
サンマを焼くだけの日曜日
いつもは出勤の夫が、日曜日休みだった。
貴重な家族3人一緒の休日だから、どっかでかけよう、と話していた。
だけど、どこ行く〜?どうする〜?とグダグダしているうちにお昼になってしまった。
お昼ご飯を食べ終わると、大人は日頃の疲れからか寝てしまった。
小学一年生の息子は歌ったり、ユーチューバーごっこしたりしていた。
声がずっと聞こえていた。
なんでそんなに元気なんだ。
大人たちが起きると16時だった。
今日…何もしてないね…っていう雰囲気に。
夫が近くのスーパーに買い物に行ってくる、と言いだしたので、サンマを買ってくるように頼んだ。
この前、息子とスーパーにいったときに、パックに入ってるやつじゃなくて、氷の中にいっぱいサンマが入れられていて、自分でトングでつかんでビニール袋に入れるタイプのやつが売られていた。
息子はじっとサンマを見ていた。
小学校の友達からはお魚博士と言われる魚好きの息子だが、夫が魚があんまり好きじゃないので、わが家ではこういう丸ごとのやつを買うことがない。
サンマを買って観察させてあげたいなぁ、と思ったけどグリルもないしフライパンに入るのかな?どうやって焼くのかな?と思って、なんとなく手が出なかった。
今日は夫がいる。
キャンプの時に使う、網のついた焚火台で焼いてもらおう。
庭でプチキャンプみたいにもなるし、楽しいんじゃない?って、サンマを頼んだ。
夫が買い物から帰ってきて、外で火をおこしている間に息子とサンマの準備をする。
うろこが残っているときもあるから、サッと水で洗うといいらしい。
わたしも魚を扱いなれていないので、スマホで調べた。
ほとんどついていなかったけど、何枚かうろこがあった。
透明で小さなうろこ。
水色のペンでちょんとしたような色がついている。
指先にとって息子に見せる。
「これ うろこだよ!」
「ほんとだ!かわいい!」
息子は自分の指先にくっつけて、タブレットで動画を取り始めた。
ユーチューバーごっこしながら、「ごらんください!これがサンマのうろこです!」と紹介する。
そして、サンマを手に持ってみる。
口がどうなっているのか、開いたり閉じたりのぞいたり、体の厚みや感触を確かめた。
わたしは、サンマを持つ楽しそうな息子の写真を撮った。
それからサンマは外に運ばれ、焚火台の網の上にのせられた。

ときどき、サンマの油が落ちて炎が出る。
息子とキャー!と言いながら、キャンプの時に使う椅子に座って焼けていくのを見守った。
何回かひっくり返して、焦げるぐらい焼けた。
少し皮が剥げてしまったところもあるけど、美味しそう。
大きめのお皿にのせて、骨に沿って箸を入れる。
身の上半分をパカッと開けると、ふわっと湯気がでた。
ホクホクだ。
一口分の身をとって、息子の口へ。
「おいしい?」
「うん!」
わたしも食べる。
めちゃ美味しい!
サンマ、美味しい!!
食べ進めると、サンマは頭と中骨と尻尾がキレイにとれた。
息子はそれを手に取り、「これが骨格か~」と観察する。
なんか難しい言葉知ってるな。
骨を噛んでみる息子。
尻尾を噛んでみる。
頭を噛んでみる。
なぜ噛むの?
中骨を折ってみる。
何か筋のようなものがでてきた。
「なにこれ」
「なんだろうね」
わたしは魚のことはよく分からない。
一緒に観察してみる。
頭の近くをめくると、線がたくさん入った扇状のものが何枚か重なるようについている。
「これエラじゃない?」
「そうだよ!エラだよ!」
息子とサンマを研究しながら食べた。
楽しい。
そして、美味しい。
「サンマ、美味しかったね」
夫と息子に何回も言った。
だらだらして、不毛な休日になるところだった。
サンマを焼くだけで、特別な日曜日になった気がした。
「今度の休み、また焼こうか?」
夫が言った。
3日後、また焼いた。

おわり。