
【第11話に込めた思い:第6章】AIを怒り、叩き直した日々——Geminiとの泥臭い協働裏話
1. 生成AI(Gemini)は「便利な道具」か「未熟な相棒」か
ここまでの章では、『宇宙公務員オヂェフ』第11話『平和と繁栄』のテーマ性や、キャラクター設定の深層、そして物語の構造(様式美ブレイカー)について語ってきた。
だが、この作品を語る上で絶対におざなりにできない、もう一つの重要な側面がある。それは、「生成AI(Geminiなど)と全面的に協働して作り上げた作品である」という点だ。
近年の生成AI技術の進歩は凄まじい。プロンプト(指示文)をひとつ打ち込めば、人間が何日もかけてひねり出すようなアイデアを一瞬で箇条書きにしてくれ、膨大な時間と技術を要する美しい作画を数秒で吐き出してくれる。
世間では「AIがあれば誰でも簡単に神作が作れる」「クリエイターの仕事はAIに奪われる」といった議論が賑やかに交わされている。
では、実際に生成AIをフル活用してこの第11話という重厚な作品を組み上げた作者として、私はどう感じているか?
答えは明確だ。「AIは魔法の打ち出の小槌などではない。放置すれば平気で浅い手抜きをし、数の数え方も間違える、手を焼く『未熟な相棒』に過ぎない」ということだ。
第11話における数々の緻密なロジックや圧倒的なビジュアルは、AIが勝手に吐き出したものではない。私が画面の前でAIの浅はかな提案に本気で怒り、設定の矛盾を叱り飛ばし、手足となって動くように叩き直し続けた「泥臭い死闘の歴史」の果てに生まれたものなのだ。今回は、その創作の舞台裏で繰り広げられた、AIとの格闘劇についてお話ししよう。
2. 【テキスト編】「音を知らない奴に『消音』はおかしいだろ!」——AIの浅はかさを叱る
まず、物語の核心である「四つの種族による相互依存システム(光の重工ユニット/闇の保守ユニット)」のロジック構築についてだ。
「知覚の異なる四つの種族がお互いを排除せず、経済的に協力せざるを得ない産業構造を作りたい」
このお題を生成AI(Gemini)に投げかけ、ブレインストーミングを開始した時のことだ。AIは持ち前の処理能力で、種族ごとの特性と役割の組み合わせ案をいくつも提示してきた。
その中で、AIが自信満々に出してきた提案の中に、私はどうしても許せない「致命的なロジックの欠陥」を発見した。AIは、こう提案してきたのだ。
「闇の保守ユニット(四つ耳×無目)が『音』をキーにするので、対比として、光の重工ユニットに組み込む無耳族には『消音(音を消す)の特性』を持たせましょう」
一見すると、いかにも「音」と「消音」で綺麗な対比が取れているように思えるかもしれない。だが、私はこの提案を見た瞬間、画面に向かって激怒した。
「おいGemini! 耳を持たない『無耳族』にとって、この世界には『音』という概念そのものが存在しないんだぞ! なぜ『音』を知らない奴らが、わざわざ『音を消す(消音)』なんて音ありきの発想や特性を持つことになるんだ! おかしいだろ!」
AIは、テキストの統計的な確率や表面的な「対比(音⇔消音)」の美しさに引きずられて、当事者(無耳族)の認知世界を無視した安易なアイデアを出してきたのだ。
耳を持たない者にとって、世界は「静か」なのではない。「音」という次元そのものが存在しないのだ。そんな彼らに「音を消す作業(消音)」という概念が存在するはずがない。
「いいか、無耳族が信じているのは『音』ではなく『触覚・質量・重力』だ! 彼らは音を消すのではなく、圧倒的な重量作業や触覚による精密加工を担うプロなんだよ!」
AIの手抜きと浅い対比を厳しく叱り飛ばし、当事者の知覚世界のリアリティ(生の感覚)を人間である私が厳密に防衛した。この「人間に怒られ、叩き直された」プロセスがあったからこそ、無耳族は「触覚と質量のプロ」として再定義され、四つ目(目)×無耳(手)による「光の重工ユニット」という完璧な相互依存ロジックが完成したのである。
3. 【作画編】目が6個に増殖し、耳を消したら目が消えるカオス
テキスト(プロット)でのバトルを乗り越えた後、次に立ちはだかったのは「作画(画像生成AI)」との死闘であった。
作画においても、AIは私の精神を激しく削りにきた。画像生成AIというものは、一見すると繊細で圧倒的な絵を描く天才画家のようだが、実は「数の概念」や「ネガティブ指定(~がない)」を理解するのが致命的に苦手という大欠陥を抱えている。この欠陥が、「身体構造の違い」をテーマにした第11話で大爆発したのだ。
まず、「四つ目族」のイラストを描かせようとした時だ。プロンプトで「4つの目」と明確に指定しているにもかかわらず、画像生成AIはノリノリで描画するあまり、勝手に目の数を増やし、顔中に6個も目を持つ「6つ目族」を作り出してしまった。

「ちがう! 6個もいらん!6個だと話が変わってくるんだよ! 『4個』ぴったり描けと言っているんだ!」
次に、もっと酷かったのが「無耳族(耳がない種族)」の描画だ。「耳がない」と指示を出した途端、AIの認知はパニックを起こした。「耳がない」という打ち消しのニュアンスに引きずられ、何を思ったのか耳だけでなく『目』や『鼻』まで綺麗に消し去り、完全なノッペラボウを描いてよこしたのだ。
「なんで目まで消すんだよ! 耳は無いけど、目は普通に2つあるんだよ! 話を聞け!」
画面の前で「目が多すぎる!」「今度は目が消えた!」「手が増えるな!」と、AIの暴走に対して頭を抱え、何度もプロンプトを打ち直す日々。「AIを使えば漫画が簡単に描ける」なんて言ったのは一体誰だ、と叫びたくなった。
しまいには無目族の族長女性に勝手に目を追加………

……可愛いじゃねぇかよ……
なお、本来のご尊顔はこちら↓

4. テキストAIに仕様書(整理表)を作らせ、画像AIに渡す連携プレイ
あまりにも画像生成AIが身体構造を間違え続け、作業が泥沼化したため、私はある手法を編み出すに至った。
人間である私が毎回「目は4つ、耳は2つ……」と画像AIに手動で説明するから、画像AIが混乱するのだ。
そこで私は、テキスト側のGeminiに対し、まず『種族ごとの厳密な身体特徴の整理表(仕様書)』を以下のように作成させたのである。

テキストAIに論理的で厳密な「パラメータ整理表」を組ませ、その「仕様書テキスト」をそのまま画像生成AIのプロンプトへと流し込み、AI同士で正確な設定を引き継がせる——。
いわば、「言うことを聞かない画像AIに対し、テキストAIに仕様書を書かせて仲介させ、人間が総合ディレクターとして統括する」という、極めて高度なAI連携システムを現場で構築したのだ。
この人間による泥臭い粘りと、AI同士を噛み合わせるディレクションがあって初めて、作画原稿に登場する異形たちの姿は、設定通りの「正しく美しい異形」として画面上に結実することとなった。
5. 魂(ソウル)を吹き込むのは、いつだって「人間」だ
この第11話の制作を通して、私は生成AIという存在の本質を痛感した。
AIは、圧倒的なスピードと膨大なパターンを提示してくれる、間違いなく優秀なアシスタント(仲間)だ。彼らがいなければ、一人でこれほど膨大な設定を整理し、ここまでの作画枚数を描き上げることは不可能だっただろう。
しかし、AIは「なぜその物語を描くのか」という哲学や情熱(魂)を持つことはできない。
AIに「平和の物語を作って」と頼めば、AIはどこかで見たような「みんなで話し合って仲直りしました」という安易で退屈なハッピーエンドを提案してくるだろう。AIに「種族の組み合わせ」を考えさせれば、「音」と「消音」のような表面的な言葉遊びで満足してしまうだろう。
そこに「ディズニーのスモールワールドで流した涙」を込めるのは、人間だ。
そこに「麻生太郎氏の政治リアリズム」を持ち込むのは、人間だ。
「耳のない奴に『消音』はおかしい!」と怒り、設定のリアリティを死守するのは、人間だ。
そして、アシュラマンの冷血面の口の有無にまでこだわる狂おしいまでの愛を注ぎ込むのも、やっぱり人間なのだ。
AIという優秀だが気まぐれなアシスタントに泥臭く向き合い、その暴走を手懐け、最後に「魂」を吹き込む。これこそが、これからの時代における「クリエイターと生成AIの真の協働」の姿なのではないだろうか。
これこそが、これからの時代における「クリエイターと生成AIの真の協働」の姿なのではないだろうか。
こうして、人間とAIが火花を散らしながら作り上げた第11話『平和と繁栄』。
次回、最終章となる第7章では、1000年後の死の星で回転し続ける「メリーゴーランド」の真実と、冒頭でニィとツゥが願った「祈り」がどう結実したのか——その感動のクライマックスを語り尽くそう。
(第6章・了 / 第7章「1000年後のメリーゴーランド——実現した『二人の祈り』」へ続く)