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逆上がりをマスターした次女と、ミサイルで殺された子供たち

    「お父さん、逆上がりの練習したい。」

    今年の正月三が日、1月2日の朝。朝食を食べていた次女が、突然逆上がりの練習をしたいと言い出した。さっそく、近所の公園に向かい、練習を始めた。とりあえず、まずどの程度回れるのか、次女の現状のフォームを確認してみた。

    全く回れていない。というより、足を蹴上げることすらできていない。鉄棒にぶら下がったまま、壊れたオモチャのように足をバタつかせている。

    「お父さん、どうやるの?」

    当然の疑問である。横についている大人用の鉄棒で、お手本を披露した。私は逆上がりはできるが、子供の頃いつのまにかできるようになっていたので、どうやって練習したのか覚えていない。どうやれば逆上がりになるのか言語化できないと指導ができない。

    困った時のYouTubeである。

    なるほど、どうやら鉄棒に腰をつけるのがポイントのようだ。次女は、足を無駄に振り子のように振り、反動で上げようとしている。これでは足は上がらない。腰は鉄棒のはるか下である。

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    スマホで動画を撮り、フォームを記録し、何度も挑戦してみたが、一朝一夕でできるような技であれば、多くの子供が逆上がりで挫折などしない。キンキンに冷えた真冬の鉄棒を握り続けることができず、「手が痛くなってきた」と言い出したので、一旦練習を切り上げ、鉄棒を引き寄せる腕の力が必要なのかもしれないと、雲梯のある公園に移動した。

    家では家で、YouTubeで見つけた屋内でできる逆上がりの方法を二人で試した。
    ・私が娘の両手を持ち、娘が私の体を蹴上げてクルッと回る練習。
    ・後向きに回転して、肩倒立で足を上げる練習。
    ・100均一で買ったバットなど棒状のものを使って、棒を腰につける練習。
    など、冬休みが終わるまで、一緒に特訓した。

    10日後の1月12日には、だいぶ腰が鉄棒に近くなってきていたが、まだ回るには一歩足りなかった。

    学校が始まると、娘は校庭の鉄棒で練習するようになった。1時間目が始まる前の朝の時間、昼休みの鬼ごっこの最中に練習していたらしい。「もうちょっとで、足がかかりそうなんだよ。」と話していた。しかし、もしかしたら、そのうち諦めてしまうかもしれないなという気がしないでもなかった。

    逆上がりの練習を始めて1ヶ月半たった2月17日の夕食どき、次女がポツリと言った。

    「そう言えば今日、
     逆上がり2回できたんだよ。」

    彼女は一人で練習を続けていたのだ。うぉおおおおお!と、二人でハイタッチした。私は忘れていた。そういえば次女は、何にでも挑戦する上に、できるまで粘り続ける性格だった。

    6歳のとき、水泳教室のテストで25mクロールをクリアできなくて、自分から練習したいと言い出した。そこで、市民プールに連れて行って、おざなりになってる箇所や、変なとこを指摘しつつ、あとは辿り着こうという根性だ!とコーチングしたら、1時間もしないで25メートル泳げるようになった。対岸に手が届いたときは、自分のことのように嬉しく、抱きかかえて喜んだ。ちょっと涙出そうになった。

    彼女はその日、10往復するまで頑張ると言って、実際10往復した。クロールで500m泳ぎきったのだ。フォームがおかしいところを直したら、スピードも速くなった。頑張ったので、帰りにケーキを買ってあげた。翌日の試験は見事合格した。

    この思い出は私の宝物である。

    年始の姿が嘘のように、クルクルと逆上がりをする娘の姿を見ながら、ふと頭をよぎったニュースがある。

    イラン南部ミナブで3日、女子学校での爆発で殺された生徒や教職員らの葬儀が執り行われた。イラン当局によると、アメリカとイスラエルがイランの指導部や軍事施設への攻撃を開始した2月28日、この学校がミサイル3発の攻撃を受け、160人以上が死亡した。うちの長女や次女と同じ歳の子供たちが大勢死んだ。

    高市総理は3月中旬就任後初めて訪米し、トランプ大統領と会談する予定だというニュースが流れている。ヨーロッパでは、各国がイラン戦争への不参加を表明している。戦前、日本は全体主義、帝国主義、ファシズムを強く打ち出したドイツ・イタリアと三国同盟を結び、燦々たる結果に終わった。高市総理が、同じ轍を踏まない保証はどこにもない。むしろ、踏みそうな気がしてならない。

    果たして、鉄棒でクルクル回っている次女や、木にひっかかったボールを取ろうと枝を投げている子供たちが大きくなる頃、この国は、日本は、まだあるのだろうか。平和なのだろうか。日本政府は国民を守ってくれるのだろうか。

    それらの質問を子供達に投げかけられたとき、絶対に大丈夫とは答えられない。情けないかぎりである。

    最近、次女はバットでボールを遠くに打ちたくてウズウズしている。また、彼女の特訓が始まる。

    それでは読んでいただき、
    ありがとうございました。

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    イラストレーター・ビジュアルストーリーテラー/広告・CM・書籍・Webを中心に、環境省、地下鉄駅壁画、映画ポスターなどを担当/コンセプトは「複雑なテーマを、ひと目で伝わる物語に」、お仕事のご相談は「仕事依頼」タブまたはHPからどうぞ。 https://ulaken.com/

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