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人は何度でも色を変える――今東光の再出発

    葉の色が、少しずつ変わる。夏のあいだ、ひと色の緑に見えていた木が、秋になると赤や黄をまとい、まるで別の姿を見せる。だが、木そのものが別の木になったわけではない。色を変えながら、同じ場所に立ち続けている。

    今東光の人生をたどると、そんな木を思い浮かべる。若いころは川端康成らと第六次『新思潮』に加わり、『文藝春秋』の創刊にも関わった。文学という新緑のただ中を、勢いよく駆け抜けたのである。ところが1930年、32歳の東光は出家し、比叡山で修行を始めた。華やかな文壇から、鐘の音が響く寺へ。外から見れば突然の変転に映っただろう。


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    しかし、葉が秋色になるのは、夏を捨てたからではない。光を浴び、雨に打たれ、時間を重ねた結果だ。東光にとっても、僧侶になったから作家を失ったわけではなかった。大阪・八尾で住職を務めながら書いた『お吟さま』は1957年、直木賞に輝く。二十数年の時を経て、作家として再び脚光を浴びた。しかも、そこで終わらない。やがて中尊寺の貫主となり、国会議員にもなった。

    一枚の葉を見て「赤くなった」と言うのは簡単だ。けれど、その赤には見えない季節が折り重なっている。シロクマ文芸部の「葉の色が」という小さな書き出しも、東光を思うと、人生の長い物語へ続いていく。

    人は何度でも色を変える。しかも、その色はどれも本当の自分だ。盛りの緑だけを見て、その木の一生を語ることはできない。冬の枯れ枝にも、次の春を待つ力が残っている。

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    作家、僧侶、政治家と姿を変えながら生きた今東光。その変化の一つひとつを時の流れに沿って追えるのが、今秋刊行の『今東光[全年譜]増補改訂版』である。

     
     
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