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「あの子は変わらない」本当にそうでしょうか。

    先日、

    職場でこんな言葉を聞いた。

    「ちゃんと教えてるんだけど、

    あの子はこだわりが強いから変わらないんだよね。」

    仕事をしていると、

    こういう言葉を耳にすることがある。

    でも、

    私はその言葉が、

    頭に残った。

    ⸻

    以前、

    私はマッサージサロンで店長をしていたことがある。

    私は、

    いわゆる寄り添うタイプの店長ではなかったと思う。

    最初の頃は、

    一人ひとりと食事をしながら話を聞くこともあった。

    でも、

    気づけば、

    その場にいない人の話になることが多かった。

    それなら、

    直接話した方がいい。

    だから私は、

    「じゃあ今から話そう。」

    そう言って、

    本人も交えて話すようになった。

    みんな最初は、

    「今からですか!?」

    と驚いていた。

    でも、

    実際に話してみると、

    「えっ、そんなふうに思ってたの?」

    「そういう意味じゃなかったんだ。」

    そんなことが本当に多かった。

    お互い、

    まだ相手のことをよく知らないからこそ、

    思い込みや勘違いが生まれていたのかもしれない。

    それを何度も繰り返しているうちに、

    一人ひとりと話す時間は減っていき、

    代わりに、

    みんなでミーティングをすることが増えていった。

    思ったことは、

    本人にちゃんと伝える。

    納得できないことがあれば、

    遠慮せずに話す。

    最初は少し空気が張りつめる。

    でも、

    それを乗り越えるたびに、

    お互いを理解して、

    気づけば本音で話し合えるようになっていった。

    ⸻

    そんな頃、

    別の支店から一人の女の子が異動してきた。

    話しかければ、

    笑顔で「はい。」と返してくれる。

    でも、

    自分からたくさん話すタイプではなかった。

    前の支店では、

    営業が苦手で、

    なかなか売上が上がらなかったと聞いていた。

    ⸻

    私のいたサロンでは、

    トライアルは二回まで受けられた。

    契約すると、

    二回目はそのまま本コースの一回目になる仕組みだった。

    そのため、

    「通いたい。」

    そう思った方の多くは、

    一回目のトライアルで契約される。

    だから、

    二回目で契約していただくのは簡単ではない。

    営業が得意なスタッフでも、

    苦戦することが多かった。

    お店全体の売上を考えると、

    一回目は営業が得意なスタッフが担当していた。

    その子は、

    営業が苦手だったこともあり、

    二回目のトライアルを担当することが多かった。

    私は、

    「無理に契約をおすすめしなくていい。

    満足して帰っていただけるようにしよう。」

    そう話していた。

    その子は、

    お客様に満足していただけるように、

    誰よりも技術の練習をしていた。

    掃除や片付けも、

    誰かに言われたからではなく、

    当たり前のように丁寧にやる子だった。

    そんな姿を、

    私は何度も見ていた。

    ある日、

    一回目のトライアルでは、

    「今日は考えます。」

    そう言って帰られたお客様が、

    二回目に、その子と話したあと、

    「やっぱりお願いしたいです。」

    そう言って契約してくださることがあった。

    私は驚いた。

    二回目で決まったんだ。

    「すごい。」

    それが、素直な感想だった。

    それが一人、

    また一人と続き、

    気づけば、

    二回目で契約してくださるお客様が、

    少しずつ増えていった。

    私は、

    なぜなんだろう。

    そう考えるようになった。

    その子には、

    その子にしかない良さがあった。

    押しの強い営業はできない。

    でも、

    安心して話せる。

    安心して任せられる。

    そんな空気を、

    自然と作れる子だった。

    だから、

    一度持ち帰って、

    じっくり考えたお客様には、

    その子の良さが、

    伝わっていたのかもしれない。

    ⸻

    ある日、

    オーナーがその子に聞いた。

    「前の支店では売れなかったのに、

    どうしてこの支店では売れるようになったの?」

    その子は、

    少し考えて、

    一言だけ答えた。

    「風通しが良いからです。」

    普段、

    あまり自分から話す子ではなかった。

    だからこそ、

    飾った言葉ではなく、

    その子の本心なんだと思った。

    ⸻

    私は、

    みんなを同じように育てたいとは思っていなかった。

    営業が得意な子もいる。

    マッサージが大好きな子もいる。

    静かだけど、

    お客様に安心感を与えられる子もいる。

    人には、

    それぞれ違う良さがある。

    苦手なことばかりを見るより、

    その人の良さが活きる場所を見つけたい。

    その人に合った役割があれば、

    自然と力を発揮できることもある。

    ⸻

    だから私は、

    「あの子は変わらない。」

    という言葉を聞くと、

    少し立ち止まってしまう。

    本当に、

    そうなんだろうか。

    変わらないんじゃない。

    その人の良さが、

    まだ活かされていないだけなのかもしれない。

    その人が力を発揮できる場所に、

    まだ出会えていないだけなのかもしれない。

    あの日、

    あの子の、

    「風通しが良いからです。」

    という一言は、

    今でも私の中に残っている。

    だから私は、

    人は環境によって、

    変われることもある。

    そう信じている。







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