
Dreamin' Her - 僕は、彼女の夢を見る。-感想(ネタバレあり)
はじめに
こんにちは、ツバサです。今回は『Dreamin' Her - 僕は、彼女の夢を見る。-』の感想を書いていきます。それではさっそく始めましょう。
※この先の内容にはネタバレがたくさん含まれていますので、未プレイの方はご注意ください。
キャラクターについて
まずはキャラクターについて話そう。と言っても、深く語れるのは蒼、未来、紡凪の3人くらいなんだけどね。
蒼:
ハッキリ言うと、蒼は自分がめっちゃ嫌いなタイプだ。
シナリオの中で描かれた彼の特徴は「善」だ。周囲の人に与えているのに、自分ではその自覚がない。その上、世間に対する希望はとっても純真で、もう「甘い」と言っていいレベルだ。だから、正直あれは「善」というより、「天真爛漫な甘さ」と言った方が正しいと思う。
とは言え、彼のその考え方自体はすごく理解できるし、共感もできるんだ。
だが、「善」である彼が世間の「悪」に直面した時の行動は、めちゃくちゃ気に入らない。理由のない悪意は仕方がないし、過去のことももう振り返らないとしよう。でも、学業という「今からでも向き合えること」には、まだ変える余地があるじゃないか?あの救いようのない母親のことは置いておくとしても、仲間が何人かいるじゃないか。
一人で絶望の中で叫びながら、救いの手を差し伸べてくれる人を全部無視して、自分の作った繭に閉じこもり、最後は夢の中の自分を全肯定しかしてくれない「架子」に救いを求めて沈んでいった。ああいう自己満足な考え方は嫌いだ。
もし救いを求めるなら、少なくともそれ相応の行動を取るべきだ。
そもそも、あれは「悪」と呼ばれるのかな?
しかも、後半の状態を見ると、彼がほしいのは「未来」や「架子」という具体的な人物ではなく、ただ「自分を全肯定してくれる存在」なら誰でもいいという状態に近く、正直ちょっとムカつくね。

未来:
全ての問題の原点。でも正直、あれは彼女のせいじゃない。
彼女はちょうど蒼が一番他人の支えを必要としている時に離れ、3年間の空白を作った。その期間、彼女なりに蒼を助ける方法を探しに行っていたわけだが、逆に蒼には「裏切られた」と感じさせてしまった。これは仕方がないことだ。
でも紡凪に関することは、彼女は少しわがまますぎたと思う。あの時の蒼の状況から見て、未来の選択はすごく危険だった。だが、それも彼女のキャラクター性として成り立っているから、特に指摘する必要はないかな。
でもまあ、個人的な考えを言うと、小さい頃は確かに色々な感情が混ざっていたかもしれないけど、高三の時に蒼が好きになったのは、絶対100%「未来」じゃないかと思う。ありのままを受け入れてもいいと思うけど、でもそれだと未来の性格じゃないんだよね。

紡凪:
全ての原点。でも逆に、語れることは少ない。
彼女はもう「過去」にいる人だから、いつも蒼が生き続けるために努力し、自分を抑えて、ちゃんと「架子」として生きていたんだ。
とはいえ、自分は未来より紡凪の方が好きかもしれない。他人のために一生懸命になれる人は尊敬できるから。
ていうか、いつも未来の名を名乗っているとはいえ、本人が未来よりもずっと魅力的なのは流石にヤバいな。
「生きる意味」はなんなんだろうか
この問題はもう哲学界隈の定番だ。「生きる」とは一体何のためか。これは決して正しい答えがない問いなんだけど、紡凪の答えはかなり好きだ。
「楽しいことを探すため」
こういう結論も悪くない。
だけど、以上は全部「紡凪から蒼へ向けた気持ち」であって、蒼自身は何も意識していないのがめっちゃキツイ。しかも最後のエンディングは「楽しいことを探すため」というより、「紡凪のために」生き続けるんだよね。ダメとは言わないけど、「他人のために」生きるのは所詮「自分のため」ではないじゃないか。蒼は本当に自分の意思が弱すぎる。
だからこそ、正直自分は一緒に「夢」に留まるバッドエンドの方が好きだ。あのエンディングのすべての選択は蒼自身がしているのだから、トゥルーエンドよりはるかに説得力が高い。

「悪」の非と是
この命題はシナリオ中で提示されているものだけど、具体的に深掘りされなかったのは正直惜しいと思う。
シナリオの中で、蒼はいつも「世間の悪はどうしてなくならないんだ?」「一体どこから来るんだろう?」と問い続けていた。でも、これは決して正解のない問いだと思う。
だって、人は単なる「白」と「黒」みたいに、単純な概念で定義できる生き物ではないんだから。
シナリオの中で、後輩が蒼の悪口を言って喧嘩を売ってくるシーンがあった。そこで蒼の考え方を「歪んでいる」と定義していたけど、自分にとってあれは大半の人がやることだと思う。もしああいう閉鎖的な空間で、自分の考えを言うことすら「悪」と定義してしまうなら、最後は全員が蒼みたいにストレスに押しつぶされる結末しか見えない。
世間は不条理なものだ。蒼の考え方はマジで真っ白すぎて、社会の残酷さにまだ汚染されていない心というのは、ある意味で青春だね。
結末&雑談
文句も色々言ったけど、自分はこの作品がかなり好きだ。自分の価値観とは真逆かもしれないが、こういう考えのぶつかり合いを感じるのは好きだから、良い作品だと思う。
作中で語られる多くの悩みや状況は現実とそっくりだし、あのイライラやムカつく気持ちにはすごく共感できる。特に蒼のお母さんは、現実にいる救いようのない奴とマジで似すぎていて、怖いくらい彼の気持ちに共感した。
でもやはり惜しいとは思う。大筋の設定はいいのに、人物像やシナリオ、そして価値観についての掘り下げが、基本すべて中途半端な感じで終わってしまった。物語としては完結しているけど、全体的に味が薄いし、未来の魅力もうまく伝わってこなかった。短編だからしょうがないとはいえ、やはりそこは残念だったな。