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【毎週ショートショートnote裏】ほころびタンシチュー

    秘密を食べられる、特別なタンシチューがあるらしいーーーそんな噂が、一部のセレブの間で流行っていた。
    口に運べば、秘密の記憶が肉の奥からじわりとほどける。
    念入りに閉じ込められた秘密も、熱と香辛料に溶かされ、煮込まれるほどほころんでくるのだ。
    柔らかく煮込まれたタンシチューは、隠しておきたい真実ほど味が深く、濃い。

    今夜も黒塗りの車が裏路地の小さな店に並んでいた。
    会員制の扉の奥、白い皿の上に置かれた肉の塊は一見、ありふれたごちそうに見える。
    ナプキンをつけ、ナイフを入れる。
    とろりとあふれる肉汁に乗って、誰かの秘密が舌に落ちる。
    噛むほどに、胸の奥がざらつくような背徳感がじんわり広がる。
    他人の罪ほど甘いものはない。

    すべてを平らげた客の前に、店主が人工発声器と鋭いナイフを手に現れる。
    いつもと同じ仕草で、丁寧に告げる。

    「それでは、対価をお支払いいただきます」

    息を呑む客の皿はすぐに下げられ、奥の鍋にはまた新しい“材料”が沈められる。
    秘密を味わう者は、やがて次の誰かの味になる。それがこの店の、変わらない仕組みだった。

    (453文字)

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    *この記事は下記企画に参加しています*

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