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Photo byjunsus79

【短編小説】にたものどうし #シロクマ文芸部

    「海の猫って書くんだよ。ミャーミャー鳴くから」

     カモメと間違えた私に、初めてのデートでそう教えてくれたのは彼だった。

    *

     テトラポッドに規則的に打ち付ける波の音が、ウミネコの鳴き声の間を埋めるように打ち鳴らされる。

     ミャーミャー ザザーン
     ミャーミャー ザザーン

     堤防の突端に座る彼は、澄み渡る空を優雅に飛ぶウミネコをぼんやりと眺めている。私はその彼の姿を、またぼんやりと眺めている。

    「ウミネコとカモメって似てるけど、やっぱり違うんだよな」

     視線は海を向いたまま、ちょうど私にだけ届くような声の大きさで、彼は呟いた。どこか淋しげで達観しているような彼の仕草が、私は好きだった。でもこんなときまでそんな仕草をしてしまう彼が、今はどこか遠く感じる。

     彼はそんな私の様子に気付いているのかいないのか、相変わらず海を見つめたまましゃべり続けた。

    「鳴き声が違うんだって。ウミネコはミャーミャー、カモメはキューキュー。クチバシの先が黒いのがウミネコ、目が優しいのがカモメ。でも、本当によく似てるよな」

     私は彼が何を言いたいのかわからず押し黙るしかない。付き合い始めた頃は、彼が何を考えているのかなんでもわかった。わかった気になっていた。

     よく似たふたりだと周りからはいつも言われた。私もそう思っていた。でもいつからか、彼の考えていることがわからなくなった。遠い目をすることが多くなった彼に、詰問するように、駄々をこねるように、当たることが多くなった。

     ケンカが増えた。別れようと、思った。

    「似てるけど、やっぱり違ったんだよな」

     彼が私の方を見ながら言う。沈黙を埋めるようにウミネコが鳴いてくれる。

     ミャーミャー ザザーン
     ミャーミャー ザザーン

    「おれさ、家族いないだろ。だから、美羽と家族になりたかったんだ。でも、気付いたらなんか、美羽のおれを見る目が変わった気がして……離れていっちゃいそうでさ……それで……」

     私は彼が変わってしまったと思った。彼は私が変わったと言う。どこでボタンをかけ違えたんだろう。結局私たちは、似た者同士だったんだろうか。

    「おれ、自首するよ。最後にここに来れて、よかった」

     私は彼に殺された。

     別れ話を切り出すと、彼の目が今まで見たことがないような、どこまでも落ちていきそうな空洞のような目になった。気が付いたら、死んでいた。

     彼は私だったモノを部屋に残し、初めてデートしたこの場所にやってきた。体の無くなった私も付いていった。初めて知ったことだが、彼は視える人だった。

    「ほんとに、ごめん。一生かけて償うよ」

     私は彼のもとに影の無い足を運んだ。彼は立ち上がると私をじっと見つめる。

     私は知っている。今日初めて知ったこともあったが、大抵のことは知っている。彼は泳げない。

     突き出した手は、彼をすり抜けること無く、確かな感触を跳ね返した。彼は不思議そうな顔のまま、海に落ちていった。

     テトラポッドが鈍い音を立て、波が彼を運んでいく。私は悪霊になったらしい。本当に私たちは、似た者同士だ。

     ウミネコが鳴く。

     テトラポッドに波が打ち付ける。

     ミャーミャー ザザーン
     ミャーミャー ザザーン

     あとにはウミネコの鳴き声と、潮騒の音だけが響いていた。


    終


    小牧幸助さまの企画 シロクマ文芸部「海の猫」に参加させていただきました。 いつも発想の手助けになるお題をありがとうございますm(_ _)m


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    こちらはショートショートです。



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    読むことは長年していましたが、最近は書く楽しさにも目覚めました。拙い文章ですが、読んで頂けたら嬉しいです。 少しずつ公募にも挑戦し始めましたが、結果は……心折れることなく続けていこうと思います。 短編、ショートショート、エッセイなど。そのうち長編にも挑戦したいと思います。

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