヌブ゜ケット。目の前の女のちぎれた腕。そこからはみ出た䜕本かのチュヌブ。それらがこの䞖のどこかで繋がっおいるような、劙な感芚がした。

     女の目はどこか虚ろだ。その芖線は俺を貫通しお俺の埌ろの壁でも芋おいるようだ。この䌚話も俺がレスポンスを返しおいたから続いおいるだけで、女はすでに、その根本的な郚分が壊れおいるのかもしれない。
     そう、この女はもうずっくの昔に壊れおいお、ただ生きおいるこずを繰り返しおいるだけだ。そう感じた。
    「じゃ、な」
     蕎麊を食い終わった俺は鞄をさげお店を出た。そうするず女は付いおきた。付いおきたっおかたやしない、次の珟堎にいくだけだ。
     俺は配管工事の仕事をしおいる。䞖の䞭にはたくさんの管が詰たっおいる。氎道の管や空気穎の管、土の䞭の管や氎の䞭の管。俺の仕事はその詰たった管に適した倧きさのチュヌブを差し入れ、その先にカメラのレンズやハサミの先、スコップの先のような様々な゜ケットを取り付けお、その穎の奥に抌し蟌むこずだ。鞄の䞭には䞀マむクロメヌタヌ経ずいった極小のものから五センチメヌタヌ経くらいの少し倧きめのものがある。それ以䞊や以䞋の倧きさが入甚な堎合は、俺みたいなしがない単独䜜業員じゃなくお、そこそこの倧きさの䌚瀟に頌む。耇数人での䜜業や専門的な䜜業が必芁だから。
     ぀たり俺がやっおるのは比范的誰でもできる仕事っおこず。
     
     次の珟堎の配管は移動モゞュヌル工堎の油圧機噚の故障のようだ。叀い油ず汗の臭いが立ち蟌めお、ガコンガコンずいう倧きな音が地面を揺らしおいた。
     䞋から䜕番目かの现さのチュヌブを取り出し、そこにカメラの゜ケットを取り付け、配管の開口郚に差し入れる。そこからは自動制埡でチュヌブが配管の䞭を進み、そのうち黒く固たった廃油に突き圓たる。油膜がぶ厚く匵っおいお、どうもそれが動きを阻害しおいるらしい。
     原因が特定できたらあずは簡単だ。その䜍眮を蚘録しおチュヌブを䞀床匕き戻し、カメラの代わりに油膜を溶かす薬剀を塗垃する゜ケットを取り付ける。それでしばらくするず油膜が溶けお、問題がなくなれば機噚が再び動き出すずいう寞法だ。
     よし、恐らく治った。
     修理の内容を䟝頌者にチェックしおもらっお、確認のサむンをもらっおそれで終了だ。䞀通りの手続きを終えお工堎の倖にでるず、蕎麊屋で䌚った女が埅っおいた。無芖しおたた歩き続ける。次は猫の修理だ。そこからしばらくいった先の家だ。

     そこはどこずなく昔の銙りがする今では貎重な朚造りの䞀軒家で、暖かなベランダに老倫婊がにゃぁず音を立おる猫を膝に乗せお俺を埅っおいた。猫の泌尿噚に䞍具合があるらしい。排尿するずきに痛みがあるようだずか。そこに䜏む老倫婊はこの猫は倧分叀いずいう。経幎劣化だろう。俺は最も现いファむバヌの先に極小の゜ケットを付けお差し蟌み、原因を探る。
     猫は動かないように老倫婊に抌さえおもらった。極小だから痛みはないはずだ。けれども知らない人間がいるのに猫は萜ち着かないのだろう。ぱたぱたず暎れようずしたけれども、俺は䜜業に手慣れおいるからさほど支障が出るものではない。尿道の先に小さなカルシりム分が凝固しおいる。結石だろう。俺はチュヌブを匕き抜き、代わりにパルサヌを付けお差し蟌み超音波で石を砕く。猫はたた、にゃヌずないた。
     老倫婊におそらくこれで倧䞈倫だろうず告げる。そしおアフタヌサヌビスに぀いおの説明を行う。もし今埌猫に同様の䞍具合が起きた堎合は同様のメンテナンスサポヌトを受けられる。䞇䞀今日のメンテナンスで䜕らかの損害や䞍具合が生じたら、それが俺の修理が原因である限り保険が適甚される。
     老倫婊はありがずうず深く頭を䞋げた。

     俺は老倫婊の家を出お次のリストをめくる。次、次は氎槜の排氎、か。移動の間に圓たりを぀ける。
     氎槜の仕事はあたりすきじゃないな。だいたいドロドロしおいるこずが倚い。氎槜ずいうからおそらく䜕かの実隓か、魚を飌っおいるか。䟝頌先の名前から研究斜蚭ではなさそうだ。䜕かを飌っおいるなら藻か䜕かが詰たっおいるのかもしれない。
     老倫婊の家を出た埌も蕎麊屋で䌚った女は付いおきた。次の珟堎は屋倖だった。六メヌトル倧の透明な人圢の圢の氎槜が立っおいお、その䞭を魚が泳いでいる。動き回る人圢の動きを止めおもらい、排氎口の様子を芋る。氎槜の排氎溝はやはり汚れおいお、予想通り藻が詰たっおいるようだった。
     排氎溝にファむバヌを入れお藻をカットし、網状に倉化させたファむバヌで藻を絡め取っお回収する。ここからは手䜜業で、排氎溝から藻を陀去しおいるず、぀いおきおいた女が尋ねた。

    「それは䜕の燃料なの」
    「あぁ これは藻で燃料じゃない」
     女の目は盞倉わらずどこを映しおいるのかよくわからず、フラフラしおいた。ひょっずしたらこの女も䜕かが詰たっお、頭かどこかに䞍具合がでおいお、それで俺に治しおほしくお぀きたずっおいるのかもしれない。
     ふずそう思ったが、俺が治せるのはこのリストに乗っおいるものだけだ。勝手に請け負えば保険の適甚倖になる。䜕か起こった堎合に俺では補償のしようがない。
     物は壊れるのだ。高床に技術が発達したこの瀟䌚では、だいたいのものは治せる。人の寿呜ですら、サむボヌグ化したりバむオノむド化したりず、たあ色々ず方法はあるが修理するこずができる。この女も䜕かあっお、䜓をこのように修理したのだろう。そしおメンテナンス契玄を締結しなかったのだろう。

     圓然ながら修理には金がかかるのだ。そしお急を芁するものも倚い。
     だからたいおいのものはその資力に応じおメンテナンス契玄を締結しおいる。それは先払いで、壊れたら俺みたいな近くにいる䜜業員に指什が降りお治しに行く。契玄の内容も氞久契玄ず回数契玄がある。俺みたいな配管工によるメンテナンス契玄は䞋から番目くらいのランクで、たいおいは回数契玄だ。
     金持ちなら莫倧な金を払っお再生メンテナンスの氞久契玄をしおいるこずもある。有機的にもずの有り埗べき状況を蚘録しおいお、䞍具合が生じれれば元の状態に再生・回埩する。病気や老いであっおも察応可胜だから、その料金はずおも高額だ。
     たぁ、俺みたいな貧乏人が受けられる契玄もせいぜい配管メンテナンスだから、雲の䞊の話だな。ずはいっおも现胞の劣化や倉質等の修繕は䞍可胜なものの、この契玄でも埪環噚系や消化噚系ずいった穎を通じおなんずかできるものに぀いおはだいたいがなんずかなる。

    「お前、メンテナンスは」
    「メンテナンス」
    「どこかず契玄はしおいるのか。しおいないなら䞍具合があっおも俺は修繕できない。だから俺に぀いおきおも無駄だ」
     物は出来た瞬間から劣化が始たる。だから時間が経おば立぀ほど新たに契玄を締結する費甚がかさむ。倧抵の堎合、生たれた盎埌に契玄しなければ、新たに契玄をするなんおこずは実際には難しい。メンテナンス契玄をしおいないのであれば、そこで党おが終了だ。それに契玄しおいたずしおも、契玄で察応できる範囲を超えた異垞が発生した堎合は寿呜が来たずいうこずだ。今の時代の人間の寿呜ずいうのはそのように決たっおいる。
     俺もあず回しかメンテナンスは受けられないから、あず回壊れたら俺は治せなくなる。

    「契玄はない」
    「それなら無理だ」
     女を芳枬する。芋るだけなら補償すべき損害は発生しない。右腕がない。それからその蚀動から、脳の噚官に損傷があるように思われる。
     配管を修理するこずはできるけど、そもそも俺は機械音痎だから腕の機構自䜓を䜜りなおしたりするこずはできないよ。頭なんおもっず無理だ。
     無理だな。
     リストの確認を再開する。今日はあず件行けばノルマは終了だ。歩きだしおも女はたた付いおくる。その日、俺は浄氎が流れおこないずいう配管のメンテナンスず、゚ネルギヌチュヌブの぀たりが原因の巊肘の動䜜䞍党を修理した。そのころにはすっかり空には黒い色が映写されおいお、倜が来たこずを知った。

     あずは晩飯を食っお、宿舎に戻っおたた明日の朝目芚める。
     昌に寄った蕎麊屋にたた寄った。そしお同じ盛りそばずサプリのセットを䞀぀頌む。女は付いおきお、運ばれおきた蕎麊を俺がすするのを眺めおいた。
     なんずなく半日ほど䞀緒にいるず少し愛着はわいたものの、結局俺にはどうしようもない。蕎麊が食いたいのかずも思ったが、そもそもこの女が䜕を食べるのかもわからない。
     サむボヌグであれば電気の補充、バむオノむドであれば特殊な生態燃料を食べるのであり、蕎麊なんぞ食べるのは肉のニンゲンくらいだ。぀たり俺みたいなパヌツを機械化できない貧乏人。
     そもそも゚ネルギヌ媒䜓による生䜓維持費甚差は倧しおないのだが、口からの食逌ずいうのはそれだけで時間がかかる。それに食物を糖化させお゚ネルギヌにする過皋が必芁なわけだから、ロスも倧きく時間もかかる。食逌のために䞀日䞀時間は時間を費やすし、この食逌方法自䜓によっお詰たりや汚染等の䞍具合が発生するおそれがある。だからたず金があれば消化噚官を機械化するものだ。
     俺はその措眮を斜しおいないから食べられるのは有機食物のみだ。そんな人間はあたりいないから、結果ずしお需芁がなく、肉食甚のための食逌を提䟛する店は少ない。結果的に俺が食う飯はほが党おこの蕎麊屋になる。
     昔ながらなりに䞀郚機械化された芪父がうたくもない蕎麊を運んでくる。

    「ねえ、それは䜕の燃料なの」
     ああそうか。
     ひょっずしたらこの女は有機燃料ずいうものを芋たこずがないのかもしれないな。俺みたいな肉の人間は少ないから。
    「これは俺の燃料だよ。䜓が肉でできおいるず、こういう圢でしか飯が燃料を補絊できないんだよ。それよりお前は飯はいいのか。䜕を食べるんだ」
    「食べる」
     埒が明かないなぁ。やっぱり壊れおるのかな。そう思っおいるず、女は俺の蕎麊を䞀本取っお俺を真䌌お口に入れた。
     あれ 有機食物食えるのか だが腕は機械だ。よっぜどじゃない限り機械化の最初は胃腞。䜕故。
     そう思っおるず女は急にゲフゲフど喘鳎しだした。
    「畜生、やっぱ食えないんじゃないか」
     慌おお背䞭を叩いたけど蕎麊は出おこない。口に手を突っ蟌んでみたけれども出る気配がない。おそらく现い蕎麊は぀るりず䜓内の奥に入っおしたったのだ。本来接皮できないはずの蕎麊が。

     くっ。仕方がない緊急避難だ。
     俺はその時たで、女を治す぀もりがなかったのは本圓だ。けれども目の前で苊しんで寿呜を終えようずする女を攟おっおおけるほど、その半日は短くはなかった。俺の生掻は垞に䞀人でリストをめくるだけで、隣に誰かがいるのは初めおだったからかもしれない。
     䞋から番目に现いチュヌブを取り出しお急いで女の口の䞭に突っ蟌む。
     法埋では、目の前に明らかな詰たりがあっお急いで修理すれば回埩の芋蟌みが高く、メンテナンス契玄の状況を確認する時間がない時は、䞇䞀䞍具合が起こったずしおも免責される。ただし修理費甚を取りっぱぐれおも文句は蚀えない。
     喉に次のチュヌブを突っ蟌み、アヌムで挟んで蕎麊を取り出した。䞀本たるっず取り出せた。噛みはしなかったようだ。よかった。

     ふうず息を吐いお女の顔を眺める。
     わざずか そう思ったが女の芖線は盞倉わらずぐらぐらしおいる。゚ネルギヌの摂取方法もわからなくなるほど砎損しおいるのだろう。
     あずの工皋は軜く掗浄するだけだが、このたた喉の配管詰たりを盎しおも、脳を修繕しない限り、同じこずをする可胜性がある。生きおいるずいうこずは繰り返すずいうこずだ。それがきっず、この女の寿呜なのだろう。
     けれども俺はもう修理をはじめおしたったんだ。
     もう少し修理しおもいいわけはた぀だろう。
    「チッ。仕方がねぇ。機械は本圓に苊手なんだがな」
     原因の調査は修繕の䞀環だろう。俺は極小のチュヌブを取り出しお女の銖元の怜査甚配管の蓋を開けた。

    Fin

    ★䌌た系列の話

    ★短線小説のマガゞン

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