
🌙巡る想い⑨ 巡りの途中で
この物語は、チュチュ・テイルの世界を旅する記録です。
シルエットで描かれた猫たちや動物たちが暮らす、やさしい世界✨️
白いうさぎの旅人 エトワール の旅日記として綴っています。
はじめての方は、ぜひ固定記事からご覧ください🌙
いちご園で触れた、言葉になれなかった想い。
その余韻が、まだ静かに残るなかで──
しばらくのあいだ、ルートは、その場から動かずにいました。
土の中に、両手をそっとあずけるようにして。目を閉じたまま、じっとしています。
ぼくは、声をかけることができませんでした。
見ていると、淡い光の粒子が、ルートのまわりにひとつ、またひとつと集まってきます。
それは、ルートが呼んだというより──粒子たちの方が、そこへ引き寄せられていくようでした。
「……うん」
ルートが、静かにうなずきます。
何も聞こえないはずなのに、確かに、何かに答えているようでした。
また、少しして。
「うん」
ときどき、ほんの少しだけ表情がやわらぎます。
光の粒子のひとつが、ルートの指先にふれた瞬間、その輪郭がほんの少しだけ、あたたかい色に変わりました。

「ルートはね」
隣で、シュガーキャットが小さく笑いました。
「花園の精霊たちと、お話できるんだよ♪」
「精霊……?」
ぼくは、つぶやきます。
「シュガー様……」
やわらかな声が、そっと入りました。
ミエルが、人差し指を口元にあてながら、少しだけ困ったように微笑みます。
「あの者たちの存在は、ふつうは知られていないのですよ」
「……あ」
シュガーキャットが、ぱっと目を丸くしました。
「わわっ!」
そして、あわてて、ぼくのほうへ向き直ります。
「エトワールさん、ないしょだよっ」
ぼくは、くすっと笑ってしまいました。
「……ええ。承知いたしました」
そう答えながら、もう一度、ルートのほうへ視線を向けます。
淡い光の粒子たちは、変わらず、やさしく揺れていました。

ルートが、ふと顔を上げました。
「最後のお仕事に呼ばれた。月の庭に行くよ」
静かに、そう言います。
「月の庭……ムーンお姉ちゃまのところだね」
シュガーキャットが、少しだけ目を丸くしました。
ルートは、まっすぐに、ぼくを見つめます。
「行く?」
ぼくは、小さく息を整えて。
「……ええ。行きます」
ルートは、ふっと小さく笑うと、「よいしょ」と土の中から出てきまし
た。そのまま、くるりと背を向けて、歩き出します。
「わたしも……」
シュガーキャットが、ふいにそう言いかけました。
けれど──
「シュガー様」
ミエルのやわらかな声が、そっと重なります。
「ティーパーティの続きに、戻りましょうね」
「……ええー」
シュガーキャットは、少しだけ口をとがらせました。
「楽しそうなのに……残念」
それでも、すぐに、ぱっと顔を上げて、にこっと笑いました。
「また、終わったらティーパーティに遊びに来てね♪」
ぼくは、振り返ります。
「ええ。ぜひ、伺います」
「あ、そうだ」
シュガーキャットが手を合わせました。
「この道の途中にね、"ときめきの庭"があるんだよ♪ コスメお姉ちゃまのお庭なの! とっても素敵なの! せっかくだし、見ていくのオススメだよ♪」
ぼくは、ルートを見ました。ルートは、少しだけ考えてから頷きました。
「いいよ」
「ときめきの庭はね、想いをどうやって届けるかを考える場所なんだよ」
「届ける……?」
ぼくは、その言葉を、そっとくり返しました。
ルートの背中は、すでに少し先を歩いていました。ぼくたちは、新しい巡りの中へと歩き出します。
その先にあるのは――
ときめきの庭。
そして、その先に続く、
月の庭。
まだ知らない“巡り”の先へと、
ぼくたちは歩き出します。

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