
ポールの手の色と、地球儀の話
この頃、夫が十歳の娘に地理を教えています。地球儀を回し、地図を開いて、国の場所と形をひとつずつ見せています。最近は、その国の暮らしや歴史の話も始めました。娘は興味津々です。
うちには、私が縫った布人形が四体います。娘が二歳の頃から、人形が一体来る度に、その子の故郷の話をしてきました。一体ずつの話は、またあとで紹介します。
ポールは、黒い縮れ毛に褐色の肌、黄土色のカーディガンの子です。南の国から来たという設定で、日本の暮らしから一番遠いところから来た子です。肌の色も、四体の中で一番違います。
娘にとって、人形の肌の色がそれぞれ違うのは当たり前のことでした。人間と同じです。二歳の時から、この子たちと一緒に眠ってきたからです。
十歳になった今、寝る前にもう一歩先の話をしています。地球の真ん中あたりでは、お日さまが真上から強く照りつけます。そこで暮らしてきた人の体は、強い光から身を守れる色になりました。陸別のような北の土地では、お日さまは斜めから弱く差すだけです。ここで暮らしてきた人の体は、少しの光でも取り込める色になりました。
肌を黒、白、黄色と色の名前で分ける話はしたくありませんでした。人の体は、暮らしてきた場所に合うようにできている。それだけを伝えたかったのです。
娘は「ポールの色は強い色だね」「どの色も綺麗ね」とよく言います。この前は、こう言いました。「ポールの体の色は、ポールのパパとママが住むところの色の代表だね」。
この寝る前の話から、今回の絵本が生まれました。寒さが大の苦手なポールは、冬支度にわくわくする3体の気持ちがわからなくて、すねてばかり。3体も、ポールがなぜそんなに寒がるのかわかりません。4体は夜中に、娘の机の地球儀を懐中電灯で照らしてみます。真ん中には光がまっすぐ当たり、陸別のあたりにはうすく斜めに当たります。
次の朝、3体はまだうす暗い牛舎へ行きます。牧場で暮らしていると、冬が近づく度に見る景色があります。牛の毛が長く伸びて、もこもこになるのです。絵本の3体も、牛の足もとで伸びた冬毛に触ってみます。そばでは子犬たちがふかふかの毛で寄り添って丸まり、長毛の猫はしっぽを太くふくらませています。この土地の動物は、みんな寒さに合わせた体をしている。ポールの体は、暑い日しか知らない。牛舎の戸口で毛布にくるまって震えているポールを見て、3体はやっと、ポールの寒がりのわけがわかります。
それから1日は南の国のやり方で、1日は陸別のやり方で暮らしてみて、4体はそろってクリスマスの支度にとりかかります。
夫は地球儀で、国の場所と形を教えています。私は人形の話で、そこに住む人の体と暮らしをつけ足しています。この一冊は、その二つを合わせて作りました。
※この絵本の挿絵は、画を描けない私の言葉(プロンプト)が絵に変わる魔法(AI)で生成した絵です。












これは、私の家の話です。
北海道陸別町の牧場で、夫は毎日牛の世話をしながら、一人で小屋を三つ建てようとしています。六畳の乳処理室を自分たちの手で作り、保健所の許可を取るまでを、連載に書いています。その六畳から生まれる牛乳の名は「考える牛乳」。集乳車には乗せられなかった物語を、瓶に詰めて、ひとつずつ届けています。
#うちの暮らしから生まれた絵本