
「どうする家康」第35回「欲望の怪物」 果たして秀吉だけが欲望の怪物なのか?
はじめに
第35回は、いよいよ「どうする家康」も最終コーナー(残り約1クール)に入ったということで、今後に向けて種まきがなされた(伏線が張られた)回だったと言えるでしょう。
オープニングも変わりました。黒々と塗りつぶされたかのような画面から始まるそれは秀吉への臣従を指しているのでしょうが、何度もその上を履き替えていく中でその奥から様々な色が混ざりあった青を基調とした深みのある豊かな色彩が立ち現れます。家康の重ねた苦労と人の縁が重層的に重なり合った結果なのでしょう。
そして、その苦労と人の縁は、新しい街並みと人々の営みを映し出していきます。富士が見えるこの場所は江戸の町なのでしょう。そして、そんな街と人々を太陽と化したタイトルが照らしていきます。希望に満ちたこの先を仄めかす内容になっていますね。
しかし、本編はそこに至るまでの苦難の準備段階とも言えるものです。ざっとあげれば、石田三成の登場、真田家との因縁の本格化、秀吉の唐入りの野望です。後半戦の主なイベントに関する伏線が随所に盛り込まれました。
また、後半戦の主要人物も魅力的に描かれましたね。中村七之助くんの石田三成の穏やかさと爽やかさ、老獪な舌戦を繰り広げる表裏比興の真田昌幸とイカサマ師、正信との緊迫感。今後を想像すると興味深いものがあります。
こうした中でワンポイントリリーフ的な登場となりそうな大政所も、高畑淳子さんの演技力もあって強い印象を残しました。今回、大政所は特別、政治的な発言をしたわけではありません。にもかかわらず、冒頭、中盤、後半とその言動がピックアップされ、話があちこちに飛ぶ第35話をつなぐ役割を果たしています。
つまり、極めて政治的になりそうな今後の展開を、そことは一線を画す大政所の言動から炙り出そうとするのが第35回の構成なのです。
そこで、今回は大政所の語る恐れと怯えから、第35回全体を俯瞰し、最終クールで家康が対峙しなければならない「欲望の怪物」とは何か、そして、彼の進むべき道は何かを考えてみましょう。