
キラキラした先輩が、私はやっぱり羨ましい
「新作ピアスがSOLD OUT!ありがとうございます!心を込めて作ります♡」
インスタには、そんな先輩の投稿が次々と流れてくる。
先輩は、かつて同じ会社で働いていた2歳年上の女性。今は会社を辞め、アクセサリー作家として活動している。
インスタで見る先輩は、いつも楽しそうだ。自分で作ったアクセサリーを身につけ、おしゃれを楽しむ。平日にはSNSで知り合った推し仲間とお寿司ランチ。
私が会社で苦手な上司の隣でパソコンに向かっている間、先輩は好きなことを楽しんでいる。
少なくとも、私にはそう見えていた。
先輩が会社を辞めたのは、子どもが2歳になったころ。「もっと自分の好きなことをする時間がほしい」と話していたのを覚えている。
仕事に家事に子育て。気づけば一日が終わっている。「せっかくの人生、もっと自分のために時間を使いたい」。そう思うワーママは少なくないだろう。
先輩は、その思いを行動に移した人だった。退職から3年後、昔からの夢だったアクセサリーショップをオープン。多くの会社員が夢見ながらも、なかなか踏み出せない一歩を踏み出した。
私からすれば、ちょっとしたヒーローである。
インスタのフォロワーは5,000人超え。新作を出せば、あっという間に売り切れるほどの人気ぶり。昔からの夢をかなえて、たくさんの人に喜んでもらえるなんて、なんともうらやましい。
もともと先輩は、おしゃれが大大大好きな人だ。一緒に働いていた頃から、ネイルはストーンでキラキラ。洋服も、毎日が勝負服なのかと思うほど華やかだった。
それは40代になった今も変わらない。真っ白な洋服に、ミニスカートとブーツ。私なら年齢を気にしてためらってしまうようなファッションを、先輩は堂々とインスタに投稿している。
好きな服を着て、好きなものを作る。こんな毎日なら、さぞ楽しいだろう。
ところが先日、久しぶりに会った先輩から、意外な言葉を聞いた。
「私、辞めた会社にまた雇ってもらえると思う?」
驚いた。インスタではあんなに売れていそうなのに、実際は思うほど稼げていないらしい。仕入れから制作、発送まで、すべて自分ひとり。睡眠時間を削って必死に作っても、数には限界がある。人気があっても、収入にはなかなかつながらないのだ。
さらに先輩は、旦那さんから冗談まじりにこんなことを言われるそうだ。
「会社を辞めていなければ、今の10倍は稼げていたかもしれないのに。もったいなかったね」
たしかに先輩は、当時から女性活躍の先頭を走っていた。そのまま働いていれば、今頃は管理職になっていたかもしれない。10倍という数字も、決して大げさではない気がする。
好きなことをしたくて、自分で選んだ道。
今の暮らしに不満があるわけではない。それでも、思ったよりも稼げず、旦那さんからは「もったいなかった」と言われる。
会社に残った同僚の昇進話を聞くたびに、「あのとき辞めていなかったら、今頃どうなっていたんだろう」と考えてしまうそうだ。
「楽しそうに見える先輩にも、悩みはあるんだ」。そう知って、少しホッとした自分がいた。
そもそも私は、先輩みたいになりたいわけではない。会社を辞めるつもりもないし、睡眠時間を削ってアクセサリーを作るなんて無理。インスタに顔を出すのも嫌だし、正直、先輩の華やかなファッションも私の好みではない。
それなのに、なぜこんなにうらやましいんだろう。
母親になると、つい自分の「好き」を後回しにしてしまう。気づけば、何が好きだったのかさえわからなくなる。でも先輩は、好きなものを作り、好きな服を着て、好きな人たちと会っている。
自分の「好き」を堂々と楽しんでいる。
きっと、私がうらやましいのはそこなのだ。
先輩と人生を交換したいわけじゃない。それでも、やっぱりうらやましいのだ。
先輩は本気で会社員に戻ることを考え、かつての上司にも相談しているそうだ。
これからどうするのかは、まだわからない。でも、会社員に戻っても、あのキラキラしたネイルと華やかな洋服はきっと変わらない。
先輩はきっと、これからも自分の「好き」を貫くのだろう。
そして私は、そんな先輩をまた「いいなあ」と思うんだろう。
40代になっても、隣の芝生はまだまだ青いのだ。