
「背筋をピン」が、届かない子がいた

「背筋をピン」が、届かない子がいる
ほとんどの授業で、年齢に関係なく姿勢を直す時によく使うフレーズがある。「背筋をピンと伸ばして」「お腹と机の間はぐーひとつ分」。長年、これでほとんどの子には伝わってきた。
けれど、何度言っても直らない子が、クラスに必ず数人いる。最初は「聞いていないのかな」と思っていた。でも、あるとき気づいた。その子は、聞いていないのではなく、「ピンと伸ばす」がそもそもどういう感覚なのか、イメージできていないのではないか。体幹や筋力の問題で、そもそも「その姿勢を保つ」こと自体が難しいのかもしれない、と思うようになった。
同じ指示が、同じように届くとは限らない
「背筋をピン」も「ぐーひとつ分」も、体の感覚をつかみやすい子には、とても分かりやすい鉄板フレーズだ。だが、自分の体がどう動いているかを感じ取る力(いわゆる身体感覚)や、姿勢を保つための筋力・体幹には、もともと個人差がある。感覚的な指示が、全員に同じように届くとは限らない。
「何度言っても直らない」ことを、その子のやる気や態度の問題として片づけてしまうのは、危ういのではないか。体の特性によって、指示そのものが届いていない可能性がある。だとすれば、必要なのは「もっと厳しく言う」ことではなく、「その子に伝わる形に変える」ことなのだと思う。
全員に同じ基準を当てはめる、という前提を疑う
これまで姿勢指導は、「正しい姿勢」という一つの型を、全員に当てはめる形で行われてきた。だが、体の使い方も、感覚のつかみ方も、一人ひとり違う。だとすれば、「正しい姿勢」もまた、一人ひとり違っていいはずだ。大事なのは、見た目が全員揃った「正しさ」ではなく、その子にとって書きやすく、疲れにくい姿勢にたどり着けるかどうかだと思う。同じ基準を当てはめるのではなく、その子の体に合った基準を、その都度見つけていく。それが、教室における本当の「正しさ」なのではないだろうか。
「正しい姿勢」という思い込みを、一度疑ってほしい
「背筋をピン」が届かない子に出会って以来、私は「正しい姿勢」という言葉を、以前ほど簡単には使わなくなった。正しさは一つではない。根拠のある、その子にとっての最適な姿勢を、その都度見つけて伝えていく。それこそが、教室で本当に目指すべき「正しさ」なのだと思う。
もし、何度言っても姿勢が直らない子がいたら、一度立ち止まってみてほしい。その子が悪いのではなく、こちらの「正しさ」が、その子に合っていないだけかもしれない。
皆さんはどう思いますか。コメントで教えてください。