
リチャード・フランシス・バートンの秘密文書――探検家は何を記録し、何を隠したのか
■灰になった探検家の遺稿
1890年、イタリアの港町トリエステで一人の男が世を去った。リチャード・フランシス・バートン。軍人、探検家、外交官、言語学者、翻訳家。肩書きをいくつ並べても収まらないこの人物は、生涯を「記録すること」に費やした男でもあった。
ところが、彼の死後、その記録の一部は最も身近な人物の手によって炎に投じられたと伝えられている。妻イザベルが、未刊行の翻訳原稿や私的な日記を焼いたのである。
記録に人生を捧げた男の記録は、なぜ失われたのか。焼かれた紙には何が書かれていたのか。
先に断っておきたい。この記事は「秘密文書の暴露」ではない。「何が分かっていて、何が永遠に分からないのか」を切り分けながら、確認できる史実だけを足がかりに歩く旅である。
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