メインコンテンツへスキップ
見出し画像

過酷!絶滅生物の本を出すことになった話④ペン入れ・着色篇

    ケツに火がついている。

    時は流れて、2025年9月頭。

    ジリジリとした残暑の中、私はペン入れ、着色作業に追われていた。10月中旬に出す本なので、9月半ばには、着色済みの全ページと、カバーのイラストを納品しなければならない。各生物のページは随時送っているが、メインカット、図解カット、漫画まで含めると、1日に2〜3種類が限界だ。しかも、それ以外に冒頭や合間に、絶滅種とは別に挟まれる漫画がある。なるほど。一向に涼しくならないと思ったら、ケツに火がついてたわけだ。

    一人で、ボケてる場合ではない。
    かなり追い込まれている。

    (前回の記事はこちら↓)

    去年からやってたんなら、もっと前もって作業を進めておけよ!夏休みの宿題に追われる小学生か!という指摘は、甘んじて受け入れよう。だが、この本の作業の他に、

    ・別の生きもの本(イラストのみ参加)
    ・複数の企業案件
    ・映画のポスター
    ・男はつらいよのレギュラー案件
    ・CMのコンテ

    などなどの仕事を随時請け負いつつ、同時進行させていた。

    正直な話、本というのは博打だ。大当たりして、増刷されれば追加の印税が入ってくる。しかし、当たらないともらえる報酬は、イラスト作業代と初版の印税のみになる。それが、作業量に見合った額の報酬かというと、答えはかなり否に近い。しかも、このような漫画とイラストだらけの本だと、ただ文章を書くより時間がかかる。他の仕事に充てる時間を削り、160ページ近い漫画&イラストを、フルカラーで描き下ろしているのだ。絶滅本書いてて、絶滅しましたでは話にならない。

    なので、食い扶持は別枠として手堅く稼いでおきたい。

    7月まではCMのコンテのオファーも全て受けていたが、8月に入ると、いよいよそうも言ってはいれられなくなってきた。大詰めである。絶滅本に作業時間を全フリするしかない。全作業量を書き出し、カレンダーに割り振っていったら、かなりギリギリだということがわかった。よし、8月はもうコンテは受けないぞ!イラストもレギュラーの図解寅さん以外受けない!と決断した矢先…断りきれない案件が入ってきた。それも、2件。

    映画のティザーポスターを描いた『ユニバーサル・ランゲージ』の来場者プレゼント用ポストカードと、『バレリーナ:The World of John Wick』の相関図の仕事だ。過去に描いた絵の流れで、是非ウラケンに!と来てる仕事を、断るのは気がひけるし、別の人に回るのはどうにも尺だ。受ける一択である。

    ↑どんな絵を描いたのかはこちらから

    結果、表面張力は限界スレスレ、あと一滴でも入れれば溢れる。もうこれ以上は無理だ。しかし、こういう時に限ってコンテ仕事の相談が次々に来る。コンテは手堅く稼げる良い仕事なのだが、申し訳ないが全て断るしかなかった。この本には、当たってもらう他ない。

    間に合わない着色。

    後はとにかく描き続けた。どの絵も大体以下のような工程を辿る。

    ラフ
    ↓
    下書き
    ↓
    ペン入れ
    ↓
    着色

    カットによっては、ラフの前にラフラフがあったりする。ちなみにこちらは、リョコウバトのペン入れと、着色済み。

    画像
    ペン入れ
    画像
    着色

    ラフで首を曲げていたジャイアントモアは、首を伸ばして、結局色もいろいろ調べた結果、灰褐色系とし、大きさを出したレイアウトにしていただいた。

    画像
    ラフ
    画像
    ペン入れ着色済み

    同様に、漫画も仕上げていく。以下のように、登場人物の顔を書き換えたり、セリフに合わせて、鳩を増やしたりなどした。

    画像
    ラフ及び下書き
    画像
    ペン入れ
    画像
    着色済み

    だが、ラフ(ネーム)で描いたことが、清書の工程で自分の首を絞めていく…、例えば次のようなカット。たくさんのモブを描かなければいけない。これだけでかなりの時間を取られる。

    画像
    ラフ(ネーム)
    画像
    ラフ(ネーム)

    話の流れ上、どうしても必要だったとはいえ、過去の自分を呪いながら仕上げていく、

    画像
    ペン入れ、着色
    画像
    ペン入れ、着色

    大変だったのは衣装だ。ヒトは、さまざまな時代、地域で、生物を絶滅させているため、人種、服装、髪型なども極力その状況にあったものにしなければならない。これも、一応自分なりに調べて描き分けていった。

    前回赤字が入ったフォーク問題だが、やはり、フォークは18世紀のヨーロッパでも一般的ではなく、探検や公開などの過酷な旅で携行される可能性が低い。ステラー自身の記録にも「木の器」「角や骨を削ったスプーン」などの言及がある。そこで、串に刺して直火で焼いた絵に落ち着いた。

    画像
    これが、
    画像
    こう!

    このような作業を、何ページも深夜まで連日連夜続けた夏だったが、あまりに休みなくそういうことをしていると、体がおかしくなってくる。週刊連載の漫画家先生たちには本当に頭が下がる思いだ。

    微熱、ダルさ、頭痛、関節の痛みが続き、足先にポツポツと発疹ができた。ストレスから来るものかと思ったが、ChatGPTの診断によると、原因はヒトパルボウイルスB19。どうやらいわゆるりんご病だったらしい。末っ子にも似た症状があったが、それがうつったのだ。家族で私だけだ。その後は、左耳の中が無性に痒くなり、外耳炎になった。こちらは、何かしらの真菌が原因だった。どちらも、このnoteを書いている10月現在は完治している。

    加えて、普段滅多に欲しないエナジードリンクや、スナック菓子、カップ麺などが無性に食べたくなった。筋トレしていた時間も全て作業に充てたため、ダイエット効果でずっと右肩下がりを続けていた体重・体脂肪のグラフが緩やかにV字回復してく。

    やはり働きすぎは良くない。ワークライフバランスは大事だ。

    だが、作業はまだ終わりではない。もう一つ大きな課題が残っている。そう、カバーイラストである。そして、私の前に再びあの問題が立ちはだかるのだった。

    「次回、第5話。ステラーダイカイギュウは何色だったのか問題」

    ご期待ください。

    フォロー、スキ、SNSでのシェアやコメントなどのリアクションをいただけると、とても励みになります。よろしくお願いします。

    画像


     
     
    イラストレーター・ビジュアルストーリーテラー/広告・CM・書籍・Webを中心に、環境省、地下鉄駅壁画、映画ポスターなどを担当/コンセプトは「複雑なテーマを、ひと目で伝わる物語に」、お仕事のご相談は「仕事依頼」タブまたはHPからどうぞ。 https://ulaken.com/

    あなたへのおすすめ