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【掌編小説】今宵月が満ちるように【1239文字】

    夜の静寂が街を包み込む頃、深澄(みすみ)は、川沿いのベンチに腰を下ろした。
    川面に映る月は、まだ半分を僅かに過ぎたほどの姿をしていたが、彼の目には、それがどこか儚げに映った。
    「もうすぐ満月ね」
    隣に座る葵が呟いた。
    彼女の声は穏やかで、それだけで深澄は心が落ち着くように感じた。
    「そうだな、あと少し」
    二人はしばらく何も言わずに、ただ座って月を見つめていた。
    夜風がそっと頬を撫で、どこか遠くで虫の音が響く。
    こんな静かな時間を共に過ごすのは、実に久しぶりのことだった。

    深澄と葵は、かつて恋人同士だった。
    しかし、些細なすれ違いが積み重なり、二年前に別れた。
    それ以来、特に連絡を取り合うこともなかったのだが、数日前、ふとした偶然で再会し、こうしてまた話すようになったのだ。

     
     
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