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【短編小説(SF)】私を買う家 800字

    [HL:ほっこりディストピア(通常運転)]

     一枚の卵色がかった柔らかい紙には、ただここの場所だけが記載されていた。
     緑色の館。私はここに売られたんだ。ふぅ、と漏れた息で紙が揺れた。
     ぱらぱらと暖かい雨が降っている。持物はこのお仕着せの服と傘だけ。その透明な表面を雨がぽちょりと跳ねた。

     襟元を正す。気に入って貰えるだろうか。恐る恐るインターホンに指を伸ばすと、到達前にカタリと音がして、門柱から頭を出せば、手首が玄関を開けていた。
    「あの、お邪魔致します」
     器用に二本指で歩く右手首に導かれて長い廊下を歩く。滑らかな絨毯におっかなびっくり、高級そうな調度や壁掛け絵画に目移りしながら応接室にたどり着く。今までいた所と随分違うけど、上品そうな場所。
     中心に座る相手は優しげに微笑み、手首はその手元に戻ってくっついた。 

    「やぁ、あなたが新しい方ですね」
    「はい、あの、宜しくお願いいたします」
    「真面目そうな方で安心しました。私もここは長くてね。とても気に入っていましたから」
    「私もです。素敵なお屋敷です」
    「ありがとうございます」
     ニコリとした微笑みとともに着席を促される。うまくやっていけるかな。
    「マニュアルはこちらです。ここは多くの機械が生きていますからさほど難しくはありません。毎日いくつか命令して頂くだけです」
    「安心しました。なんとかなりそうです」
    「よかった。私はあなたに決めました」
    「えっもうですか? 試用されないのですか」

     普通は私が適切な働きをするどうか試用期間を置くものだ。
    「履歴書は拝読しております」
     握手を交わしコードを交換する。
     これで私は3年の間、この家に買われた。目の前の人はゆっくり立ち上がる。
    「それではお暇いたします」
    「もう出られるのですか?」
    「すぐにでも。私の新しい買主の下に参ります。宜しくお願いいたしますね」
    「ごきげんよう」
     私たちはオートマタ。既に滅びた人という種族に作られ、人の作った家に買われて世界を巡る。

    了

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    たまたまログインしたら今日が締め切りだったので! ←通常運転。
    お邪魔します~。

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