
距離の近さに「やさしさ」が混じる香港で癒されている
香港での生活を始めて1年。
他人との距離がとっても近いことに驚く。レストランに行けば、相席が普通。
家族4人で出かけても、6人が座れるくらいの丸い席の、すでに3人の客が座っているテーブルに案内され、ぎゅうぎゅうになりながら席につく。カバンをおくスペースもないから、ひざに置く。
こんな風に、人口密度がトップレベルの香港では(物価もだが)他人との距離がとてつもなく近い。
最近感じるのは、物理的な距離だけでなく、心のあいだにも壁がないように感じることだ。香港では、知らない人でもまるで親戚のように声をかけてくれることが多い。

ある日、家族で飲茶のレストランに出かけた時のことだ。
案の定の相席で、丸テーブルの向かいには、3人の香港人らしき家族が座っていた。飲茶だから、点心を頼んでいる私たちの向かいで、彼らが食べているのは見たことがない、おいしそうなものばかり。薬膳スープっぽいもの、コトコトやわらかいお肉のシチューのようなもの、そして、3種類のお肉盛り。
どれもこれもおいしそうで、気になるぞ…。そうジーっと見つめていた私の視線を感じてしまったのだろうか。
「食べてみる?」
お母さんが私たちに笑顔で声をかけた。
「え?」「いいの?」「あ、でも…」
そんなつもりはなかったよ。くださいっていう視線をかけてしまっていたのだろうか。ちょっと焦って断ったのだけど、お母さんも、隣のお父さんも笑顔で「食べなさい」というジェスチャーでこちらを見る。
ということで、お肉盛りを一切れいただく。
「子供たちにもあげて。もっと取りなさい。どうせ私たち食べきれないから」
そういって、お肉をもっと分けてくれるではないか。
初めての「知らない人がご飯をわけてくれる」体験に私は恐縮しまくりではあったが、今でも、分けてくれたあのお肉の柔らかさと甘辛い独特の味は忘れられない。
それから1年。同じようなことが、相席したテーブルで何度も起きた。
つい先日も、友達とレストランでご飯を食べていたら、相席していた隣のおじさんが、薬膳スープを分けてくれた。
というのも、薬膳スープがテーブルに届き、私と友達は2人して『好奇心』丸出しの視線を投げかけてしまっていたのかもしれない。
新聞を読みながら、一人で朝ご飯を食べていたおじさんは、私たちをちらっと見ると「食べなさい」といって、小さなおわんに、きのこと薬草とお肉の入ったたスープをてんこ盛りに盛った。
「私ひとりじゃ食べきれないから、食べなさいな」
そう言って、2つ目のおわんにも盛ってくれようとした時には、さすがに止めた。
このスープも思った以上のおいしさで、次回にこのお店に来た時はこれを注文しよう!と心に決め、おじさんの料理の写真も撮らせてもらった。
食べものよりも、心に残るのは、「知らない人でも、ご飯をわけてくれる」香港の人たちの温かさだ。

日本に住んでいたら、私が同じことができるかな…と思うと、わからない。「そもそも、人に『これ食べる?』って聞いて断られたらちょっと寂しい」とか、「いやいや、他人のものなんて食べないよね」とか、いろいろと考えて、きっと躊躇してしまう。
そういうのが一切なくて、あっけらかんとして「これ、食べなよ」と分けてくれる香港の人の心意気が温かくてうれしい。
今日も、相席で何が起こるか楽しみにしながら、香港の町にくりだそう。
#海外生活
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