メインコンテンツへスキップ
見出し画像

「どうする家康」第23回「瀬名、覚醒」 瀬名の謀(はかりごと)が目指す築山の風景

    はじめに

     第23回のサブタイトルは「瀬名、覚醒」ですが、このタイトル、実は今更な気がします。何故なら、それよりもずっと前から瀬名は、民の話が聞けるよう築山に誰もが訪れることが許される庵を結び、人々の話や書物から政治を学び、考え、自分の目指すものを明確にしていきました。意に染まない側室問題も自ら参加しましたし、彼女のあり方が大岡弥四郎の謀反を食い止めました。

     表立たず夫を立ててはいるものの、その行動はおおよそ自覚的です。そして、以前のnote記事でも指摘したとおり、そんな彼女に期待するお万の方の言葉もあり、彼女は自身の秘めたる信念が醸成されていっています。その信念が確かだからこそ、望月千代女とのやり取りにも覚悟をもって臨んでいるようにも見えますね。二人なら「もっと大きなこと」をできると同志になるよう呼び掛けています。

     瀬名の信念とは、「戦をなくし、人々が手を携え、与え慈しむことで共に歩む世の中を目指す」というところでしょうか。現状、家康を含め、この世の中を支配しているどの戦国大名も考えていないであろうスケールの大きい発想…既に瀬名は覚醒していると言えるでしょう。

     ところで、恵まれた環境に育つ今川の姫は、いつから成長を始めたのでしょうか。第6回「続・瀬名奪還作戦」での瀬名の母、巴の遺言が思い出されます。

      瀬名、強くおなり。
      我らおなごはな、大切なものを守るために命を懸けるんです。
      そなたにも守らねばならぬものがあろう。
      そなたが命を懸けるべき時は、いずれ必ず来る。

     当初、史実から信康の溺愛の果てに命を懸け散ることの伏線だろうと思われたこの遺言ですが、瀬名の「守らねばならぬもの」とは、そうした個人的な、近視眼的なレベルだけではありませんでした。
     彼女は、戦が両親を失わせた元凶であることを早い段階から看破しています。それは「とにかく戦は嫌なんじゃ」(第8回)「戦はどうして無くならぬのでしょう」(第16回)という台詞からも伝わります。ですから、母の遺言に頷いたときから瀬名の「戦をなくす」戦いは静かに始まっていたのですね。父の遺言「お前は笑顔が似合う、笑顔を忘れるな」と共に。

     となれば、第22回は、既に覚醒している瀬名が、その信念を明確な形で実行に移す、そのきっかけが描かれた物語だったと言えるでしょう。そこで今回は、瀬名が一大決心をするまでの背景と経過を追いながら、彼女の目指す「厭離穢土欣求浄土」について考えてみましょう。

    この記事が参加している募集

     
     

    青江

     
     
    非常勤講師で糊口をしのいでいる泡沫研究者。専門は現代文学で小説の映画化について。趣味は実益も兼ねて映画鑑賞。A~Z級、ジャンル、国籍問わず色々観てます。 執筆、講演などお仕事依頼は以下のアドレスへ。 t-turuta@auecc.aichi-edu.ac.jp

    あなたへのおすすめ