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【掌編小説】ログ【1550文字】

    彼女のメッセージは、もう二度と既読になることはない。

    それを知っているのは、多分世界で俺一人だ。

    四十三歳の春だった。
    会社帰り、駅前のベンチでスマホを見ていると、知らないアカウントからメッセージが届いた。

    「今日も、お疲れ様です」

    誰だ?と思った。
    けれど、何故かブロックする気にはならなかった。

    疲れていたのだと思う。
    いや、疲れているというよりも、「何も残っていない」という感じに近かった。

    家庭はある。
    妻もいる。
    子供もいる。
    会社にも特に不満はない。

    けれど、何か決定的に、そう、彩りのようなものが足りなかった。
    出会いを求めているわけじゃない。
    ただ、歳を重ねていくごとに、自分の中の何かが鈍っていくような、そんな感覚がしていた。

    メッセージは業務連絡のような、何気ないものだった。
    訝しむ前に、指が動いた。

    「ありがとう。あなたも」

    それが、始まりだった。

     
     
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