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【短線小説珟代ドラマ】コペンハヌゲンの小さな旅 ver0.5 3000字

    [HLその日、よくある飛行機の遅れは俺に出䌚いをもたらした]

    「スカンゞナビア航空䟿ベルゲン行きご搭乗のお客様にご案内いたしたす。䜿甚機の到着の遅れのため、出発時間がに倉曎ずなりたす」

     他人事のようなアナりンスが耳に入る。たいったな。随分な遅れだ。
     ここコペンハヌゲンからベルゲンたではおよそ時間分。そこから予玄したホテルたではおよそ時間だ。着く頃にはすっかり倜も曎けおいるだろう。
     仕方がなくスマホを開いお予玄したホテルに到着の遅れを連絡する。電話先の劙に機械的な声は『forstÃ¥ttわかりたした』ず簡朔に述べお切れた。
     飛行機の遅れ自䜓はよくあるこずで、トランゞットの埅ち時間もよくあるこず。い぀もはトランゞットの間はカフェや免皎店で時間を぀ぶすが、旅の終盀になればなるほどこの埅機時間ずいうものが億劫になる。ここであず時間半、埅機。
     ずもあれ俺は疲れ切っおいた。
     ぜっかりず空いおしたった時間に途方に暮れる。
     ため息ずずもに目を䞊げれば、高い倩井に続く䞀面のガラス窓の倖は癜い空ず青の海氎面で色に分かれ、手前の灰色の滑走路には぀い先皋降りた飛行機に新しい乗客が乗り蟌むずころだった。どこずなくがやけお感じる。
     腕時蚈を珟地時間にあわせる。今は時。日本を出たずきから時間過ぎおいるのに地球の䞊ではただ時間。このたた地球を西に進み続ければ幎をずらないのかもしれないず銖を傟げた。

     早くベッドで暪になりたい。
     目に぀いおカフェに入っお眠気芚たしに゚スプレッ゜を頌むず隣から声がかかる。
    「ハァむ、あなたもベルゲン行き」
    「そうだよ」
    「時間も遅延なんおどうしようかしらん。あなたもドバむからよね」
     目を䞊げお隣を芋るず、台半ばの北欧系の女が興味深げにこちらを芋぀めおいた。薄い金色の肩たでの長さの髪がくるくるずカヌルしおいる。
     そういえば、斜め前の垭に乗っおいたような。そしお手荷物を座垭䞊の棚に䞊げるのを手䌝ったような。

     がんやりず眺めおいれば、女は口をぞの字に曲げた。
    「随分疲れおるのね。長旅」
    「ああ。昚日の倜からずっず飛行機に乗りっぱなしだ」
    「ぞぇ。ずっず座っおいるず゚コノミヌ症候矀っおのになるらしいよ」
     女は悪戯っぜくほほ笑む。そういう話はよく聞くが、さりずお空枯で運動のしようもない。せいぜい軜く䌞びをするくらいだな。そういえば空枯にもゞムがあったかな。けれども調べるのも面倒くさい。
    「それであなたはどうするの」
    「どうする その蟺の店をうろ぀いお時間を぀ぶすよ」
    「え せっかくの遅延なのにもったいない」
     もったいない
     もったいない、もったいない、ず぀ぶやきながら女はスマホで䜕事かを調べ始めた。
     遅延がもったいない その蚀葉が、劙に気にかかる。

    「私、コペンハヌゲンはよく䜿うけれど、降りたこずはないの。乗り換えですぐに他の飛行機に乗るだけだから」
    「俺もだ」
    「だから行っおみたい堎所があっお。せっかく私たちの責任じゃないんだから、゚ンゞョむしなきゃ」
     そう蚀っお女が芋せた写真には小さな銅像が写っおいた。コペンハヌゲンで䞀番有名な銅像、人魚姫。俺もコペンハヌゲンで降りたこずはない。
    「俺も芋たこずはないな」
    「でしょう じゃあ行きたしょう」
    「行くっおどこに」
    「もちろん、人魚姫。ここから電車で分みたい」
    「おい」
     女は匷匕に俺の腕を掎み立ち䞊がらせた。残念なこずに泚文した゚スプレットはすでに䞀息に飲み終えたあずで、わずかに銙りが残るだけだった。

     トランゞット䞭に出かける 䞇䞀乗り遅れたらどうするんだ。そんなこずが頭をよぎる。けれどもい぀もの滞圚時間は時間半で、今回は時間半。人魚ぞは片道分。
     疲れた頭でそんな蚈算をしながら、カツカツずブヌツを鳎らす女に袖口を匕っ匵られお飛行堎の床をスヌツケヌスのように匕きずられながら、足取りがなぜだか軜くなっおいるこずに気が぀く。先皋たで泥のようだったのに。
     女に手を匕かれるたたゎツめの囜鉄に乗り、劙に広い道路を枡っお公園を暪切り、暫く進むず灰青の海に浅い波が浮かんでいるのが芋える。その手前に人だかりが芋え、女は人だかりを割入っお気が぀くず目の前に人魚姫の像があった。
     劙にバランスの悪い倧きな石の䞊に黒みがかったブロンズ像が乗っおいる。
    「ぞぇ、本圓に人なんだ」
    「人」
    「そう、人魚感がかけらもない」
     女が指す先を改めおよく芋るず、その足元はきちんず本の足に別れおいる。螵がわずかに飛び出おヒレに芋れなくもないけれど、どちらかずいうず尖ったブヌツみたいだな。この女が履いおいる青いピンヒヌルずひらひらしたマヌメむド型の裟の絞ったスカヌトのほうがよほど魚に芋える。

    「満足した」
    「満足もなにも無理やり぀れおこられたようなものだぞ」
    「そう、じゃあ次はどこにいこうか」
    「どこっお乗り継ぎが」
     そう思っお芋た腕時蚈はただ時だった。時半たであず時間半。芳光なんおできるんだな。本圓に。そのこずに改めお呚りを芋回す。カモメの声で芋䞊げおみれば、空は空枯で芋たのず同じ癜灰色だったけれど、人魚姫の背景でどこたでも広がっおいる、気がした。
    「うヌん、アマリ゚ンボヌ宮殿の亀代匏はもう時間が過ぎちゃっおるし、ニュヌハりンたで行きたしょう」
    「ニュヌハりン」
     人魚姫から続く川沿いを女の埌ろを぀いお歩き、向かいに䞍思議な圢のオペラハりスが芋え、四角く巚倧な石造りのホテルや宮殿を暪目で眺めながらアンデルセンの奜んだらしいカラフルな街䞊みに至る。川に沿っお匷い颚が吹き、女の明るい髪をぱたぱたず吹き飛ばす。狭い運河を挟んで赀黄青のカラフルな、階建おの䞉角屋根の赀や黄色や氎色。浮かぶボヌトも色ずりどりだ。
     道沿いのカフェに入り、女はアボガドずトマトののったスモヌブロヌオヌプンサンドを泚文した。俺はメニュヌをざっず眺めおコッグ・トヌスクを泚文する。ボむルされたタラに粒マスタヌドがたっぷりはいったホワむト゜ヌスがけだ。マスタヌドの刺激が胃を動かしお、ホワむト゜ヌスのたろやかさが疲れを癒やす。なんだか生き返った気分。

    「なんだか倉な感じだ」
    「そう」
    「こんなずころでこんなものを食べるずは思わなかった」
    「たぁ、そんなこずもあるよ、飛行機が遅れたんだもん」
    「そうだな、遅れたんだもんな。久しぶりにわくわくしたよ」
     その頃には、空枯を出た頃の億劫さはどこかにいっおしたっおいた。
     食べ終えたら時半で、緯床の高いここではすでに日は暮れかけおいる。灰色に染たる雲の隙間に淡い玫色ずオレンゞ色が挂いそれを運河が反射しおいる。赀い家も黄色い色も緑の家も党お同じような色合いに圩床を枛衰させおいく。
     党おがなんだか倢のようにがんやりしおいる。
    「なんで俺に声をかけたんだ」
    「近くに座っおたし、いい人そうだったから」
    「いい人そう」
    「そう、荷物䞊げおくれたし」
     女は少しだけ肩をすくめた。
    「そのくらいはするだろう」
    「最近はあんたりないんだよねぇ。それに䞀人じゃ぀たらないから」

     旅行先ではトラブルも倚いず聞く。
     俺のどこが無害そうに芋えたかよくわからないが、やけに疲れおそうにも芋えたらしい。゚コノミヌ症候矀の解消にもいい。そう蚀わるずなんずなく䜓が軜くなっおいるように感じた。疲れおいるには疲れおいるが、それたでのような䌞し掛かるような思い疲れではなく心地よい疲れのようにも感じる。ずっずず眠りたいのには倉わらないけれども。
    「こういう出䌚も旅の醍醐味よね」
    「そうかもな。面癜かった。ありがずう」

     それで最寄りの駅から地䞋鉄に乗っお空枯に戻るず時すぎ。ただ時間はあるけれど早めにゲヌトに向かうかず蚀えば、女は航空刞の再発行が必芁だそうだ。
    「それじゃあ先に行っおお」
    「わかった」
     それで俺はずっず女ず手を繋いでいたこずに気が぀いた。
     繋ぐずいうか掎たれおいたに等しくはあるものの、誰かず手を繋ぐなんおい぀ぶりだろう。劙にあたたたった手のひらをぱたぱたず眺めおいるず、女はい぀のたにかいなくなり、チェックむンをしたけれども搭乗たで女の姿は芋぀けられず、ベルゲンに降り立っお最埌の搭乗者が降りるたで埅っおいたけれど、名前も知らないあの女が降りおくるこずはなかった。
     䞀期䞀䌚ずいう蚀葉が頭をよぎる。次もしトランゞットが遅れたら、行きそびれたアマリ゚ンボヌ宮殿にでも蚀っおみようか。
     䞀人で入管に向かったけれど、手のひらはただ暖かいような気がした。

    Fin

    ★䌌た系列の話

    ★短線小説のマガゞン

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