
Divorce ― 心の故郷を求めて
Divorce は、Felix Mackenzie-Barrow(ボーカル)とTiger Cohen-Towell(ボーカル・ベース)、Adam Peter-Smith(ギター)、Kasper Sandstrom(ドラム)による4人組で、2021年にノッティンガムを拠点に結成された。
彼らの出発点には10代から続く友情と創作の積み重ねがあり、その流れの中で自然に生まれた音楽は、フォーク、インディー、カントリー、パンク、ロックといった幅広いジャンルを自在に横断しつつ、ギターを中心に据えたサウンドで一貫している。
メンバー自身も「ジャンルレス」であることを強調しており、音楽性は流動的でありながらも、互いの結びつきによって一体感を保っている。
彼らのデビューアルバム『Drive To Goldenhammer』は、愛や喪失、不安、心痛、そしてその先に差す希望といった普遍的な感情を凝縮した作品であり、ヴォードヴィル的な演劇性や不気味なノスタルジアをまとった空気感が全体を貫く。
タイトルにある「Goldenhammer」は実在しない場所でありながら、旅や帰属意識を象徴する概念として用いられており、イースト・ミッドランズで育ったメンバーの経験や故郷への複雑な感情と深く結びついている。
それは現実には存在しない「家」でありながら、誰もが心のどこかで探し求める居場所を示すメタファーとして描かれている。
音楽的には、Belle and SebastianやQueen、ABBA、Fiona Apple、Wilco、そしてKate Bushや Perfume Genius などから影響を受けており、濃密なハーモニーやオペラ風のシーケンス、詩的なリリシズムが特徴となっている。
楽曲ごとに多様なアプローチが見られ、カントリー調の物語性豊かな「Old Broken String」、モダン・インディーとポップを融合させた「All My Freaks」、複数のセクションに分かれた実験的な「Pill」など、緻密でありながら遊び心を失わない構成が光る。
また、「Parachuter」や「Antarctica」ではフィドルを取り入れ、より豊かな表現を模索している。
制作においては、プロデューサーのCatherine Marksの存在が重要で、自由で偏見のない姿勢のもと、日々のセッションであらゆるアイデアを試し尽くすことで、彼らのサウンドを新たな段階へと押し上げた。
歌詞面では、個人的なクィアの体験から、故郷との関係性や人生の旅路を映し出すものまで幅広く、芝居がかった表現やユーモアを織り交ぜつつも、どこか生々しく誠実である。
彼らは常に感情や潜在意識に深く向き合い、互いに支え合いながら創作を進めており、その健全な関係性こそが音楽の核を成している。
ライブにおいても、録音時の緻密さを踏まえつつ、自由で楽しげなエネルギーを放ち、観客との強い一体感を生み出している。
結成からわずかな期間で名門Capitol Recordsと契約を結び注目を集めた彼らだが、常に自分たちのやり方に忠実であり続けている。
業界の流行や話題性に翻弄されることなく、創作への誠実さを守り抜く姿勢は、冗談を交わしながらも人生の些細な側面に喜びを見出し、仲間と共に音楽を築き上げる Divorce というバンドの本質そのものである。