
タケシのお箸の話
今日も元気に仕事を終えたタケシは腹ペコだった。
先ずは、ビールで一杯!うまい!
今日のビールのつまみは納豆で美味しくビールを頂こうと思うタケシだった。
納豆を冷蔵庫から取り出し蓋を開けて箸を持つ。
が、その瞬間——
ぬるっ・・・。
「・・・なんだこれ?」
納豆に触れる前から箸がすでに納豆のようなぬるぬる感。
まるで時空を超えて納豆が先回りしていたかのようだ。
「ミドリ!! 俺の箸、なんか未来の納豆でコーティングされてるんだけど!」
キッチンで皿を洗っていたミドリがチラッと振り向く。
「あ、それ洗っといたよ?」
「これが!?」
タケシは箸を見つめる。
うっすら納豆のネバつきが残り、まるで高級ハンドクリームを塗ったかのようなツヤ感。
「・・・ミドリ、まさか水かけて終わりとか言わないよな?」
「えー、ちゃんとサッと洗ったわよ!」
「“サッと”が一番危険なんだよ!!」
ミドリは「細かいこと気にしてたらハゲるわよ?」と笑いながら皿を洗う。
ミドリの食器洗いの適当さにはタケシ一家では当たり前だった。
ゴシゴシ・・・。ゴシ・・・。シュッ・・・
安定的に、適当にやはり洗ってる。そして泡、思いっきり残ってるし。
タケシは心の中で叫ぶ。
洗ってもらっているから何も言えないタケシであった。
タケシは自分で仕方なく、箸を念入りに洗い直し、納豆にネギ、辛子、たれを入れてよ~く混ぜる。
ようやくビールのおともに至福のひと口を食べようとしたその瞬間・・・。
ミドリは言った「あ、それ賞味期限切れてるかも!」
「・・・ミドリ、先に言ってよ~!!!」
納豆は発酵食品。多少時間が経って、むしろ旨味が増してるような味がした。
逆に今日の納豆は旨いと感じたタケシだった。
「でも、箸のねばねばは、きちぃ~。」とJCワカバの言葉を借りて心の中でつぶやいたタケシだった。
おしまい。